変革

small-tiles Jackson Kam | 11 7 2019

次の世界金融危機はすぐそこまできているのでしょうか?もしそうなら、最後に起こった危機と大きく異なるものとなるのでしょうか?そして、中国、トルコ、アルゼンチンなど、今日の新興市場が発端となる可能性があるでしょうか? 未来は不確実で制御できないものの、ビジネスリーダーとして将来に備え、計画的な手段を講じることができます。 台頭する新興国経済   マーサーグローバル人材トレンド調査によれば、新興国経済の強さは 2018 年のリーダーにとっての最大の懸念の 1 つであり、現在でも関心の的になっています。世界の成長エンジンは北大西洋経済圏からアジア、中南米、アフリカに確実に入れ替わっている一方、その成長の大きさにより世界経済へのインパクトも強くなっています。 ACIMA Private Wealth のマネージングディレクター兼最高投資責任者、Ardavan Mobasheri 氏は、2030 年までにグローバルリーダーシップのバトンは急成長中の経済に完全に渡されると考えています。「2030 年の終わりまでに、太平洋と南半球に渡って広がる世界経済成長のアンカーに移行が完全に終了しているであろう」と彼は述べています。 ただし、新興国経済の成長を世界が受け入れるには、それらの経済に必然的に伴う調整にも適応しなければなりません。 世界的な景気の過熱を抑制する「スピードバンプ」の形成   新興市場の資産は、生産の減速、債務の増加、インフレ率の上昇、通貨の下落など、地域全体で逆風が強まっていることを背景に、引き上げ始めています。1 ブラックロックのシニア債券ストラテジスト、パブロ・ゴールドバーグ氏は CNBC の取材でこう語っています。「新興国市場での危機はさまざまな経路で発生するが、先進国市場での金融引き締めの時期には大きくなる傾向がある。2流動性が課題だ。投資家は売れるものを売るからだ」 アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所のレジデント・フェローで国際通貨基金の経済開発検討委員会の元副委員長、デズモンド・ラクマン氏は米国の経済学者や政策立案者は危険を覚悟で、新興国の経済によりさらされるリスクを無視している、と書いています。 「長年にわたる連邦準備制度の巨額のバランスシート拡大とゼロ金利政策で新興国による借り入れが最も容易になったということが理解されていない」とラクマン氏は述べます。「それにより経済政策の規律がなくなり、特に国家財政で大きな経済的不均衡が発展してしまった」。 新興国の資産よりも安全とされる米国資産に逆流する資本が増加している今、「金融緩和」された期間に新興市場で経済的脆弱性が急速に高まったことが明らかになってきています。この脆弱性に歯止めをかけなければ、この状況は世界的に広がり続け、その影響はその後何年も続くことになります。 ビジネスリーダーは適応可能 — 方法を学びましょう   将来の金融の不確実性に備え、その甚大な影響を回避するには、まず前回の金融危機の余波について知らなければなりません。それは世界経済や金融システムがどのように機能するかについて、いくつかの重要な教訓を教えてくれます。 たとえば、マーサーレポート「世界金融危機後の 10年: 学ぶべき 10 の教訓」によると、2009 年における最も重要な教訓の 1 つは、米国の政策立案者の政策、記録的に低い政策金利、銀行システムへの莫大な流動性の注入と量的緩和によって世界中で予測できない結果が生じています。金融政策は消費者物価ではインフレを誘発しませんでしたが、資産価格においてインフレを誘発しました。 現在、一部の経済では政策金利が上昇していますが、世界経済全体に対する前回の経済危機の余波は、今日に至るまで完全には明らかになっていません。そのことを念頭において、ビジネスリーダーとして次の危機に備えるために、3 つのステップを活用できます: 1.  「投資の唯一のフリーランチ」として広く知られる資産分散をやめないようにしましょう。 2.  力強く行動し、現在最高値に近づいている資産を入れ替える準備をしましょう。価格が利益の増加など強いファンダメンタルに基づかないことに投資家が気づいた場合、風向きが変わります。 3.  状況の変化は避けられません。アクティブ運用をやめないようにしましょう。 これら 3 つの簡単なステップを実行することで、組織は機敏さや柔軟性を保ち、金融危機を含め、あらゆる状況に対応することができます。市場がさまざまな変化を経験する中で、これらの教訓やアドバイスを忘れずに、今後発生するかもしれないあらゆる危機に備えましょう。 出典: 1. Teso, Yumi and Oyamada, Aline, "Emerging Markets Retreat Amid Global Growth Concerns: EM Review," Bloomberg, February 15, 2019, https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-02-15/emerging-market-rally-abate-as-trade-concern-returns-em-review./ 2. Osterland, Andrew, "Emerging markets, despite strengths, still get no respect," CNBC, October 1, 2018, https://www.cnbc.com/2018/10/01/emerging-markets-despite-strengths-still-get-no-respect.html. 3. Lachman, Desmond, "We ignore risks posed by emerging economies at our own peril," American Enterprise Institute, September 17, 2018, http://www.aei.org/publication/we-ignore-risks-posed-by-emerging-economies-at-our-own-peril/.

退職

small-tiles Anil Lobo | 27 6 2019

補完型退職貯蓄プランは固定給のない高齢者のために安全と安定を提供するための制度であり、インドの国民年金制度 (NPS) はまさにそれを目指しています。NPS は、補完型確定拠出年金プランであり、制度への加入は任意です。世界のほとんどの国と同様、インドの人口も高齢化しており、寿命も長くなっています。健康状態や衛生状態の改善により、世界の平均寿命は1990年の65歳から2050年までには77歳に延びると予測されています。1 ほとんどの人にとって寿命が長くなることは、働かないで生活を楽しむ期間が長くなることを意味します。ただし、ますます多くの世界中の人々にとって、働かない期間に快適に暮らすために十分な収入を維持することは困難になることが予想されます。ほとんどの高齢者はもはや収入を得ていないだけでなく、年を取るにつれて生活費とインフレ率が増加しています。世界中の政府指導者が国民の退職後の生活に備えるよう支援する方策を検討している中、退職後の貯蓄を促進し、高齢の労働者が老後の貧困状態を回避することを支援するモデルとして、インドの NPS を参考にできます。 インド国民年金制度の基本   2004 年、インド政府は国民に退職後の収入を得させることを目指して国民年金制度を開始しました。2この制度は年金改革を実施し、退職後の貯蓄の習慣化を促進することを目的としています。 当初、このプログラムは国家公務員のみが利用できましたが、2009 年には、18~60 歳のすべてのインド国民が NPS を追加で利用できるようになりました。Tier I NPS 口座 (税務上の優遇措置を受けるのに必要な口座) は、口座保有者が退職年齢に達するまで早期の引き出しを抑制するように設計されています。口座保有者が退職年齢前に引き出す場合、2 割のみ許可されますが、残りは年金保険の購入に使用されます。NPS の加入者には税制上の優遇措置が十分に提供され、税引前で拠出が行われます。ただし、一部引き出した場合は課税されます。 退職年齢に達した場合、累積金額の 6 割を非課税で引き出すことができますが、残りの 4 割は公認年金保険機構から年金保険を購入する必要があります。給付は 70 歳まで延期して投資を続けるか、希望すれば新たな拠出を行うことも可能です。 Tier II NPS アカウントは、厳しい解約ペナルティやロックイン制度のない任意の年金基金です。3 年間のロックイン期間を要する Tier II NPS では、いくつかの税務上の特典が提案されています。ただし、この提案は確定ではありません。 この制度の開始後にインド政府は、特に低収入労働者の間で退職後の貯蓄を促進する追加の社会保障プログラムを創設しています。2010 年、政府の Swavalamban スキームでは、政府または雇用者年金でカバーされていない、毎年 1,000 ~ 12,000 ルピーを拠出した貯蓄者の口座に、1,000 ルピーを預けることが約束されました。ただし、2015 年には、退職時に一定の資格を満たす貯蓄者のために確定拠出年金を保証する Atal Pension Yojana (APY) が支持されるようになると、その計画は廃止されました。さらに、APY では 5 年間 (2015 年から 2020 年まで) で基金の合計拠出金の 50% または年間 1000 ルピーのいずれか少ない方で政府が出資を行っています。 インドの NPS は何度か繰り返され、進化し続けていますが、この制度はインド国民の間で退職者の貯蓄を増やすのに役立っています。国民の期待も変化しています:老後を支えてくれる若い家族に依存する代わりに、貯蓄を調整して、退職後の生活を支える準備をし始めています。 それに加えて、NPS は最も安い投資商品の 1 つです。NPS の全体的なコストは他の商品よりはるかに低く、おそらく利用できる最も安い年金商品です。 インドモデルから学べる3つの教訓   国民全員のための国民年金プログラムを提供するインドの実験は、世界中の組織のリーダーに対して、多くの貴重な教訓を提供しています。 1.持続不可能な国債には新しい解決策が必要   NPS が創設される以前、インド連邦および州政府の職員は税方式の確定給付年金プログラムにより、退職時にインフレ調整後 5 割の代替賃金で補償されていました。1980 年代半ば、このプログラムのコストは年間 5 億ドル未満でしたが、2006 年までに寿命が延びたため年間 6,000 億ドル以上に急上昇しました。  3 プログラムは持続不可能となり、リーダーは将来の労働者の退職に備え、国の財政を保護するための代替プログラムを開発する必要があることに気付きました。NPS の創設以来、新たに政府職員となるすべての人が加入しており、労働者が自ら退職に備える責任を養い、政府の持続不可能な年金債務がかさんでしまわないよう保護しています。 2.補完型退職貯蓄制度で重要となる税制上の特典   加入者のほとんどは、税制上の優遇措置のために NPS への投資を選択します。しかし、一部のインド国民は、ミューチュアルファンド商品や民間退職貯蓄手段の中には市場平均を上回る可能性が高く、税制上の優遇措置も提供されていたため、NPS への加入を選択しなかったことが報告されています。 国民に貯蓄を奨励し、NPS を促進するために、政府は 3 種類のカテゴリーで減税オプションを用意しました。3 番目の選択肢は、NPS の企業モデルを通じて拠出されている給与を支給される従業員に限定されています。3 つのカテゴリーはすべて組み合わせて利用できますが、互いに排他的です。 さらに、退職時に認められているコーパスの非課税引出し限度額 (コーパスの早期限度 4 割からコーパスの 6 割まで) が最近緩和されました。もともと、引き出し額は 6 割が許可されていたものの、残りの 2 割には通常の税率で課税されていたため、完全非課税にすることでさらに魅力が高まりました。 雇用主が提供する確定拠出年金制度を含む他の退職貯蓄制度を利用できる少数の役員がいるかもしれませんが、国民のほとんど (特に労働者階級) は他の退職貯蓄制度を利用できないため、NPS の優遇税制について説明することが、退職貯蓄を奨励する決定的な動機付けになります。 3.国民にはモデルの優遇税制に関する教育が必要   NPS ではいくつかの優遇措置が提供されているものの、加入率は比較的低いままとどまっています。4最近の調査に対する回答からは、貯蓄の重要性や複利の利点を理解していないため、加入しないままでいる可能性があることが明らかになっています。 NPS リーダーは、この制度について人々に伝え、教育するためにさまざまな方法を使ってきました。たとえば、別々の 2 か所で行われたパイロットプログラムでは、組織化されていないセクターの労働者と主要な利害関係者を対象としたワークショップ、会合、キャンプが開催されました。さらに、情報発信はケーブルテレビネットワーク、ラジオ、広告宣伝車、セミナーやロードショーで行われました。 インドでは年金プログラムの成功の評価が続いており、将来さらに変更が加えられる可能性があります。多くの国で高齢者の貧困問題を解決しようと苦労していますが、インドの NPS は多くの国民にとって将来を保護するための積極的なステップとなっており、モデルとして参考にする価値があります。 出典: 1. United Nations: Department of Economic and Social Affairs,"World Population Prospects — 2017 Revision: Global life expectancy," United Nations: Department of Public Information, June 21, 2017, https://www.un.org/development/desa/publications/graphic/wpp2017-global-life-expectancy./ 2. "National Pension System — Retirement Plan for All," National Portal of India, October 22, 2018, https://www.india.gov.in/spotlight/national-pension-system-retirement-plan-all. 3. Kim, Cheolsu; MacKellar, Landis; Galer, Russel G.; Bhardwaj, Guatam, "Implementing an Inclusive and Equitable Pension Reform," Asian Development Bank and Routledge, 2012, https://www.adb.org/sites/default/files/publication/29796/implementing-pension-reform-india.pdf. 4.Zaidi, Babar, "5 Reasons Why Investors Stay Away From NPS. But Should You?" The Economic Times, December 27, 2018, https://economictimes.indiatimes.com/wealth/invest/5-reasons-why-investors-stay-away-from-nps-but-should-you/articleshow/61890679.cms.

変革

ビジネスの世界に移民が登場し、異なる文化や労働力のニーズを持つ国々で、体力と知力が複雑かつグローバルに取引されてきました。人的資本と経済的なニーズの継続的なバランスにより、世界の地政学に影響が及んでいます。 ただし、デジタルトランスフォーメーションと第4次産業革命により、移民労働者の果たす役割ともたらす価値が大きく変わってきました。 肉体労働からITプロフェッショナルへ   機械やコンピューターの導入により、かつては高い技術を持たない移民労働者が行っていた仕事を、優れた効率かつ低いコストで行えるようになっています。この世界的な進展により、移民労働者、国家、世界経済はかつて経験したことのない課題に直面しています。オートメーションやテクノロジーが農業、自動車、製造業など、さまざまな業界で労働者に取って代わっているからです。 失業者が急増して、収入減が予想される人々が増える可能性があるため、多くの国々では経済紛争や政治的混乱の広がりが懸念されています。第4次産業革命のオートメーションが、低スキルの失業者に仕事を提供する国々に移住することで生計を立てている2億5800万人の国際移民の労働力に取って代わる世界はどのようなところになるのでしょうか?1 知られていない明るい未来   これまでの産業革命と同様、第4次産業革命のもたらす意味は人によって異なります。デジタルトランスフォーメーションにより、インターネットを使ってほとんどどんな情報にでも簡単にアクセスできるようになったため、すべての国民、特に移民労働者が教育を受け、新しいスキル、取引、職業について学ぶ新たな機会が提供されています。かつて貧困や経済的な孤立が障害となっていた国々でも、新たな機会が生まれています。たとえば、人口が13億人のインドでは、デジタルトランスフォーメーション市場は2024年までに7,100億ドルに達すると予測されています。2 移民労働者にとって、スキルアップと専門的能力の開発は、職業の安定に欠かせません。多くの国や政府では、オートメーション時代の競争で必要なスキルと知識を国民に提供するニーズが認識されています。それは労働者が競争の激しい世界で自分の市場価値、商品価値を知るためにテクノロジーにアクセスできるようにするところから始まります。 ただし、アルゼンチン、ブラジル、米国などの国では、自分たちの運命を握っているのは自分たちであり、政府ではないこと、そしてデジタルトランスフォーメーションの変化の波に対応するのは個人の責任であるという意識が強くあります。3一部の人にとって、これは現在の状況を改善できる見込みがあれば、国や経済圏を移動することを意味しています。 ニーズが進化する世界   これまでの歴史で観察されてきたように、移民労働者はふさわしい仕事がある地域に引き寄せられます。オートメーションとコンピューター テクノロジーが中心の世界では、この時代の新しいニーズが出現しています。 日本、韓国、スペイン、米国などの先進国では、出生率は異常なスピードで低下しています。4特に韓国や日本では、高齢者が急増し、出生率が低下する高齢化社会が懸念されており、高齢者を介護し、高齢者の年金を賄うため雇用による必要な税収を生み出す若年層が不足しています。 日本と韓国では高齢者の心理的、感情的、身体的ニーズを満たすためにロボットやオートメーションを導入していますが、これらのテクノロジーで国家の運営を継続するのに必要な財源や国内サービスを提供することはできません。安倍晋三首相は「アベノミクス」と呼ばれる大規模な改革を実施し、長年の文化的制限を緩和して、影響度の異なるすべてのレベルで女性を職場に迎え入れることを提案しています。ただし、アベノミクスの最大の焦点は、人間固有の能力が求められる国内労働力の不足を緩和するために移民労働者に門戸を開放する狙いです。日本国民の多くは移民が文化的アイデンティティに対する脅威となると考えています。5 しかし、経済を安定させる若年労働者がいないのであれば、日本にはおそらく選択肢がありません。第4次産業革命はゲームチェンジャーです。そして多くの国では人間と機械の進化する役割の間のギャップを埋めるために移民労働者が必要とされるでしょう。 何世紀にもわたって、移民たちは個人的なニーズを満たすために一生懸命働いてきました。同時に移民の労働力を必要とする雇用する国のニーズも満たす上で貢献しています。現在の経済環境では、オートメーションとテクノロジーにより職務内容が変わることがあるかもしれませんが、人的資本が必要になることに変わりはありません。 出典: 1. "International Migration Report," United Nations, 2017, https://www.un.org/en/development/desa/population/migration/publications/migrationreport/docs/MigrationReport2017_Highlights.pdf。/ 2. 「2024年までにインドのデジタルトランスフォーメーション市場は7,100億ドルに達する」P&S Intelligence," Prescient & Strategic Intelligence, March 5, 2019 https://www.globenewswire.com/news-release/2019/03/05/1747720/0/en/India-Digital-Transformation-Market-to-Reach-710-Billion-by-2024-P-S-Intelligence.html。 3. Wike, Richard and Stokes, Bruce, "In Advanced and Emerging Economies Alike, Worries About Job Automation," Pew Research Center, September 13, 2018, https://www.pewglobal.org/2018/09/13/in-advanced-and-emerging-economies-alike-worries-about-job-automation/。 4. Kotecki, Peter, "10 Countries at Risk of Becoming Demographic Time Bombs," Business Insider, August 8, 2018, https://www.businessinsider.com/10-countries-at-risk-of-becoming-demographic-time-bombs-2018-8。 5. Yoshida, Reiji, "Success of 'Abenomics' hinges on immigration policy," https://www.japantimes.co.jp/news/2014/05/18/national/success-abenomics-hinges-immigration-policy/#.XJr1GK2ZOgR。

資産運用

small-tiles Sean Daykin | 13 6 2019

近年になって激しさを増す経済の多様化と開発努力の観点から、プライベートエクイティ(PE)は、湾岸協力会議(GCC)においてますます重要になっています。PEはGCCにおける比較的新しい資産クラスとして台頭してきていますが、GCCでは、UAEや西ヨーロッパの先進国市場に見られ、ファンドマネジャーが過半数の株式を取得する従来の「買収型」PEよりも、「成長資本型」PEへの関心が高まっています。実際、ベンチャーキャピタル(VC)では、Careemのようなこの地域のVCユニコーンの成功やAmazonによるSouq.comの買収を受けて、資金調達が急増しています。 PEは、経済成長を促進する上で重要な役割を果たすことができます。GCCは、富の増加、最近の重要な経済改革、そして地域の各政府が強力に主導する、現地の起業家精神の強化や中小企業の振興などの要素によって、PE投資にとってきわめて魅力的な地域となっています。 地域の各政府は、地域での起業計画を奨励するため、規制を緩和したインキュベーターや地域ハブを創設することにより、VCのさらなる成長を促進しようとしています。最終的にはこうした取り組みが、持続可能な経済成長を促進し、より大きな成功をもたらし、さらに高度な技術を要する仕事を増やすことでしょう。 しかし、大きな話題になったAbraaj Groupの事件を受け1、 投資業界はこの地域において、より強固な企業統治を求めています。自らの資金がどう扱われるかという点について、投資家がより大きな注意を払うようになったため、現地のPEマネジャーは以前よりはるかに厳しい監視を受けるようになっています。 地域の投資家は、民間市場の業績を測定する際、さらに深い理解を求めるようになっています。買い手や投資家は、過去のパフォーマンスなどの要素を考慮し、投資と業務に対してデューデリジェンスを実施して、実証済みかつ試験済みの情報に基づいてPE市場に参入する決定を下したいと考えています。 民間市場の絶対的および相対的なパフォーマンス測定はとても重要であると同時に、非常に繊細なものでもあります。「価値創造」はPEのストーリーにおける重要な側面であるため、測定は正確であるのみならず意味を持つものでなくてはなりません。 あらゆる投資と同様、過去のパフォーマンスを評価することは常に、ポートフォリオの全体的資産配分にPEを含めるかどうかを決定する際の要素となります。しかし、PE投資家は、厳格なデューデリジェンスを通して、ファンドの真のパフォーマンスをさらにじっくり見極めなくてはなりません。測定基準と定性的測定の組み合わせは、ファンドの実績と将来のパフォーマンスの可能性を総合的に理解するために重要です。 定量的測定基準に関して最も一般的に使用される3項目は、内部収益率(IRR)、投資倍率(TVPI)、および実現倍率(DPI)です。 IRRは、民間市場投資のパフォーマンス測定に最も広く引用されている測定基準です。これは、一定期間にわたって行われた投資と取得された投資を考慮する、時間ベースの測定です。投資が成熟する(または特定の価格で売却する)のに時間がかかればかかるほど、年換算IRRは低くなります。 2つ目の指標であるTVPIは、当初の投資と比較して、(配当および最終的な売却を通じて)投資からどれだけの価値が得られたかを検討するものです。最後の指標はDPIで、当初投資された金額と比較して、当初の資本のうちのどれだけが(配当またはその他の支払いを通じて)返ってくるかを測定するものです。DPIは実現値のバロメーターであり、合計値ではありません。 これら3つの指標はすべて、投資家がPEファンドの過去のパフォーマンスを評価するために重要な役割を果たします。PEファンドのパフォーマンスを包括的かつ正確に評価する唯一の答えはありませんが、これらの指標を一括使用すると、より深く理解することができます。 ファンドの過去のパフォーマンスを測定しても、今後のPEファンドのパフォーマンスがわかるわけではありません。こうしたコミットメントの有効期間は長いため、投資に関連する他の要素を検討する必要があります。その一環として、投資チームの安定性を評価する場合があります。投資チームによるディールソーシングの方法や、投資先企業で価値を生み出している方法を検討することになります。 Abraajの事例を受け、マネジャーやバックオフィス業務の評価は、デューデリジェンスの重要な測定基準の1つになりました。効果的な内部統制、強力なシステム、十分な人数の運用チームも、PEファンドを成功させるために重要となります。 民間市場のパフォーマンス測定は、公設市場のパフォーマンス測定より明らかに複雑です。民間市場のパフォーマンスを測定するためには、関連する測定基準や手法に対する見方を明確にする必要があります。しかも、さまざまな観点から情報が入るうえに、特殊な分析方法が求められます。さらに、主観が入ることがあるうえ、操作されるおそれもあります。結局のところ、このようなパフォーマンス測定は、民間市場投資の成功の不完全な評価を表現するものとなっています。しかし、民間市場のパフォーマンス測定は進化し続けており、現在の欠点が改善される可能性はあります。 投資家にとって鍵となるのは、長期にわたって持続的に強力な投資を生み出すことができる投資人材を見出すことです。過去のパフォーマンスはマネジャーの今までの実績を評価するためには役立ちますが、将来の成果を保証するものではありません。したがって、投資家は深い「定性的」投資を行いつつ、運用に対するデューデリジェンスを実施して、投資が将来的に成功する可能性を見極める必要があります。 マーサーによる投資戦略の支援方法についての詳細は、こちらをクリックしてください。 出典: 1Ramady, Mohamed, "Abraaj Capital: The Rise and Fall of a Middle East Star," Al Arabiya, July 3, 2018,https://english.alarabiya.net/en/views/news/middle-east/2018/07/03/Abraaj-Capital-The-rise-and-fall-of-a-Middle-East-star.html#.

エディターズピック

変革

ブロックチェーンの未来―個人データを通じたエンパワーメント

音楽家、詩人、哲学者は、「私は何者か?」という質問に生涯を費やしてきました。それほど遠くない将来、この質問への答えは、我々のブロックチェーンの私的プロフィール、すなわち、我々が生まれてから行うあらゆる決定、行動、購入の詳細が入ったデジタルの「箱舟」に格納されることになるかもしれせん。出生証明書、クレジットスコア、パスポート、職業経歴や病歴に別れを告げ、ブロックチェーンがもたらす未来、すなわち、ブロックチェーンのプロフィールに出会う時が来ました。「自分は何者か?」という質問に対する唯一の回答として、「これが私だ」と前例のない確信をもって語る、年代順で、超詳細の、変更不可能な記録が用意されるようになるでしょう。 ブロックチェーンは、我々の思考、感情、夢あるいは悪夢の中に存在するものではありません。人々が私的な日記の中で、あるいは朝、浴室で鏡に向かって話しかける時に明らかにするような自分との対話を記録することはありません。しかし、ブロックチェーンは、5歳で(手すりによじ登って)腕を骨折した時のこと、配偶者と最初に会った時に(飲み物を落として)心拍数が急上昇した様子、(いとこの結婚式用に)新しい黒い靴を配送してもらうために余分に支払いをしたことを決して忘れません。 ブロックチェーンは、ギリシャの哲学者が考えていた「自己」ではないかもしれませんが、(理想的には本人の許可を得て)哲学者以外の全世界から見た「自己」を提供してくれるでしょう。 デジタル世界における自分の権利を知る   企業はあなたの決定についての情報を求めています。あなたがベトナムに休暇旅行をすることにしたのはなぜか、毎週火曜の夜に、お気に入りのイタリア料理店でムール貝を食べるのはなぜか、あるいは、ミディアムハードの歯ブラシだけを使用するのはなぜか、といったことを説明する情報が、あなた、やあなたに似た人々に航空券、新鮮なシーフード、歯磨き粉を販売する企業には役立つのです。あなたがネットで行うすべての決定や行動は、あなたの性格や思考プロセスの一部を明らかにするデータです。 近年、企業や政策立案者は、個人の私的決定、特に、個人が読んだり、クリックしたり、ネット購入したりするものに企業がどれだけのアクセス権を持つべきか議論してきました。オンラインサービスの利用時に個人が作成するデータに対するコントロールを保持しようとする強力な勢力が存在する一方で、風向きは変わりつつあり、規制当局でも個人を守る機運が高まっています。 2018年5月、欧州連合は、居住地にかかわらず、その市民が有するデータプライバシー、所有権、管理権、許諾、および携帯性に関する基本的な法的権利を規定する画期的な「一般データ保護規則(General Data Privacy Regulation =GDPR)」を定めました。1米国では、「HIPAAプライバシー規則」により、個人の医療記録およびその他の個人の健康情報を保護するための国内基準が設けられています。2 これらの規制は、個人情報の元来の収集目的、または同意が明示的に与えられている目的以外で、個人データを使用しようとする可能性のある組織から市民を保護するためのもので、これらの法律に違反する事業体に相当の罰則を課す手段を提供します。デジタル変革の時代には、人々が自分の個人データの価値とプライバシーに対する権利の範囲を理解することが重要です。 売り出し中―睡眠習慣と運動ルーチン   個人データは今や、資本主義企業を推進する供給と需要のバランスの一部となっています。消費者は購買力を持つだけでなく、特定の購買に先立つ考え方や活動にアクセスすることもできます。この情報は、データ主導の戦略を使用して自社の製品やサービスを対象となる消費者に販売する企業にとって、非常に貴重なものとなります。 ブロックチェーン技術が登場するまでは、個人の生活で発生するあらゆるコンテクストの中で、個人の購買および行動を追跡できる包括的な記録を入手することは不可能でした。しかし今や、それが可能になったのです。現在、人々はブロックチェーンによって、変更不可能なプロフィールを、想像を絶する詳しさで作ることができるようになりました。そのプロフィールは生まれた日に始まり、生涯を通して増え続けていきます。乳歯が抜けた日から孫の名前まで、すべてが記録されるのです。あらゆる通院記録、あらゆる宿題の質問、あらゆるマウスクリック、あらゆるページビューが記録されます。 企業は、当然のことながら、データへのアクセスを許可するよう人々に奨励する無数の方法を開発するでしょう。個人の権利は法的にあらかじめ確立しているので、この関係において力を持つのは消費者です。消費者は、睡眠習慣から運動ルーチンまで、自身のブロックチェーンプロフィールのさまざまな側面へのアクセス権を賃貸することで自分のデータを収益化できます。より大規模にアクセスを認め、より多くのデータソースに接続すれば、より正確な行動予測が可能となるため、個人のプロフィールの価値は高まります。 つまり人々は、個人情報を求める新興のデジタル市場で、包括的で詳細なプロフィールを販売・提供する意欲を持ったマーケティングターゲットとして、自らを売り込めるようになります。これは、広告、データ調査、分析のビジネスを根本的に変える展開です。 85億の「パーソンフッド」の世界   2030年には、世界の人口は85億人に達すると予想されています。それまでには、ブロックチェーンによって、世界中の地域や国家を構成する個人にまつわるデータを一貫して、確実に、安全に整理できるようになる可能性があります。これにより、個人中心の社会が技術的に可能になります。その社会では、ある市民の活動や行動は、その市民の体験と感性に関する唯一の真実を語る資料として機能する変更不可能なデータ、「パーソンフッド」にデジタル的に記録されます。 基本的に人々は、リアルタイムなデータを定期的に生み出し、それが時系列順に自身の総合プロフィールに追加されます。このプロフィールには、医療記録、学歴、専門資格、有権者登録、運転免許証、犯罪歴、財政状態、その他人間として生きる上で特筆すべき点が含まれます。「パーソンフッド」は、アイデンティティ関連情報のすべてを結び付けることができる、世界中で受け入れられる記録となる可能性があるのです。かつて身元確認に必要とされたすべてのプロセスは、個人の包括的なブロックチェーンプロフィールによって置き換えられます。個人データのコモディティ化により、個人と企業との関わり方、そして個人同士の関わり方には大きな影響が出るでしょう。 自分自身の「パーソンフッド」に対する説明責任を負うこと、そして、我々の生活の詳細が永久に自分のブロックチェーンのプロフィールに記録されると知ることで、私たちの行動は変化するでしょうか。「パーソンフッド」の価値を高めようとすることが、生活を改善する努力の延長となるでしょうか。それともその逆で、「パーソンフッド」の価値を高める努力の延長として、生活を改善するようになるのでしょうか。「パーソンフッド」の勃興は、個人的所有権の概念が最初に出現して以来、人類が目にしたことのない方法で、所有権についての我々の集団的理解を変化させることになるかもしれません。 ブロックチェーンの世界への今後の課題   技術進歩の普及は常に犠牲を伴います。ブロックチェーン技術の普及と個人データの価値の上昇に伴い、社会は富裕度や階級の境界線に沿ってさらに両極端に分かれる危険性があります。購買力の高い個人は本質的に、製品やサービスを販売する企業や、財政支援や影響の面で利益を得られる政府機関にとって、より価値の高いデータを所有しています。お金を持たない、あるいは現代技術にアクセスできない人々は、政府、特に経済成長地域の政府が、脆弱な市民を取り残さないようにする規制を施行しない限り、深刻な不利益に直面するでしょう。また、経済成長地域は、ブロックチェーン技術の普及に伴い、時代から取り残される可能性を食い止める中間業者を採用する方法を見つける必要があります。 未来を予測するのは難しく、変化は常に課題を生み出すものですが、価値が創造されるところでは、技術が最終的に勝利を手にすることは、歴史が教えてくれています。ブロックチェーンの未来は、前例のない方法で人類に互いを、そして自分自身を理解する機会を提供します。人間の行動、人間関係、そして企業同士のやり取りに関する新たな洞察が提示されることで、私たちは互いから学び合い、すべての人のために状況を改善することができます。 ブロックチェーンデータはおそらく、人類が皆、どれほど似ているかということを、説得力をもって実証することでしょう。将来、人々が自分に問いかける最も重要な質問は、「一人の人間として私は何者か?」ではなく、「社会として私たちは何者か?」となるでしょう。この問いへの答えが、音楽家、詩人、哲学者が夢見ていたような種類の文明を生み出すかもしれません。 ブロックチェーンについてもっと知りたいですか?チェックアウト:マーサーデジタルのブロックチェーン101概要。 1Palmer, Danny. "What Is GDPR? Everything You Need to Know About the New General Data Protection Regulations." ZDNet, https://www.zdnet.com/article/gdpr-an-executive-guide-to-what-you-need-to-know/. 2"The HIPAA Privacy Rule." Office for Civil Rights, https://www.hhs.gov/hipaa/for-professionals/privacy/index.html.  

資産運用

アジア太平洋地域の経済成長国に対する上位4つの脅威
Peta Latimer | 21 3 2019

アジア太平洋地域(APAC)の経済は、特定の地理的、社会的、財政的状況により定義されるため、それぞれ独特な形で世界経済の変動の影響を受けます。しかし、急速なデジタル変革と硬直する地政学的緊張のため、APACにあるすべての経済成長国の運命は、あまねく広がるグローバリゼーションの影響と切り離せなくなりました。 APACの経済は、今後2年で5.6%の堅実な成長を遂げると予測されています。ただし、この地域に対するそうした楽観的な予測は、依然として深刻な脆弱性をはらんでいます。1 脆弱な領域は、経済、地政学、科学技術および環境面の4つに分類できます。各カテゴリーに目を通して、近い将来、成長が見込まれる国々にどのような課題が浮かび上がってくるのか見ていきましょう。 1. 経済面―債務と住宅   2016年、APACは北米を越えて、世界の債務の最大の要因地域となりました。実際、APACの債務は世界の債務の35%を占め、2008年の金融危機以降、着実に大幅な増加を示しています。この債務により、地域経済は金利上昇や潜在的なデフォルト危機の影響を受けやすくなっています。 危険にさらされている領域は、経済圏ごとに異なります。例えば、中国では非金融企業と一般家庭の債務が増加していますが、日本では国債市場をリスクにさらす公債が最大の関心事となっています。また、インドは、国立銀行の不良資産への支出で2,100億米ドルの打撃に直面しています。 2010年以降、APAC全域、特に香港、オーストラリア、ニュージーランド、そして、インドにおける住宅価格は収入より速いペースで高騰しており、ムンバイの家庭では、手頃な価格の住宅などほとんど存在しないと感じています。住宅価格が高騰する中、資産バブルがはじける危険が心配されています。ただし、リスクレベルを決定づける信用貸付のしくみと家計債務の額は各国で異なります。APACは、一般世帯が借金を返済できず、それが国際的な銀行業界を悩ませ続ける世界的な経済危機の一因となってしまった、2008年の米国の住宅市場危機から学んだ教訓を心に留めておかなくてはなりません。 オーストラリアは現在、世界最高水準の家計債務を抱えています。オーストラリアの銀行ポートフォリオの大半が抵当貸付に由来し、2008年の崩壊直前の米国の住宅市場をはるかに上回るレベルに達していることから、多くの米国および世界の投資家は、オーストラリア市場に対してヘッジを行う傾向にあります。 2. 地政学の面―保護主義と不平等   相互に繋がった世界経済では、あらゆる地域が国際貿易の動向や関税の影響を受けます。中国・アメリカ間で拡大する貿易戦争がAPAC全域のサプライチェーンを脅かしています。一部の国が他国以上に苦労しているため、保護主義の傾向が、この地域の密接に絡み合った経済網に浸透していくおそれがあります。 急速な地政学的進展は不安を生み出します。そうした不安により、企業や政策立案者はしばしば、経済がマイナスの結果を被らないよう、制限や防護を余儀なくされます。実際、中国とアメリカが優先事項を再定義する中、APACの国々は、絶えず変化し続けるこの状況に対し、どこでどのように適応するかを決める必要があります。オーストラリアからインドまで、APAC経済圏は、ビジネスパートナーを疎外したり成長の機会を犠牲にしたりすることなく、他の国々と協力および競争するという複雑な状況をうまく切り抜けなくてはなりません。 APACは混沌とした地政学的状況の中で安定を模索していますが、国際的な貿易や商取引の結果、多くの国で、国内における人口構成が劇的に変化しています。貿易に適した港、近代的な技術の中心地、高度な科学技術を必要とする雇用チャンスにアクセスできることから、大都市や巨大都市が増加しました。革新的な文化、アイデア、インフラを提供する都市部に若い世代が継続的に移住するため、周辺および農村地域は社会の主流から取り残されています。持つ者と持たざる者の間の格差拡大は、所得と富の不平等、広範囲にわたる不満、市民の不安を招くおそれがあります。 政策決定者は、APACにおける人的資本管理を形成する一般的な考え方や規制を管理しようとしています。シンガポールのジョセフィーヌ・テオ上級国務相は最近、シンガポール国民が周辺諸国に移動して仕事をする必要があることに触れ、特にシンガポールが中国とのビジネス関係を強化する中で、APACの他の経済成長国における機会に先入観を持たないよう国民に求めました。2 3. 科学技術面―奇跡と脅威   科学技術は世界経済の未来を形作ります。新たに出現する機器や科学技術は、政府による規制より速く進化しているため、監視の隙間を縫って、経済成長、イノベーション、そして犯罪にとって前例のない機会が生み出されることになります。科学技術は、APACが労働力の生産性を高め、社会改革を進め、環境面での持続可能性を支持する手助けとなってきました。ASEAN諸国に対するデジタル変革の影響はきわめて大きく、特にeコマース分野では、2017年第1四半期にASEAN諸国が世界の売上高の40%を占めました。東南アジアだけでも、インターネットやそれがもたらすあらゆる可能性にアクセスできる人々の数は、2025年までに2億人から6億人へと3倍に増えると予想されています。3 新しい科学技術のために失われる仕事もある一方で、同じ科学技術が多くの新しい仕事を生み出すことにもなります。実際、AIシステムを構築している多くの企業は、人間の従業員がAIの設計と実行に積極的な役割を果たすことを発見しました。4イノベーションが雇用創出につながることは、歴史が明らかにしています。例として、コンピュータの出現を取り上げてみましょう。タイピスト関連の役割での需要は減少したかもしれませんが、コンピュータベースの仕事に対する需要は、開発、運用、プログラミングに関連する新しい仕事を生み出しました。しかしながら、これらの進歩には現代的課題も伴います。 高度な技術を持った世界中のサイバー犯罪者は、政府、公的機関、あらゆる規模の企業の弱点を探り続けるでしょう。データや情報が天然資源と同等に貴重になるにつれ、国家間のサイバー攻撃が頻度と複雑性を増していきます。政府と多国籍企業との間の錯綜する同盟関係は、人々やそのプライバシーに対する権利に劇的な影響を与えます。人権や個人情報へのアクセスに関する政策が国により異なるため、人々が科学技術とさらなるつながりを持つようになれば、保護境界線を設定し、人間の可謬性を軽減するために、新世代のサイバー法が登場することでしょう。 4. 環境面―自然災害と人為的解決策   環境要因は、APACの将来の経済見通しと全体的な生活の質を決定します。地理的に見て、APACは世界で最も災害が発生しやすい地域です。洪水や熱帯低気圧といった環境災害は、ほとんどの人々、インフラ、施設が集中する沿岸部に甚大な被害をもたらします。自然災害は予測不可能であるため、突然、時には大規模に、人命の損失、人口移動、そして広範囲にわたる社会的・経済的混乱を引き起こします。 そうしたトラウマを受けた後、個人や地域社会は、政府やその他の機関が救済を提供できるようになるまで、悲しみを抱えながら、医療活動も不安定な中で自力で進まなければなりません。APACは、自然災害が人々と経済にもたらす荒廃を軽減するための、統合された政策およびシステムを積極的に施行すべきです。こうした動きはすでに見られます。香港のように比較的成熟した市場では、ハリケーンのような災害時にリソースを調整し、迅速に対応する能力が飛躍的に向上しています。科学技術と企業の利益がAPACをより緊密に結びつける中、各政府には、他の国々や地域に対する自国の責任が正確にはどのようなものであるのか判断する必要が生じます。 UNESCAPのデータ   地球規模で考えると、APACは有害な排出物や汚染物質の抑制に不可欠な役割を果たしています。時代遅れのインフラストラクチャと手ぬるい規制は、現代的な科学技術と政策に置き換えなければなりません。しかし、変化には時間と費用が伴います。多くのAPAC諸国はいまだ、石炭やその他の化石燃料など、従来のエネルギー資源に依存しています。ただ、地域および地方レベルでは大きく進歩しています。 例えば、中国は、石炭や石油に代わる大気中の汚染物質を減らすグリーン燃料技術の導入で、目覚しい進歩を遂げてきました。5化石燃料を風力や太陽光などのクリーンエネルギー資源に置き換えるという中国の新たなイニシアチブは、国内経済に悪影響を与えることなく、北京などの諸都市で大幅に空気の質を改善してきました。実際のところ、中国は持続可能な資源がエネルギーの未来であると考え、グリーンビジネスに積極的に投資しています。例えば、ハイテクなソーラーパネルの分野では、世界のソーラーパネルの3分の2が中国製となっており、電気自動車の分野では、2025年までに、テスラ社さえも凌ぐ年間700万ドルの売上を予測しています。6 APACは、地域として、再生可能エネルギー源を促進し、直接的で差し迫った脅威となる大気汚染や水不足の問題に取り組むための枠組みや新しい科学技術にも合意しています。経済発展と、気候変動および持続可能性イニシアチブの進展とのバランスをとるのは困難ですが、必要なことです。 この地域のその他の課題同様、気候変動に対応するには、APAC諸国、政府そして労働者の間に、新しい協力の時代が必要となることでしょう。2017年1月の米国の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)離脱を受け、APACは、地球規模の問題を解決するため、より地域的なアプローチを検討することを余儀なくされました。しかしながら、APAC首脳は初心を貫き、2018年にはオーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、ニュージーランド、マレーシア、メキシコ、ペルー、シンガポール、ベトナムが参加して、TPPの改訂版に署名しました。 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)と呼ばれるこの新しい協定は、世界のGDPの約14パーセント(当初のTPPの40パーセントから減少)に相当するもので、参加国間の新たな貿易ダイナミクスや監督規制だけでなく、相互に合意された環境保護法の遵守についても詳述しています。知的財産権、仲裁および投資紛争の解決に関する条項のいくつかは、新しい協定では省かれました。これは、特定の問題に関して進行中の多国間協力や、公共の利益のために必要とされる各国政府による地域介入を引き続き進める余地を与えるためです。新しい協定では、当該地域の労働者の移動を規制しておらず、加盟国は、自国農民およびサービス経済の利益の保護を実現しています。 ますます自国中心主義になった米国の影響により、APACは互いの結びつきを強め、ビジネスチャンス、人材のやり取り、世界規模のデジタル変革への共同参画へとさらなる道を切り開くことを余儀なくされる可能性があります。APAC諸国のほとんどが新協定を批准したことは、世界の他地域で保護主義の言説が増加する中で、自由貿易の輝かしい砦となっています。 APACの将来について楽観的になれる理由は数多くあります。デジタル変革は、前例のない成長の機会、そして労働者を科学技術の進歩、起業活動、およびイノベーションの世界規模の急増に結び付ける力をAPAC経済圏に提供しています。環境問題や経済的逆風に対処する差し迫った必要性が、APAC全体に緊迫感を生み出しています。問題解決への協調的なアプローチは、APACの未来にとって明るい予兆となっています。献身的なリーダーやAPACに本部・本社を置く組織が、地域全体の繁栄を目指して強みを結集しています。世界経済の変化が続く中で、APACはますます影響力のある役割を果たすようになるでしょう。 詳細については、Marsh&Mclennanのアジア太平洋地域における14のリスクシェードレポートをご覧ください。 1Evolving Risk Concerns in Asia-Pacific:, http://bit.ly/2APQVlZ. 2Lee, Pearl. "Ties with China Multifaceted and Strong: Josephine Teo." The Straits Times, 2 Mar. 2017, www.straitstimes.com/singapore/ties-with-china-multifaceted-and-strong-josephine-teo. 3"Asean the 'next Frontier' for e-Commerce Boom." Bangkok Post. https://www.bangkokpost.com/business/news/1249798/asean-the-next-frontier-for-e-commerce-boom. 4Mims, Christopher. "Without Humans, Artificial Intelligence Is Still Pretty Stupid." The Wall Street Journal, https://www.wsj.com/articles/without-humans-artificial-intelligence-is-still-pretty-stupid-1510488000?mod=article_inline. 5Song, Sha. "Here's How China Is Going Green." World Economic Forum, www.weforum.org/agenda/2018/04/china-is-going-green-here-s-how/. 6Jeff Kearns, Hannah Dormido and Alyssa McDonald. "China's War on Pollution Will Change the World." Bloomberg, www.bloomberg.com/graphics/2018-china-pollution/.

キャリア

インドの超都市化に関与するための3つの秘訣
Pearly Siffel | 30 5 2019

爆発的な人口増加が発生すると、労働人口も増加します。それに伴い、地方自治体、国内企業、多国籍企業には、人口流入に対応するよう、より大きな圧力がかかってきます。労働力のニーズを確実に満たしつつ、組織はどのように急速な都市化の恩恵を利用できるのでしょうか。そして、最良の市場参入戦略とはどのようなものでしょうか。 今日、10人に5人がアジアの都市部に住んでおり、世界の都市人口の54%を占めています1。今後20年間で、10億人以上の人々がアジアの都市部に移動すると予想されています。言い換えると、毎週100万人が新たに到着することになります。近いうちに、世界のメガシティーの60%がアジアに集中することになります。 インドでは、この傾向がさらに加速しており、2億人以上の人々がより良い生活の質とより大きな経済的見通しを求めて、生まれ育った土地から移住しています。インドの都市部は今後数年間で飛躍的に成長し、同国のGDPの大部分が都市からのものになると予想されています。インドの都市部の成長ペースを考えれば、インドにはまもなく新しいメガシティーや何百という新しい都市が生まれることでしょう。 インドに赴けば、この国の膨大な成長が手に取るようにわかり、その活力や活気は刺激的かつ圧倒的です。野外市場や露店からホテルのロビーや会議室の喧騒まで、色、音、味、匂いの饗宴が五感を圧倒します。その中心にいるのがこの国の人々です。 ただ、急激な成長は、新旧問わず、高度にネット接続された「スマート」な都市、さらには新興企業、地元企業、多国籍企業にとって、大きな課題となっています。障害とチャンスをより理解できるよう、マーサーは「ピープルファースト:新興メガシティーにおける成長の促進(People First: Driving Growth in Emerging Megacities)」という広範な研究を行い、新興の成長都市における生活と仕事を調査しました。 この調査は、インドの4つの急成長都市(アーメダバード、チェンナイ、ハイデラバード、コルカタ)を含む、世界15都市の雇用主と労働者の視点を収集したものです。調査結果は、インドの都市化の恩恵を受ける可能性のある人々に、実用的な洞察を提供しています。以下が3つの重要な調査結果および必須事項です。 1.人々が最も大切にしていることを理解する   この調査では、人々が都市にどのような期待を寄せているか、および人々が特に重要と考える要素を都市がどの程度提供しているかを検討しました。世界的に見て、労働者の生活の質に対する期待とそのニーズに応える都市のパフォーマンスの間には30ポイントの差がありました。全世界の統計では、生活・就労する都市についての人々の感じ方に影響を及ぼす要因の上位3つは、安全・安心で暴力がないこと(1位)、手頃な価格の住宅(2位)、そして輸送・交通・移動手段(3位)となっています。 インドでの調査結果も驚くほど似ていますが、地域による違いもあります。コルカタの住民は、十分な就業機会がないことが問題であると感じています(25ポイント差)。一方、アーメダバードとチェンナイの人々は、大気汚染や水質汚染への対応が改善されることを望んでおり(それぞれ14ポイント差と19ポイント差)、ハイデラバードでは、給与/ボーナスが最大の課題として浮上しています(10ポイント差)。 人口過剰で資源に制約のある都市部で、都市が住民のニーズをより適切に満たすことができるようにするには、政府と企業が協力して取り組む必要があります。この調査によれば、労働者階級の人々は、都市の体系的な問題に大規模に対処する責任を負うことを、特定のひとつの組織に求めていないことがわかりました。 その代わり、国・連邦政府の支援(62%)や大企業の支援(53%)を受けながら、市や地方自治体と効果的に協力していくこと(77%)を望んでいます。どの組織も、急速に成長中の都市におけるインフラ、人材、または人々のニーズに関する問題を単独で解決することはできません。こうした問題解決は、協力、関心の共有、リソースの共同管理により可能となるもので、また、そのように行われなくてはなりません。 2.仕事の未来に備える   都市が自動化や新技術の試験場となることはよくあり、職場は一般的に、そうした動きの影響から一番に恩恵を受ける領域の1つです。インドでは、他のいくつかの世界経済地域に比べて、「コネクティビティ」(相互接続性)が生活様式に溶け込んでおり、デジタルプラットフォームが広く使用されています。各種の推計では、2030年までに買い物の40%以上がデジタル的な影響を大きく受けた形態になるとされています。2インドは、国としての人工知能戦略の構築において世界をリードする国の1つです。ブロックチェーンテクノロジーの採用では最前線を進み、ドローンの使用でも先がけとなっています。 マーサーの調査結果では、被雇用者(45%)と雇用者(52%)の両方が、自動化およびAIによって作業の効率化が進むと考えています。世界全体では、62%の労働者が、今後5〜10年以内にAIが自分の仕事の少なくとも半分を置き換えることができるようになると予想しています。インドでは、自動化はさらに大きな役割を果たすと予測されています。というのも、インドの雇用者の61%、被雇用者の8%が、テクノロジーが自らの仕事の50%以上に取って代わると予想しているからです。このため、今後5年のうちに失職しないと確信する人は5人に1人に留まっています。企業にとってこの結果は、未来の働き方に備えるとともに、将来必要とされるスキルや人材を想定して準備を進めることを求めるメッセージといえるでしょう。 さらに旅は続きます。マーサーの調査によると、現時点では、柔軟な勤務形態(フレックスタイム、在宅勤務など)で働く人々は、インドの未来を支える都市における労働人口の30%に過ぎません。テクノロジーが人間の能力をますます拡大し続ける中、企業は「どこで」作業を行うかのみならず、「どのように」行うかについても計画する必要があります。企業が競争優位性を維持するためには、現在とは異なる人材と新たなスキルを模索し、人間ならではの能力――複雑な問題解決能力、創造力、優れた顧客サービス、異文化間の協力、判断力、共感力など――をこれまで以上に重視する必要があります。 結局、企業は人をテクノロジーの中心に置くことにより利益を得るのであって、その逆ではありません。 3.インド人となり、インド製品を購入し、インド人と提携する   国際企業が事業の規模を拡大し、世界的に事業を拡大しようとするなら、インドを見逃してはなりません。2025年までに、インドの世帯数は3倍になり、その80%が中流階級の家族で構成されるようになります。そして、中流階級の拡大に伴って、生活の質の向上に対する需要が高まっています。生活必需品から贅沢品、あらゆる形態のサービス、住居・教育・ヘルスケアの改善、交通手段の安定性向上、さらには安全性に至るまで、さまざまなものが求められています。 世界の優良企業はインドに進出する際に、十分な情報に基づく適切な戦略を考案する必要があるでしょう。一部の企業にとっては、最良の形で参入できる方法は、文化的規範、規制環境や商習慣への対応方法について深い知識と専門性を備えた地元企業と提携することかもしれません。 また、事業拡大は、インドを安価な労働力を得る場所としてでなく、購買力をますます高めつつある才能豊かな教養のある人々が存在する貴重な場所ととらえる、考え方の転換にもつながります。ただしその場合、従来型の働き方を手放し、代わりに現地のパートナーシップ、慣習、リーダーシップを取り入れることになるでしょう。 根気強く執拗に持続可能な成長を追求すれば、長期的な価値を推進できるでしょう。最後に、我々の多くが退職する前に、インドが米国経済を追い越し、世界第2位の市場になる可能性が高いことを念頭に置いておくと、皆に利益がもたらされるでしょう。3 時間同様、成長は待ってはくれません。インドの急速に拡大する都市は、うまくいけば、収益性のある成長を遂げる可能性があります。重要なのは、誰にとっても、利益を得るとは人々を最優先にすること(ピープルファースト)であるという点です。 企業や自治体がどのように市民に対する戦略を加速し、営業的利益を実現できるのか、さらなる洞察と実用的なアドバイスにアクセスするには、「ピープルファースト:新興メガシティーにおける成長の促進(People First: Driving Growth in Emerging Megacities)」をダウンロードしてください。 出典: 1U.N. Economic and Social Council, "Urbanization and sustainable development in Asia and the Pacific: linkages and policy implications," March 7, 2017, https://www.unescap.org/commission/73/document/E73_16E.pdf. 2Ojha, Nikhil and Zara, Ingilizian, "How India Will Consume in 2030: 10 Mega Trends," World Economic Forum, January 7, 2019, https://www.weforum.org/agenda/2019/01/10-mega-trends-for-india-in-2030-the-future-of-consumption-in-one-of-the-fastest-growing-consumer-markets. 3Wang, Brian, "World GDP Forecasts for 2030," Next Big Future, January 14, 2019, https://www.nextbigfuture.com/2019/01/world-gdp-forecasts-for-2030.html.

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