何十年にもわたり、スタートアップ企業やその役員報酬というと、シリコンバレーやテクノロジーの第一人者が多数働く、次世代のユニコーン企業を目指す 10 億ドル規模のイノベーティブな会社やその最先端のオフィスビルのイメージで語られてきました。しかし、近年、グローバルスタートアップ企業はこれまで予想もしなかった地域で成長しています。 最近の調査によると、8 億 9,300 万ドルが中東および北アフリカのスタートアップ企業 366 社に投資されています。スタートアップ企業への投資額は 2017 年に比べ 2 億 1400 万ドル増加し、6 億 6900 万ドルとなりました。1 また、東南アジアにおいても、海外 (ほとんどの場合シリコンバレーなどの欧米) で学び、地元に戻った「ウミガメ」と呼ばれる人々によって、スタートアップ企業の立ち上げが相次いでいます。この地域では重要な転換点を迎えており、東南アジアの VC 投資家は 327 ディール、 78 億ドル超を投資しています。2 すべてのスタートアップ企業で必要不可欠な要素、それはリーダーシップです。しかし、幹部クラスの人材と経営陣を確保・維持することは、成長中のスタートアップ企業にとって、特に報酬面では大きな課題となるかもしれません。 役員報酬を変える機関投資家 世界的に有名なスタートアップ企業の多くは、ジェフ・ベゾス、ジャック・マー、マーク・ザッカーバーグなど、カリスマ的な創業者によって立ち上げられました。しかし、これらの有名人や成功物語は、世界中に花開くスタートアップ企業の新しい時代の幕開けを反映しているものではありません。 たとえば、中東・北アフリカ (MENA) では、投資会社がスタートアップ企業の立ち上げに必要な初期の資金援助を行っています。これらの投資会社は、スタートアップ企業の立ち上げ時から資金繰りを支援しています。さらに、これらのスタートアップ企業の経営幹部は創立者ではないため、ロイヤリティや創造性、コミットメントを維持するために異なる報酬モデルを望んでいます。 C-レベルの優秀な人材を獲得するのは、実績がほとんどない、あるいは全くないスタートアップ企業にとってはリスクが高いため、非常に困難と言えるかもしれません。従来、欧米のスタートアップ企業は成長予測を前提とした中長期的なベンチマークを中心に役員報酬パッケージを策定してきましたが、成長モデル、投資戦略、役員報酬の三角化は複雑で厳しい課題となることがあります。 現在、世界的なスタートアップ企業はほとんどの場合、インスピレーションに富む創業者ではなく、投資会社が中心となって設立されているため、会社は経営陣、いわば成功と失敗の分かれ道となり得る人々に払う報酬を決定する際は入念に検討する必要があります。 役員報酬はいくらにすべきか? 当然のことながら投資会社は収益の最大化を望みます。つまり、スタートアップ企業にはできるだけ多くの純資産や株式を保持しておきたいと考えます。スタートアップ企業の役員に支払われる金額 、株、またはオプションはすべて投資会社が運用コストとして支払う費用になります。ただし、スタートアップ企業の役員に低い報酬を提示したり、スキルや経験のない人材を雇ったりすると、企業の競争力、成長力、収益力が損なわれるリスクもあります。 経営陣に潜在的な株式を提供する財務的な取り決め (シャドウエクイティともいう) は、慎重に考慮し検討する必要があります。役員報酬プランは、スタートアップ企業の報酬のインセンティブと経営者を維持する制度として機能させる一方、企業に資金を提供した投資家や株主に適正なリターンを提供するものにしなければなりません。投資家と株主は、経営陣に適切なエクイティ・プールを提供するために、どの程度の株式希薄化を受け入れることができるかを決める必要があります。 このため、多くの企業では、企業価値の増加に対応して資金調達の各投資ラウンドでエクイティ・プールのサイズを縮小する段階的アプローチの実行が決定されます。このタイプのプログラムにより株式希薄化を緩和し、特に製薬業界やフィンテック業界など、熟練した専門家や経営者の才覚や知識を必要とする、先進的なスタートアップ企業を扱う際に創造的な報酬戦略を策定することができます。 投資会社は、一定のタイミングと価格で株式を売買する権利を付与する株式オプション、または会社の実際の所有権を付与する普通株式のいずれかを従業員に提供することがあります。いずれも株式を希薄化しますが、オプションでは通常、普通株式よりも希薄化の効果が高くなります。たとえば、オプションで構成されるエクイティ・プールは、会社資本の 15 ~ 20% に達することがありますが、普通株で構成されるプールではわずか 3 ~ 5% に過ぎません。これは、長期インセンティブ報奨について、同額をオプションで支払うと、普通株の付与と比べて株式の希薄化効果が高まることを示しています。投資会社は、目的に対してどの戦略が最も適しているかを判断する必要があります。 役員および経営幹部に支払うタイミング 投資家が役員や経営幹部に支払うのは、投資回収の後にすべきでしょうか?それとも、業績は多くの場合、制御不能な外部の経済要因に左右されるため、経営者報酬は業績ではなく、従業員として能力を最大限に発揮して仕事を遂行したかどうかに基づいて支払うべきでしょうか。 多くのスタートアップ企業では、投資回収のベンチマークが経営幹部をやる気にさせ、株主価値を生み出すために最善を尽くす追加のインセンティブになると考え、前者の戦略を実行しています。実際、多くのケースで長期インセンティブプランは投資家がリターンを受け取った時にのみ支払われています。あるいは、一部のスタートアップ企業は、相互に合意した特定の企業の目標や目的に基づく役員や経営幹部に対する報酬を選択しています。報酬は現金や株式で提供されますが、株式の売却または付与のタイミングが制限されたり、オプションや普通株の形式で付与されたりもします。 世界中でスタートアップ企業が出現し、アイデアやイノベーション、そして次世代における未来のユニコーンを生み出す投資家や経営幹部が登場してきました。これらのスタートアップ企業の経営幹部を担う役員報酬の支払方法について新たなトレンドが続く中、グローバルスタートアップ企業は投資家の利益を最大化しつつ優秀な経営幹部を確保する選択肢を慎重に検討する必要があります。 出典: · "2018 MENA Venture Investment Summary." MAGNiTT, January 2019, https://magnitt.com/research/2018-mena-venture-investment-summary. · Maulia, Erwida. "Southeast Asian 'turtles' return home to hatch tech startups." Nikkei Asian Review, 22 May 2019, https://asia.nikkei.com/Spotlight/Cover-Story/Southeast-Asian-turtles-return-home-to-hatch-tech-startups.  

Varun Khosla | 03 10 2019
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ラテンアメリカ、中東、アフリカ、アジアは経済成長と人口動態、投資市場、規制の変化を背景に、世界で最もエキサイティングな市場の一つとなっています。 「マーサーの成長市場におけるアセットアロケーション動向調査: 進化する状況レポートでは、そのうち 14 の市場の年金基金について現在の投資ポジションおよび過去 5 年間の変化を調査しました。この調査には、南半球と東半球の市場全体で約 5 兆ドルの年金基金が含まれています。 世界銀行によると、これらの地域の経済によって世界の成長の約 70% がもたらされるため、資産の所有者、管理者、投資家に対して新たな投資機会が提供されています。消費と貯蓄のさまざまなパターンを生み出す中産階級の急速な拡大も見られ、さらに、世界の機関投資家の上位 50 社のうち半数がこれらの市場に本拠を定めています。1 ますます堅調になりつつある世界の投資環境 ラテンアメリカ、中東、アフリカ、アジアの経済規模は大きく、成長していて、個人が保有する富の割合が増えているため、世界中の投資家にとって特に注目の的となっています。これらの市場はまた、外国人投資家にますます門戸を開いています。同時に、これらの地域における規制の変更により、国内投資家の選択肢が広がり、自国の市場外で投資できるようになっています。その結果、投資環境はオープンで安定したものになっており、世界中の投資家にはますます機会の扉が開かれています。 これらの地域の年金基金制度も改革が進行中で、西欧諸国と同じく退職貯蓄については個人の責任が増大する傾向が見られます。全体的に見て、企業と政府が運営する制度の両方で確定給付 (DB) から確定拠出 (DC) に移行しつつあります。これらの変化により、将来の貯蓄ニーズを満たし、制度への信頼を担保するために効果的な投資ソリューションを提供する必要性が際立っています。 投資家による 3 種類の対応方法 投資家やプランマネージャーは、変化する環境に 3 種類の主な方法で対応しています。 1. 株式に投資する投資家が増加しています。過去 5 年間で、自己資本配分率は 32% から 40% へと約 8% 増加しました。多くの地域の投資家がポートフォリオの期待収益率を高めようとしてこのようなシフトが見られています。競争激化した低リターンの投資環境の中で、世界中の投資家が問題に直面しています。ポートフォリオミックスに株式を追加すると、長期的にリターンの向上が期待できるはずです。   2. 市場の自由化によりポートフォリオの多様化が可能になり、国内資産の代わりに外国資産へのエクスポージャーが高まっています。年金基金における海外エクスポージャーは、過去 5 年間平均で全株式ポートフォリオの 45% から 49% に増加しました。投資家は地理的な多様性を求めていますが、特にコロンビア、日本、韓国、マレーシア、台湾で伺えます。ブラジル、コロンビア、ペルー、南アフリカなどのいくつかの国でも、法律の最近の変更により、現在では外国資産へのエクスポージャーが増加しています。最近では日本政府の年金基金が国内株式を犠牲にして、外国株式に移行しています。 外国債券へのシフトも見られており、外国資産への配分は 16% から 23% に上昇しました。これは国内債券の金利が低いこと大きなやポートフォリオ多様化機会の追求によるものです。ただし、ホームバイアスが残っていますが、規制の変更により、幅広いグローバル投資が支えられるため、このトレンドは続くと予想されます。   3. 投資家のオルタナティブ投資に対する関心が若干高まっています。オルタナティブ投資をポートフォリオに組み入れる投資家が増加しており、マーサーではこのトレンドが継続すると予想しています。代替アセットアロケーションの詳細を公開した投資家のうち、平均配分の 70% 超が不動産とインフラに、約 20% が非公開企業の株式に投資されていました。規制の変更により、一部の分野では投資家にとって代替投資の魅力が増しています。たとえば、チリでは 2017 年に投資制度の改革案が可決され、具体的な制限はポートフォリオによって異なるものの、年金基金の運用者は最大 10% をオルタナティブ案件に投資できるようになりました。この改革の主な目的は、利益を上げて、最終的に年金収入を増やすことにあります。投資家がポートフォリオを多様化し、リターンの向上を追求する中で、代替投資のエクスポージャーは長期的に増大することが予想されます。 投資家の皆様におかれましては、当社レポートの調査結果を、ポートフォリオを見直し、投資リターンの向上のために改善できるアセットアロケーションの分野について調べる機会としてご活用いただければ幸いです。 詳細については、こちらのレポートをダウンロードしてください。 出典: "Top 1,000 Global Institutional Investors." Investment & Pensions Europe, 2016. https://www.ipe.com/Uploads/y/d/w/TOP-1000-Global.pdf.

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企業がすべてのものをデジタル化する移行を継続するにつれ、このトランスフォーメーションの波は必然的に仕事のすべての領域に押し寄せ、財務機能から税務コンプライアンス、データアナリティクス、またその先に至るまですべてをデジタル化するでしょう。 マーサーのグローバル・タレント・トレンド 2019レポートによると、約 73% の役員は今後 3 年間で業界内で大きな創造的破壊が起こることを予想しています。デジタルトランスフォーメーションにより、この数字は 2018 年の 26% から大幅に上昇しています。また、半数以上の役員は、企業の現在の職の 5 分の 1 が AI とオートメーションに取って代わられることを予想しています。これは一部の企業で懸念となる一方、この 2 種類の激震により、2022 年までに 5,800 万人の新規雇用が生み出されることも意味しています。                           マーサーの年次アンケートに回答したビジネスリーダーは、科学技術の進歩が世界経済の成長に対して及ぼす影響について様々な意見を持っています。デジタル化により機会が開ける分野がある一方、一群の新たな、そしておそらく機敏なプレーヤーによる競争激化も予想されます。 世界経済先行きの見通し   マーサーのレポート2019 年以降の経済・市場の見通しによると、世界経済の混乱は米中貿易摩擦がどのように解決するかの不透明性によりさらに悪化します。米国経済は金利上昇により幾分減速するかもしれませんが、中国経済は貿易摩擦解決の行方次第です。他の新興国市場では、ほぼ同じペースでの成長が見込まれており、経済摩擦が緩和されたときに力強く成長する可能性があります。 マーサーの2019 年のテーマと機会調査報告は、「行き過ぎた信用を示す証拠の増加」により生み出される急激な混乱、および中央銀行の巨額の流動性注入からの撤退により経済にどのような影響が及ぶかについて注目しています。 同報告書はまた、政治的影響、特に貿易への影響により「グローバリゼーションのペースが減速し、一時停止し、さらには逆戻りするかもしれない」という明確な可能性についても指摘しています。さらに、政府、規制当局および受益者から、資産所有者および投資運用会社にサステナビリティを標準的な行動として取り入れさせるような期待が高まっています。 税務コンプライアンスのデジタルトランスフォーメーション   この目まぐるしく変わる状況において、企業はさまざまな地域の税務コンプライアンスを含む、機会と義務の両方を管理し、対応するのに役立つデジタル化にますます注目しています。一部の国では現在、徴税努力を改善するためのデジタルテクノロジーの導入も進んでいるため、これはいわゆる動く標的のようなものになっており、特にアジアについてそう言えます。 2015 年に地域内 28 か国の平均税収の GDP 比率はわずか 17.5% でしたが、これは OECD 諸国の平均 34% の半分に過ぎません。インド、カザフスタン、マレーシア、モンゴル、ネパール、シンガポール、および中国では主要な税金についての電子納税申告書の活用の点で大きな前進が見られています。さらに、中華人民共和国、インドネシア、モンゴル、ベトナムの歳入機関では、電子決済が義務付けられるようになりました。1 デジタル化と税規制の強化もまた、徴収努力を大幅に改善することを目的としていますが、さらなる努力が求められています。政府は電子監査システムに基づいて課税額を示す eAssessment を企業に送ることを含め、デジタル化の助けを借りて税務管理の取り組みを大きく前進させています。2税務申告書の毎月の売上額に矛盾が検出されて場合、利息や罰金を含む eAssessment が自動的に発行されます。 ソヴォスの社長兼 CEO、アンディ・ホヴァンチク氏は率直に言います:「要するに、税金の徴収は最も重要なビジネスプロセスに組み込まれるようになっており、税務の世界を変え、何十年も前のビジネスプロセスを創造的に破壊しています。結果的に、税金が財務部や経理部のデジタルトランスフォーメーションを推進している状況です。それで企業は税務のオートメーションに対し、これまで以上に新しいアプローチによるコンプライアンスの確保が求められていると言えます」2 Vertex Inc. の取引税の最高税務責任者、マイケル・バーナード氏を含め、財務担当役員は次の点に同意しています。バーナード氏は言います。「世界中の政府は、IT 部門に対してコアプロセスにワークフローを組み込むことを求める電子請求規則、およびリアルタイムの VAT コンプライアンスチェックなど、新しい形式のコンプライアンスに目を向けています。2019年、金融機関は税務上の考慮事項をデジタルトランスフォーメーション戦略に織り込むようになります。効果的なロードマップには、データを活用してビジネスプロセスと税務コンプライアンスの責務を関連付けるアクションが含まれるようになるでしょう」3 コンプライアンスをビジネス戦略の指針に   デジタル化だけで最新の税法に準拠した税務コンプライアンスを実現することはできません。コンプライアンスをビジネス戦略の中心に据える必要があります。これには、従業員がコンプライアンスに関してマインドフルネスの状態になるのを支援するため、企業全体でトレーニングセッションを導入することも含まれます。ただし、ますます説明責任が求められる時代に、TMFGroup のコンプライアンスおよび戦略規制サービスのグローバルヘッド、レイラ・シュワルク氏は、コンプライアンスの概念を競合他社と区別できる「ビジネスイネーブラー」として考え直すべきと指摘しています。4 シュワルク氏によると、「コンプライアンスは余分な開発作業としてではなく、ビジネスの成功をもたらすイネーブラーとしてみなすべきです。企業が組織上の課題に関連して創意工夫に富むソリューションを一体となって編み出す場合にのみビジネスの成功がもたらされます」。「APAC 企業は新しい規制時代に直面しており、コンプライアンスチームは自社の利益と、長期的な競合優位性の確保の両方で重要な役割を果たしています」と彼女は続けます。 市場の不確実性や大きな変化が先に控えているため、時代を先取りしてデジタルトランスフォーメーションの波を乗り切るだけでなく、ビジネスを成功させる方法についてことが、これまで以上に重要になっています。今日、これらの点を考慮し、コンプライアンスとデジタル化を中心にしたビジネス戦略の立案を始めましょう。そうすれば、明日の見通しは明るいものとなります。 出典: 1.Suzuki, Yasushi; Highfield, Richard. "How digital technology can raise tax revenue in Asia-Pacific." Asian Development Blog, 13 Sept. 2018, https://blogs.adb.org/blog/how-digital-technology-can-raise-tax-revenue-asia-pacific./ 2.Hovancik, Andy. "How Modern Taxation is Driving Digital Transformation in Finance." Payments Journal, 16, Jul. 2018, https://www.paymentsjournal.com/how-modern-taxation-is-driving-digital-transformation-in-finance/. 3. Schliebs, Henner. "2019 CFO Priorities: Experts Predict Top Trends." Digitalist Magazine, 18 Dec. 2018, https://www.digitalistmag.com/finance/2018/12/18/2019-cfo-priorities-experts-predict-top-trends-06195293. 4.Szwarc, Leila. "Regulatory compliance – The new business enabler." Risk.net, 18 Mar. 2019, https://www.risk.net/regulation/6485861/regulatory-compliance-the-new-business-enabler.

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主にデジタルトランスフォーメーションを受け入れる若者たちで構成されるアフリカ大陸のユニークなポジションは、世界中の銀行に未来を垣間見させてくれます。この新しい世代の間では官僚主義ではなく俊敏性が、従来型の応対ではなくオンラインオートメーションが支持されており、人手による非効率、地理的な制約、適応能力の欠如に悩まされることはありません。 事実、アフリカの銀行の顧客の 40% はバンキングニーズにおいてデジタルチャネルの活用を望んでいることが報告されています。1この消費者選好の劇的な変化により、アフリカは変化の最前線に押し上げられ、アフリカの銀行セクターはイノベーションの温床となっています。特に南アフリカ、ケニア、ナイジェリア、コートジボワールにおいて、銀行業務のデジタル化やフィンテックの台頭が顧客や売上、そして未来の銀行従業員にもたらす、かつてない影響や結果に対処する点で先進的な事例が見られています。 モバイル利用とデジタルバンキングの台頭   モバイル利用とデジタルバンキングは密接に関連しています。アフリカではすでにライフスタイルにデジタルチャネルが組み込まれているため、銀行利用者にもデジタルバンキングが好まれています。2017 年、サハラ以南の 90% 以上は 2G ネットワークでカバーされていますが、さらに高度なモバイルブロードバンドネットワークがこの地域で急速に導入されており、そこでは 3 分の 1 のモバイルユーザー (2 億 5000 万人) がスマートフォンを持っています。2 人々はモバイルテクノロジーに慣れており、デジタルプラットフォームが信頼されているため、容易にデジタルバンキングチャネルを導入できます。 富へのかつてないアクセスの創出   高速かつ安価なデバイス、そして安定したネットワークに広い範囲でアクセスできるようになったことがアフリカ全土の貧しい国々に力を与え、新時代の接続性、情報そしてオンラインリソースが飛躍的に活用されるようになっています。この大規模な発展は、固定電話の影響を薄れさせるだけでなく、サハラ以南のアフリカにおいて、携帯電話の普及率が電気の普及率よりも高くなるという新しい現実が生み出されています。 携帯電話から直接現金を送金できるようにするモバイルマネーシステムは、人々の経済的な運命を向上させています。たとえば、2008 年から 2014 年の間にケニアの世帯の 2% が貧困から抜け出しました。3ナイジェリア (人口の 60% が 25 歳未満) は、中国、インド、パキスタン、インドネシアと合わせて、2025 年までにオンラインになると予測される 16 億モバイルインターネットユーザーの 50% を占めています。4 ネットにつながってテクノロジーに精通した世代が増えていることが銀行ユーザーが業界全体とその労働者を創造的破壊に陥れています。 銀行で働く人材の近代化という課題   デジタルトランスフォーメーションとモバイルバンキングが銀行や従業員に与える影響について理解するため、スタンダードバンクの最近の進展について詳しく見てみましょう:アフリカで最も強力で影響力のある銀行の 1 つにもかかわらず、それは国内 91 か所の支店を閉鎖し、1000 名超のポジションを危うくする計画を発表しました。5 従来、人間が行っていた取引やプロセスをデジタル化することで、銀行やそこで生計を立てる従業員のスキルセットはますます時代遅れになり、深刻な課題が生み出されています。世界の銀行業界にとって、アフリカは避けられない近未来を表しています。銀行の従業員は当然のことながらキャリアの存続について懸念しています。 複雑な取引環境の中で大手銀行が競争の激化に対処し、ポートフォリオの中で成長を推進するための革新的な方法を模索する中で、TymeBank や Bank Zero をはじめとする新世代のテクノロジー志向の銀行やフィンテック企業が台頭しています。 変化の時代における機会の扉   変化の時代には常に機会があります。マーサーのグローバル人材動向 2019レポートでは、イノベーションにより従来の労働力にとって大きな障害が生まれる可能性があり得るものの、キャリア開発と専門職の成長のためにはまたとない機会ともなり得ることが示されています。 マーサーでは CEO、CFO、銀行役員に対し、アフリカのデジタルバンキングブームから学べる教訓を活用して、金融業界全体でデジタル化を導入するために必要な知識とリソースを提供することができます。アフリカのテクノロジーとテクノロジーに精通した顧客の交差により、デジタルバンキング業界の成長スピードが加速し、グローバル市場で成長する可能性が高まっています。 世界中のテクノロジーに精通した消費者が銀行の投資、リソース、戦略を最先端のモバイル対応プラットフォームに移行することを求めている中で、マーサーの信頼できる専門家は透明性と明確な戦略を提供することで、銀行とその中で働く人材が新しい時代のデジタルトランスフォーメーションに適応できるように強化しています。 出典: 1Agabi, Chris. "40% of African bank customers prefer digital channels transactions — Report." Mobile Money Africa, 23 Apr. 2019, https://mobilemoneyafrica.com/blog/40-of-african-bank-customers-prefer-digital-channels-transactions-report. 2Radcliffe, Damien. "Mobile in Sub-Saharan Africa: Can world's fastest-growing mobile region keep it up?" ZDNet, 16 Oct. 2018, https://www.zdnet.com/article/mobile-in-sub-saharan-africa-can-worlds-fastest-growing-mobile-region-keep-it-up/. 3"In much of sub-Saharan Africa, mobile phones are more common than access to electricity." The Economist, 8 Nov. 2017, https://www.economist.com/graphic-detail/2017/11/08/in-much-of-sub-saharan-africa-mobile-phones-are-more-common-than-access-to-electricity. 4Kazeem, Yomi. "Nigeria's young population will help drive global mobile internet user growth over the next decade." Quartz Africa, 18 Sept. 2018, https://qz.com/africa/1393908/gsma-nigeria-to-add-50-million-mobile-internet-users-by-2025/. 5Khumalo, Kabelo. "Customer behaviour triggered Standard Bank move to close 91 branches." Business Report, 15 Mar. 2019, https://www.iol.co.za/business-report/companies/customer-behaviour-triggered-standard-bank-move-to-close-91-branches-19896105.

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近年になって激しさを増す経済の多様化と開発努力の観点から、プライベートエクイティ(PE)は、湾岸協力会議(GCC)においてますます重要になっています。PEはGCCにおける比較的新しい資産クラスとして台頭してきていますが、GCCでは、UAEや西ヨーロッパの先進国市場に見られ、ファンドマネジャーが過半数の株式を取得する従来の「買収型」PEよりも、「成長資本型」PEへの関心が高まっています。実際、ベンチャーキャピタル(VC)では、Careemのようなこの地域のVCユニコーンの成功やAmazonによるSouq.comの買収を受けて、資金調達が急増しています。 PEは、経済成長を促進する上で重要な役割を果たすことができます。GCCは、富の増加、最近の重要な経済改革、そして地域の各政府が強力に主導する、現地の起業家精神の強化や中小企業の振興などの要素によって、PE投資にとってきわめて魅力的な地域となっています。 地域の各政府は、地域での起業計画を奨励するため、規制を緩和したインキュベーターや地域ハブを創設することにより、VCのさらなる成長を促進しようとしています。最終的にはこうした取り組みが、持続可能な経済成長を促進し、より大きな成功をもたらし、さらに高度な技術を要する仕事を増やすことでしょう。 しかし、大きな話題になったAbraaj Groupの事件を受け1、 投資業界はこの地域において、より強固な企業統治を求めています。自らの資金がどう扱われるかという点について、投資家がより大きな注意を払うようになったため、現地のPEマネジャーは以前よりはるかに厳しい監視を受けるようになっています。 地域の投資家は、民間市場の業績を測定する際、さらに深い理解を求めるようになっています。買い手や投資家は、過去のパフォーマンスなどの要素を考慮し、投資と業務に対してデューデリジェンスを実施して、実証済みかつ試験済みの情報に基づいてPE市場に参入する決定を下したいと考えています。 民間市場の絶対的および相対的なパフォーマンス測定はとても重要であると同時に、非常に繊細なものでもあります。「価値創造」はPEのストーリーにおける重要な側面であるため、測定は正確であるのみならず意味を持つものでなくてはなりません。 あらゆる投資と同様、過去のパフォーマンスを評価することは常に、ポートフォリオの全体的資産配分にPEを含めるかどうかを決定する際の要素となります。しかし、PE投資家は、厳格なデューデリジェンスを通して、ファンドの真のパフォーマンスをさらにじっくり見極めなくてはなりません。測定基準と定性的測定の組み合わせは、ファンドの実績と将来のパフォーマンスの可能性を総合的に理解するために重要です。 定量的測定基準に関して最も一般的に使用される3項目は、内部収益率(IRR)、投資倍率(TVPI)、および実現倍率(DPI)です。 IRRは、民間市場投資のパフォーマンス測定に最も広く引用されている測定基準です。これは、一定期間にわたって行われた投資と取得された投資を考慮する、時間ベースの測定です。投資が成熟する(または特定の価格で売却する)のに時間がかかればかかるほど、年換算IRRは低くなります。 2つ目の指標であるTVPIは、当初の投資と比較して、(配当および最終的な売却を通じて)投資からどれだけの価値が得られたかを検討するものです。最後の指標はDPIで、当初投資された金額と比較して、当初の資本のうちのどれだけが(配当またはその他の支払いを通じて)返ってくるかを測定するものです。DPIは実現値のバロメーターであり、合計値ではありません。 これら3つの指標はすべて、投資家がPEファンドの過去のパフォーマンスを評価するために重要な役割を果たします。PEファンドのパフォーマンスを包括的かつ正確に評価する唯一の答えはありませんが、これらの指標を一括使用すると、より深く理解することができます。 ファンドの過去のパフォーマンスを測定しても、今後のPEファンドのパフォーマンスがわかるわけではありません。こうしたコミットメントの有効期間は長いため、投資に関連する他の要素を検討する必要があります。その一環として、投資チームの安定性を評価する場合があります。投資チームによるディールソーシングの方法や、投資先企業で価値を生み出している方法を検討することになります。 Abraajの事例を受け、マネジャーやバックオフィス業務の評価は、デューデリジェンスの重要な測定基準の1つになりました。効果的な内部統制、強力なシステム、十分な人数の運用チームも、PEファンドを成功させるために重要となります。 民間市場のパフォーマンス測定は、公設市場のパフォーマンス測定より明らかに複雑です。民間市場のパフォーマンスを測定するためには、関連する測定基準や手法に対する見方を明確にする必要があります。しかも、さまざまな観点から情報が入るうえに、特殊な分析方法が求められます。さらに、主観が入ることがあるうえ、操作されるおそれもあります。結局のところ、このようなパフォーマンス測定は、民間市場投資の成功の不完全な評価を表現するものとなっています。しかし、民間市場のパフォーマンス測定は進化し続けており、現在の欠点が改善される可能性はあります。 投資家にとって鍵となるのは、長期にわたって持続的に強力な投資を生み出すことができる投資人材を見出すことです。過去のパフォーマンスはマネジャーの今までの実績を評価するためには役立ちますが、将来の成果を保証するものではありません。したがって、投資家は深い「定性的」投資を行いつつ、運用に対するデューデリジェンスを実施して、投資が将来的に成功する可能性を見極める必要があります。 マーサーによる投資戦略の支援方法についての詳細は、こちらをクリックしてください。 出典: 1Ramady, Mohamed, "Abraaj Capital: The Rise and Fall of a Middle East Star," Al Arabiya, July 3, 2018,https://english.alarabiya.net/en/views/news/middle-east/2018/07/03/Abraaj-Capital-The-rise-and-fall-of-a-Middle-East-star.html#.

Sean Daykin | 13 6 2019
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時代は変化しています。世界は倫理的で長期的に持続可能な投資を志向し始めています。将来に備える政府は、持続可能な発展を支援する金融市場の役割をますます強調するようになっています。責任ある投資(RI)ソリューションに対する投資家の需要は大幅に高まっています。これはRI関連投資に割り当てられる資産の増大から見て取れます。低コストのインデックス投資へのシフトに伴い、現在利用可能なRIインデックスも増えています。 RIインデックスは、環境、社会、企業のガバナンス(ESG)に関する多くの投資家の考え方を、既存のパッシブ運用やファクター投資に組み込むための重要な第一歩になると期待されています。マーサーでは、責任ある投資を、ESGファクターが業績に重大な影響を与える可能性があるという信念の下で、投資管理プロセスと企業所有の手法にESGファクターを組み込むことと定義しています。 一方、GCC(湾岸協力理事会)地域では、政府は経済の多角化を図る中で、責任ある投資の重要性についての認識を高めています。2017年12月にパリで開催された「ワンプラネットサミット」で「ワンプラネットSWFワーキンググループ」を設立した6つのソブリンウェルスファンド(SWF)のうち、GCC諸国のファンドが4つに上ります。 UAE国内でも、「持続可能な開発のためのグリーンエコノミー」や「グリーンアジェンダ」など多数のイニシアティブが、未来の責任ある投資に向けて国を動かしています。多様化戦略との調和に関しては、これらのイニシアティブは、国家の経済成長と環境持続可能性の目標をすり合わせることにより、「ビジョン2030」をサポートしています。 アブダビでは、マスダール・シティ(数十億ドル規模のグリーンエネルギープロジェクト)などのさまざまな開発を通じて、目立った形でアジェンダに貢献しています。1一方、ドバイでは、エネルギー・アンド・エンバイロンメント・パーク(通称エンパーク、クリーンエネルギーと環境テクノロジー企業のためのフリーゾーン)を開設しています。2 GCC諸国で責任ある投資事例の影響が強まるにつれ、投資の意思決定やプロセスにESGファクターやサステナビリティのテーマを組み込むことを求める声が高まっています。機関投資家は、投資そのものだけでなく、自身の評判や収益の面についても、責任ある投資の効果を考慮に入れるようになっています。持続可能な投資は、資源不足、人口動態の変化、幅広い環境問題や社会問題に対応する政策の変化など、さまざまな課題への解決策を提示する企業の潜在能力を活かすための魅力的なチャンスを提供します。 ESGファクターを企業の長期的なパフォーマンスに組み込むメリットは数々の調査や産業界のエビデンスによって示されています。たとえば、ドイツ銀行は2012年に100件以上の学術研究を調べ、ESG評価の高い企業のほうが、負債比率の面で資本コストが低く収まっていると結論づけました。また、2015年に台湾国立台中科技大学の許教授と台湾国立中興大学の鄭教授が行った別の研究では、社会的責任を果たしている企業のほうが信用格付けが高く、信用リスクが低いと判明しました。3 環境問題や社会問題に対する一般の関心に応えるべく企業が取り組みを進める中で、ESGに配慮することもまたベストプラクティスであると考えられるようになりました。従業員はますます環境にポジティブな影響を与える企業のために働き、投資したいと思うようになっています。CFA研究所などのグローバルなイニシアティブや団体は、ESGを考慮しないことの財務面や評判におけるリスクを強調しています。 ESGを適用するメリットがようやく理解されるようになってきたGCCですが、実のところESGの理念そのものはGCCとまったく無縁というわけではありません。シャリア(イスラム法)準拠の投資は過去20年間にわたって行われています。どちらのフレームワークでも、ネガティブスクリーニング(好ましくない活動を行う企業の排除)アプローチを採用し、持続可能なリターンが得られる投資機会を探ります。ESGファクターとシャリアスクリーニングの組み合わせにより、イスラム投資家は、社会的目標と環境的目標を同時に達成しながら、投資パフォーマンスを向上させることができます。 UAEは現在、投資の多様化に注力しています。そのため、ESGの組み込みを成功させるための重要なステップとなる戦略とプロセスが密接に連携するような、責任ある投資の市場と文化を醸成することは非常に有益です。 持続可能な成長を求める場合、気候変動などの新たに高まりつつあるリスクを軽減するために、インサイト(洞察)とオーバーサイト(監視)のレイヤーを追加することが非常に大切です。そのためのESGアセスメントの導入は、明確なKPIを設定し、プロジェクトがどこでどのように価値を生み出すかを識別し、プロジェクトに伴うリスクを緩和するのに役立ちます。 たとえば、マーサーではクライアントに「Investment Framework for Sustainable Growth」(持続可能な成長のための投資フレームワーク)を適用しています。このフレームワークは、ESGファクターに関連する財務的影響(リスク)と、持続可能性の問題の影響を最も直接的に受ける業界における成長機会を識別するものです。影響の測定とリスクの緩和はますます重要になっており、強力な投資ガバナンスプロセスが求められます。 ESG導入のメリットは計り知れません。ESGの原則の導入に着手したとはいえ、GCCには、政府が投資家を含む利害関係者と十分なエンゲージメントを図り、地域全体で戦略を調整するために行うべき仕事がまだ多く残っています。 ESG組み込みのグローバルな基準を満たすことを求める圧力は今後強まる一方です。そこから逃げるのではなく、企業、投資家、政府が連携して、責任ある投資と持続可能な成長の面でGCCを前進させる働き方を定義すべきです。   出典: 1Carvalho, Stanley, "Abu Dhabi To Invest $15 Billion in Green Energy," Reuters, January 21, 2008, https://www.reuters.com/article/environment-emirates-energy-green-dc/abu-dhabi-to-invest-15-billion-in-green-energy-idUSL2131306920080121 2Energy and Environment Park:Setup Your Company In Enpark, UAE Freezone Setup, https://www.uaefreezonesetup.com/enpark-freezone 3Chen, Yu-Cheng and Hsu, Feng Jui, "Is a Firm's Financial Risk Associated With Corporate Social Responsibility?"Emerald City, 2015, https://www.emeraldinsight.com/doi/abs/10.1108/MD-02-2015-0047

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アジア太平洋地域(APAC)の経済は、特定の地理的、社会的、財政的状況により定義されるため、それぞれ独特な形で世界経済の変動の影響を受けます。しかし、急速なデジタル変革と硬直する地政学的緊張のため、APACにあるすべての経済成長国の運命は、あまねく広がるグローバリゼーションの影響と切り離せなくなりました。 APACの経済は、今後2年で5.6%の堅実な成長を遂げると予測されています。ただし、この地域に対するそうした楽観的な予測は、依然として深刻な脆弱性をはらんでいます。1 脆弱な領域は、経済、地政学、科学技術および環境面の4つに分類できます。各カテゴリーに目を通して、近い将来、成長が見込まれる国々にどのような課題が浮かび上がってくるのか見ていきましょう。 1. 経済面―債務と住宅   2016年、APACは北米を越えて、世界の債務の最大の要因地域となりました。実際、APACの債務は世界の債務の35%を占め、2008年の金融危機以降、着実に大幅な増加を示しています。この債務により、地域経済は金利上昇や潜在的なデフォルト危機の影響を受けやすくなっています。 危険にさらされている領域は、経済圏ごとに異なります。例えば、中国では非金融企業と一般家庭の債務が増加していますが、日本では国債市場をリスクにさらす公債が最大の関心事となっています。また、インドは、国立銀行の不良資産への支出で2,100億米ドルの打撃に直面しています。 2010年以降、APAC全域、特に香港、オーストラリア、ニュージーランド、そして、インドにおける住宅価格は収入より速いペースで高騰しており、ムンバイの家庭では、手頃な価格の住宅などほとんど存在しないと感じています。住宅価格が高騰する中、資産バブルがはじける危険が心配されています。ただし、リスクレベルを決定づける信用貸付のしくみと家計債務の額は各国で異なります。APACは、一般世帯が借金を返済できず、それが国際的な銀行業界を悩ませ続ける世界的な経済危機の一因となってしまった、2008年の米国の住宅市場危機から学んだ教訓を心に留めておかなくてはなりません。 オーストラリアは現在、世界最高水準の家計債務を抱えています。オーストラリアの銀行ポートフォリオの大半が抵当貸付に由来し、2008年の崩壊直前の米国の住宅市場をはるかに上回るレベルに達していることから、多くの米国および世界の投資家は、オーストラリア市場に対してヘッジを行う傾向にあります。 2. 地政学の面―保護主義と不平等   相互に繋がった世界経済では、あらゆる地域が国際貿易の動向や関税の影響を受けます。中国・アメリカ間で拡大する貿易戦争がAPAC全域のサプライチェーンを脅かしています。一部の国が他国以上に苦労しているため、保護主義の傾向が、この地域の密接に絡み合った経済網に浸透していくおそれがあります。 急速な地政学的進展は不安を生み出します。そうした不安により、企業や政策立案者はしばしば、経済がマイナスの結果を被らないよう、制限や防護を余儀なくされます。実際、中国とアメリカが優先事項を再定義する中、APACの国々は、絶えず変化し続けるこの状況に対し、どこでどのように適応するかを決める必要があります。オーストラリアからインドまで、APAC経済圏は、ビジネスパートナーを疎外したり成長の機会を犠牲にしたりすることなく、他の国々と協力および競争するという複雑な状況をうまく切り抜けなくてはなりません。 APACは混沌とした地政学的状況の中で安定を模索していますが、国際的な貿易や商取引の結果、多くの国で、国内における人口構成が劇的に変化しています。貿易に適した港、近代的な技術の中心地、高度な科学技術を必要とする雇用チャンスにアクセスできることから、大都市や巨大都市が増加しました。革新的な文化、アイデア、インフラを提供する都市部に若い世代が継続的に移住するため、周辺および農村地域は社会の主流から取り残されています。持つ者と持たざる者の間の格差拡大は、所得と富の不平等、広範囲にわたる不満、市民の不安を招くおそれがあります。 政策決定者は、APACにおける人的資本管理を形成する一般的な考え方や規制を管理しようとしています。シンガポールのジョセフィーヌ・テオ上級国務相は最近、シンガポール国民が周辺諸国に移動して仕事をする必要があることに触れ、特にシンガポールが中国とのビジネス関係を強化する中で、APACの他の経済成長国における機会に先入観を持たないよう国民に求めました。2 3. 科学技術面―奇跡と脅威   科学技術は世界経済の未来を形作ります。新たに出現する機器や科学技術は、政府による規制より速く進化しているため、監視の隙間を縫って、経済成長、イノベーション、そして犯罪にとって前例のない機会が生み出されることになります。科学技術は、APACが労働力の生産性を高め、社会改革を進め、環境面での持続可能性を支持する手助けとなってきました。ASEAN諸国に対するデジタル変革の影響はきわめて大きく、特にeコマース分野では、2017年第1四半期にASEAN諸国が世界の売上高の40%を占めました。東南アジアだけでも、インターネットやそれがもたらすあらゆる可能性にアクセスできる人々の数は、2025年までに2億人から6億人へと3倍に増えると予想されています。3 新しい科学技術のために失われる仕事もある一方で、同じ科学技術が多くの新しい仕事を生み出すことにもなります。実際、AIシステムを構築している多くの企業は、人間の従業員がAIの設計と実行に積極的な役割を果たすことを発見しました。4イノベーションが雇用創出につながることは、歴史が明らかにしています。例として、コンピュータの出現を取り上げてみましょう。タイピスト関連の役割での需要は減少したかもしれませんが、コンピュータベースの仕事に対する需要は、開発、運用、プログラミングに関連する新しい仕事を生み出しました。しかしながら、これらの進歩には現代的課題も伴います。 高度な技術を持った世界中のサイバー犯罪者は、政府、公的機関、あらゆる規模の企業の弱点を探り続けるでしょう。データや情報が天然資源と同等に貴重になるにつれ、国家間のサイバー攻撃が頻度と複雑性を増していきます。政府と多国籍企業との間の錯綜する同盟関係は、人々やそのプライバシーに対する権利に劇的な影響を与えます。人権や個人情報へのアクセスに関する政策が国により異なるため、人々が科学技術とさらなるつながりを持つようになれば、保護境界線を設定し、人間の可謬性を軽減するために、新世代のサイバー法が登場することでしょう。 4. 環境面―自然災害と人為的解決策   環境要因は、APACの将来の経済見通しと全体的な生活の質を決定します。地理的に見て、APACは世界で最も災害が発生しやすい地域です。洪水や熱帯低気圧といった環境災害は、ほとんどの人々、インフラ、施設が集中する沿岸部に甚大な被害をもたらします。自然災害は予測不可能であるため、突然、時には大規模に、人命の損失、人口移動、そして広範囲にわたる社会的・経済的混乱を引き起こします。 そうしたトラウマを受けた後、個人や地域社会は、政府やその他の機関が救済を提供できるようになるまで、悲しみを抱えながら、医療活動も不安定な中で自力で進まなければなりません。APACは、自然災害が人々と経済にもたらす荒廃を軽減するための、統合された政策およびシステムを積極的に施行すべきです。こうした動きはすでに見られます。香港のように比較的成熟した市場では、ハリケーンのような災害時にリソースを調整し、迅速に対応する能力が飛躍的に向上しています。科学技術と企業の利益がAPACをより緊密に結びつける中、各政府には、他の国々や地域に対する自国の責任が正確にはどのようなものであるのか判断する必要が生じます。 UNESCAPのデータ   地球規模で考えると、APACは有害な排出物や汚染物質の抑制に不可欠な役割を果たしています。時代遅れのインフラストラクチャと手ぬるい規制は、現代的な科学技術と政策に置き換えなければなりません。しかし、変化には時間と費用が伴います。多くのAPAC諸国はいまだ、石炭やその他の化石燃料など、従来のエネルギー資源に依存しています。ただ、地域および地方レベルでは大きく進歩しています。 例えば、中国は、石炭や石油に代わる大気中の汚染物質を減らすグリーン燃料技術の導入で、目覚しい進歩を遂げてきました。5化石燃料を風力や太陽光などのクリーンエネルギー資源に置き換えるという中国の新たなイニシアチブは、国内経済に悪影響を与えることなく、北京などの諸都市で大幅に空気の質を改善してきました。実際のところ、中国は持続可能な資源がエネルギーの未来であると考え、グリーンビジネスに積極的に投資しています。例えば、ハイテクなソーラーパネルの分野では、世界のソーラーパネルの3分の2が中国製となっており、電気自動車の分野では、2025年までに、テスラ社さえも凌ぐ年間700万ドルの売上を予測しています。6 APACは、地域として、再生可能エネルギー源を促進し、直接的で差し迫った脅威となる大気汚染や水不足の問題に取り組むための枠組みや新しい科学技術にも合意しています。経済発展と、気候変動および持続可能性イニシアチブの進展とのバランスをとるのは困難ですが、必要なことです。 この地域のその他の課題同様、気候変動に対応するには、APAC諸国、政府そして労働者の間に、新しい協力の時代が必要となることでしょう。2017年1月の米国の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)離脱を受け、APACは、地球規模の問題を解決するため、より地域的なアプローチを検討することを余儀なくされました。しかしながら、APAC首脳は初心を貫き、2018年にはオーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、ニュージーランド、マレーシア、メキシコ、ペルー、シンガポール、ベトナムが参加して、TPPの改訂版に署名しました。 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)と呼ばれるこの新しい協定は、世界のGDPの約14パーセント(当初のTPPの40パーセントから減少)に相当するもので、参加国間の新たな貿易ダイナミクスや監督規制だけでなく、相互に合意された環境保護法の遵守についても詳述しています。知的財産権、仲裁および投資紛争の解決に関する条項のいくつかは、新しい協定では省かれました。これは、特定の問題に関して進行中の多国間協力や、公共の利益のために必要とされる各国政府による地域介入を引き続き進める余地を与えるためです。新しい協定では、当該地域の労働者の移動を規制しておらず、加盟国は、自国農民およびサービス経済の利益の保護を実現しています。 ますます自国中心主義になった米国の影響により、APACは互いの結びつきを強め、ビジネスチャンス、人材のやり取り、世界規模のデジタル変革への共同参画へとさらなる道を切り開くことを余儀なくされる可能性があります。APAC諸国のほとんどが新協定を批准したことは、世界の他地域で保護主義の言説が増加する中で、自由貿易の輝かしい砦となっています。 APACの将来について楽観的になれる理由は数多くあります。デジタル変革は、前例のない成長の機会、そして労働者を科学技術の進歩、起業活動、およびイノベーションの世界規模の急増に結び付ける力をAPAC経済圏に提供しています。環境問題や経済的逆風に対処する差し迫った必要性が、APAC全体に緊迫感を生み出しています。問題解決への協調的なアプローチは、APACの未来にとって明るい予兆となっています。献身的なリーダーやAPACに本部・本社を置く組織が、地域全体の繁栄を目指して強みを結集しています。世界経済の変化が続く中で、APACはますます影響力のある役割を果たすようになるでしょう。 詳細については、Marsh&Mclennanのアジア太平洋地域における14のリスクシェードレポートをご覧ください。 1Evolving Risk Concerns in Asia-Pacific:, http://bit.ly/2APQVlZ. 2Lee, Pearl. "Ties with China Multifaceted and Strong: Josephine Teo." The Straits Times, 2 Mar. 2017, www.straitstimes.com/singapore/ties-with-china-multifaceted-and-strong-josephine-teo. 3"Asean the 'next Frontier' for e-Commerce Boom." Bangkok Post. https://www.bangkokpost.com/business/news/1249798/asean-the-next-frontier-for-e-commerce-boom. 4Mims, Christopher. "Without Humans, Artificial Intelligence Is Still Pretty Stupid." The Wall Street Journal, https://www.wsj.com/articles/without-humans-artificial-intelligence-is-still-pretty-stupid-1510488000?mod=article_inline. 5Song, Sha. "Here's How China Is Going Green." World Economic Forum, www.weforum.org/agenda/2018/04/china-is-going-green-here-s-how/. 6Jeff Kearns, Hannah Dormido and Alyssa McDonald. "China's War on Pollution Will Change the World." Bloomberg, www.bloomberg.com/graphics/2018-china-pollution/.

Peta Latimer | 21 3 2019
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中国の国内市場の大きさと規模は、国家の最も大きな経済的な功績となった。中流階級の爆発的な台頭から全人口及び全産業界を通じたデジタル変革の圧倒的な影響まで、中国、そしてグローバル経済は、投資の機会の新時代に突入している。中国に投資することで生み出されるであろう収益はあるが、厳しく規制されているこの国の国内アセットを国外の投資家に開放するには、まだまだ双方ともに学ばなければならないことが多い。 展望:中国vs成長経済 マーサーのレポート 中国A株のMSCI指数への組み入れ:アセットマネージャーと投資家にとって意味すること では、中国の国内市場がグローバル経済へと開放されることが、なぜ国際的な投資業界及び市場全体に熱狂をもたらしたのかが説明されている。この熱狂に対して、中国とMSCIは慎重に計画された戦略によって注意深くコントロールしており、将来の成長のためのフレームワークを構築しながら計画を実行している。初期段階では株式の時価総額のほんの5%に過ぎない226の銘柄しか採用されておらず、これは、この新時代が認められるにはじっくりと長期的な考え方が必要なことを表していた。この慎重なアプローチはこの地域の競合する成長経済にとっては歓迎すべきニュースかもしれない。 中国のA株(国内アセット)の国際市場への段階を踏んだ公開にもかかわらず、MSCI指数への組み入れは、グローバルな経済的見通し、特に新興経済への影響という面において、大きなインパクトを与えるだろう。例えば、中国A株の5%組み入れと、そして100%組み入れとにおいてMSCI指数がどのように変わるかを見てみよう。インドや台湾、韓国のような成長経済は、中国の国内市場がグローバル指標に組み入れられることによりネガティブな影響を受けるかもしれない。もしも、投資家たちが成長市場から中国A株という新たな機会へと焦点を移す場合は特にそうだ。 (出展:MSCI) 変化というものはいつも、ブレイクスルーや障害物、そして未知への不安といったものをはらんでいるものだ。将来のことを100%正確に予測することは誰にもできないが、中国がグローバル経済において新しいステータスとなることによる機会や課題を、そしてそれが株式投資家にとってどのような意味を持つのかを、一緒に分析してみよう。 MSCIへの組み入れによる機会 1.     市場の大きさ:中国の国内市場は3,000以上の銘柄の株からなる大きなもので、世界で最も流動的だ。2017年初から上海及び深センの証券取引所は、一日当たりの総取引数においてニューヨークとNASDAQ証券取引所を併せたよりも多くの件数を記録している。 2.     多様性:中国の国内市場には、幅広い産業における様々な企業が存在し、それは(ITと金融に集中している)香港証券取引所で中国株が上場されているよりも、セクターレベルではるかに多様化している。 3.     独自性:歴史的に見て、中国A株市場は他の株式市場との相関関係が低く、それこそが、価値を生み出す新しく未開拓な機会の時代を特徴づけている。 4.     限られた外国人持株比率:中国国内の個人投資家がその浮動株の時価総額(一般の人々に入手可能な発行済みの株式の数)の75%以上を占めている状態で、この市場に通じた機関投資家が不足している。前例のないこの状況そのものが効率の悪さを生み出すかもしれないが、同時に、新たな機会を模索しようとしている投資家にとって良い結果をもたらす環境を作り出すかもしれない。 MSCIへの組み入れによる課題 1.     ボラティリティ:この市場は大きくて流動的であるとはいえ、変動的であり短期間の間にその流動性が劇的に下降する期間も過去にあった。しかし、中国は不安定さを緩和する対抗策を講じてきており、それには、市場が混乱する時期にA株を購入することで市場を安定させる「ナショナル・チーム」ともいうべきものを構築したことなどを含む。 2.     集中:中国A株すべてが指数に組み入れられた時に懸念されるのが、指標銘柄の構成だ。グローバルエマージングマーケットインデックスは現在のところ比較的多様化されているが、中国A株市場全体が組み入れられることで次第に中国に席巻されるようになるだろう。しかし、この課題に取り組むために、多くのイノベーティブな運用会社がこの地域で経験のあるアナリストやポートフォリオマネージャーを採用している。 グローバルでの不確定要素:米中貿易の緊張や他の地政学的な懸念事項により、投資家の中には中国国内市場での機会について及び腰になっている人もいる。市場というものは混とんよりも安定を求めるものであるから、先の見えない将来や浮かび上がってくる投資の現実とメカニズムなどにより、戦線離脱を選択する運用会社も出てくるだろう。しかしながらこれは、新たな機会を模索するためのポートフォリオとリスク耐性1.     を備えた投資家にとっては、より大きなポテンシャルのある機会となることを意味する。 中国A株市場のMSCI指数への組み入れがグローバル市場に与える影響と、自分の組織にとっての新たな投資の機会を生み出すことについてもっと知りたい場合は、Mercer Wealth and Investments (または Mercer Wealth and Investments – China)をご覧ください。

Gareth Anderson | 21 3 2019
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今日の世界においてテクノロジーの影響は多くの混乱と苛立ちを招き、人々は情報の真偽や利害性を判断することに悩まされています。デジタルトランスフォーメーションは、人々の自分自身や自分のお金、自分の将来に対する見方に影響を与えきましたが、投資業界はそれに対する免疫をもっていないのです。最高情報責任者(CIO)はこうした変化を認識し、技術革新が投資業界、そして社会全体に影響を与える中、それをどう利用するかを判断する必要があるのです。 誇大広告と現実:真実はその中間にある   AIやデジタルトランスフォーメーションに関する誇大広告の多くは、投資業界を含むあらゆる業界の中で、機械が労働者を代替するとしています。AIは金融データ、取引情報、インターネット上で表現された利害関係者の感情等を瞬時かつ包括的に分析することで、企業価格評価の選定プロセスに革命を起こしてきました。また非構造化データ、購買行動モデル、市場の変動性に対しても、新しいインサイトを提示してきました。しかし一方では、人的要因も未だに必要とされています。最高情報責任者であれば言うまでもありませんが、我々は未来を100パーセント確実に予測することはできません。しかしデータ分析や調査を注意深く行えば、未知のものもある程度のコントロールすることができるのです。安全性や資産価値は、部分的には人間の知覚によって決定されています。従って戦略を立てる際には、投資チームは全ての情報とデータを分析した上で、どう前進するかを人間的に決定する必要があるでしょう。 フィンテックの進歩は、最高情報責任者や投資チームに恩恵をもたらしてきました。例えばフィンテックの高度なデータ分析やリスク分析能力によって、彼らはより緻密で改良されたリスクダッシュボードを利用し、実用的な情報を素早く得られるようになりました。フィンテックの洞察的な診断は、彼らが戦略をどう実行すべきかを理解する手助けをしています。また運とスキルの間に明確な線を引く手助けをしているのです。しかしながら、それもまた、とても定性的ゲームと言えましょう。 フィンテックは、消費者の役割にも大きく影響しています。アプリやテクノロジー・プラットフォームによって消費者が財務目標や戦略をコントロールできるようになったからです。消費者は誰もが利益を受けられる投資目標に、これまで以上に注目していますので、これは前向きな傾向と言えるでしょう。今のところ、先進技術が投資業界を支配するという憶測は、現実には起こっていません。感情的に議論されているその他の様々な事柄にも言えることですが、真実とは大抵どこか中間辺りにあるものです。 ロボアドバイザーは関係性を合理的にする   ロボシステムと業務自動化により、企業は顧客情報にアクセスしやすくなり、肥大化したプロセスを合理化できるようになりました。多くのファイナンシャルアドバイザーは人間が介在する度合いに幅を持たせ、ロボアドバイスをサービスの中に取り入れています。全く人間を介さない場合から密なやり取りする場合まで、さまざまなレベルでやり取りができることで、顧客は実際にファイナンシャルアドバイザーの協力が必要か不要かを、希望通りに選択できるようになりました。ロボアドバイザーやその他の技術的進歩は、投資業界に混乱を招くこともありますが、ファイナンシャルアドバイザーがより生産的に有益に働けるような手助けをすることもあります。例えば、ファイナンシャルアドバイザーは顧客へのアドバイスを考案するテクノロジーを使うのではなく、アドバイスの提案方法に特化したテクノロジーを利用することもできるでしょう。しかしながら結局のところは、顧客の多くが、家庭の未来を左右する財務に関わる決断は、人間のアドバイザーと相談してから決めたいと思っているのです。 ブロックチェーンと信用の再構築   マーサーの「Healthy, Wealthy, and Work-wise report」―12ヵ国で検証した内容―は人々が誰を一番信用するのかを分析したレポートです。このレポートによると信用する相手の上位になったのは、家族、友達、従業員でした。一方で、低い順位に付けられたのは、金融仲介機関、銀行、保険会社でした。この結果は投資会社、そして投資業界全体に関わる問題です。世界金融危機と大恐慌後、人々は金融界を信用しなくなりました。投資業界からひどい目に合わされた(あるいはそういう人を知っている)多くの人々は、利息の少ない銀行口座に預金を預ける傾向があり、質の高い投資アドバイスを受けることから遠ざかっているのです。 ブロックチェーン技術は、金融界やその信頼性の評価の低さに大きな変革をもたらします。ブロックチェーンは投資家と顧客に不変的で安全な金融取引のデジタル記録を提供しているのです。投資家たちは、混乱した財政構造の時代―例えばサブプライムローンのトランシェなど世界情勢を悪化させた問題―を経たのち、透明性が高いものに魅力を感じるようになりました。顧客や世間の信頼構築に苦労している投資業界にとっては、ブロックチェーンはアカウンタビリティの新たな時代を作り出すものであり、収益性の高い関係性を構築するための手段になっているのです。 その他の業界でも同じことが言えますが、顧客と消費者はネット上でナラティブをコントロールしています。ビジネスはいかなる決断や、やり取りにも公的説明責任があるのです。こうして透明性のレベルが高まり続けていることは、投資のプロフェッショナルや投資会社がより良いサービスや結果を提供するための動機づけ要因になっています。高いレベルの透明性を保つことは、世間からが失った信頼を金融業界が再構築する方法なのかもしれません。 個人がコントロールすること   マーサーは―他の資産運用機関や投資アドバイザーと同様に―個人がファイナンシャルアドバイスや投資金融商品の良し悪しを判断する手助けをする責任は、政府や、プラン・スポンサー、金融仲介機関、業界全体にあるとしています。投資業界に奉仕し、信頼回復を促進するために、マーサーはシンガポールや香港を含む複数の市場で、以下の二つの目標達成を目指してMercer FundWatch.comをローンチしました。 (1) 個人投資家が利用できるファンドの評価システムを提供し、投資家とファイナンシャルアドバイザーが評価に基づいてファンドを比べられるようにする。これらの評価は綿密な定性分析に基づくものとする。 (2)  このサイトを利用する金融仲介者に―顧客へ推奨するプロセスへのインプットとして―Mercer Fu ndWatch.com.に着目する機会を与える。個人投資家またはファイナンシャルアドバイザーが、共に取引ができるハイクオリティーな機関を探している場合は、信頼できるデューデリジェンスをもとに、彼らが簡単に仲介人を見つけられるよう、また仲介人リストにアクセスできるようにする。 デジタルトランスフォーメーションは、世界中で急激に加速しており、その可能性は無限です。投資会社は新たな領域を探求し、激しい競争の中で勝ち残るためには、AIとスマートテクノロジーの台頭を受け入れるべきなのです。テクノロジーの進化は投資業界のみならず、顧客の期待、人とお金の関わり方、顧客自身や投資のあり方を絶えず変え続けているのです。

Beverley Sharp | 07 3 2019
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世界経済のグローバル化は大きな一歩を踏み出している。MSCIは世界第二位の株式市場にその門戸を開きはじめている。中国だ。この取り組みにより、中国とグローバルな投資コミュニティがこの新しく注目すべき関係を育むことで、かつてない機会と課題が生み出されるだろう。中国の国内証券取引所(上海と深セン)は、グローバルな機関投資家やヘッジファンドに、価値や収益をもたらし、以前はなかった機会を提供する。 中国がグローバル市場でその重要性を増すことにより、外部投資家にかかる長年続いてきた規制や慎重な姿勢における、前向きな変化の必要性が浮き彫りになってきた。マーサーのレポート「The Inclusion of China A-Shares In MSCI Indices: Implications for Asset Managers and Investors (MSCI指数への中国A株採用:アセットマネージャーと投資家に意味すること)」では、中国およびグローバルな投資コミュニティがともにこの歴史的な合意に至るまでにたどった道のりと、新たな成長と協調の時代から何が期待できるかを時系列に記録している。MSCIのブレイクスルーより前は、外国人投資家が中国の国内市場に参加できる初期的な仕組みは、適格外国機関投資家(QFII)および、人民元適格外国機関投資家(RQFII)のみだった。どちらも規則や規定が厳しく定められており、割り当てに申請できる組織の種類や大きさ、そして資本をどれだけ本国に送還できるかが制限されていた。 しかしながら、中国当局は、中国本土の株式市場を開放することを重要な優先事項にした。だが、この革新的な戦略を実行するには、変化を実行に移すための、統制が取れて計算しつくされたアプローチが必要となった。中国は、外国人投資家を受け入れる仕組みを作り出すことから始めた。2016年12月には、深セン・香港ストックコネクトプログラムが導入され、外国人投資家が深セン証券取引所に上場している企業へとアクセスできるようになった。この先見の明のある構想により、中国そしてグローバルな投資コミュニティ双方が協調し、国際的な影響及び参画への道が開けることとなった。 忍耐と妥協の力 MSCI指数への組み入れは、双方が共通の利益と妥協を通じて信頼と信用を築くことから始まった。上海及び深センと香港とのストックコネクトプログラム、併せて「ストックコネクト」と称されるそれは、外国人投資家にさらなる割り当てを提供し、手間のかかる制約を緩和した。MSCIに受け入れられたのは、値幅制限の緩和、取引停止に関する継続的な前進、そして、新たに指数リンクの投資手段を作り出すことに加えて、さらなる規制緩和を行ったことによる。中国は、MSCIそしてグローバルな投資コミュニティと協力して取り組むという意欲を示して見せた。 引き換えにMSCIは中国A株市場の組み入れを促進するためにいくつかの譲歩をした。手続きに遅延がないよう、MSCIは組み入れのためのより積極的で合理化されたアプローチを提供した。MSCIの無駄がなく効果的な戦略により、銘柄と国別格付けを制限し、グローバルな投資家にのみ、特定の市場であらかじめ定められた部分だけ公開することを許可した。これらの展開は、長い道のりのほんの初めの部分に過ぎない。この協定は、成長を約束された将来と相互の繁栄との力強いシンボルともなっている。中国A株の海外市場指数での比重はやがて増えざるを得ないだろう。おそらく今後5~10年で、1990年代初頭に台湾や韓国の市場がそうだったように、中国A株は部分的な組み入れから全体の組み入れへと発展するかもしれない。 投資家にとってのこれからの道   MSCIは、これほどまでに大規模で複雑な経済市場へと参入する際に特有のボラティリティを認識している。構想を前へ進めるためには、期待値をコントロールすることが必要不可欠だ。第一段階では時価総額の2.5パーセントとなる226銘柄のみ採用し、次の段階では銘柄数を10増やして、2.5パーセント増で時価総額の計5パーセントとした。MSCIは明らかに、成長と組み入れの促進に対して抑制的なアプローチをとっている。中国A株市場は数多くの魅力的な特性を持っているとはいえ、比較的小規模、もしくはシンプルな株式のポートフォリオを持つ投資家にとっては、中国の出現に対しては様子見のアプローチをとるのが極めて合理的だろう。他の投資家は、より積極的な選択をするかもしれない。 新興市場の株式にかなりの割合で自身の財産を投資してきた投資家で、かつ、ポートフォリオの長期的発展を求めている人であれば、拡大しつつある中国での機会をどうやったら自身の株式のより大きな配分へと組み込めるかを検討すべきだ。(ベンチマークに影響された配分よりも)独自の配分をすれば、より高い配分ができ、それにはリターンと分散の両方において市場拡大のポテンシャルを持つ、より大きく深いリスクが伴う。しかしながら投資家は、特にこの発展段階のシナリオの前例のない特性を考えると、重要なリスクとガバナンスという問題に同時に取り組まなくてはならない。 MSCI指数への中国A株採用のグローバル市場に与える影響や、新たな投資機会創出の可能性に関する詳細は、Mercer Wealth and Investments (または Mercer Wealth and Investments – China)をご覧ください。   1Pisani, Bob. “Here's Why You Will Own More China Stocks in the near Future.” CNBC, CNBC, 31 Aug. 2018, www.cnbc.com/2018/08/31/msci-adds-more-mainland-china-stocks-a-shares-to-its-indexes.html.

Gareth Anderson | 21 2 2019
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成功を祝うのが人間というものだ。人は表彰式やお祝いのハグ、紙吹雪やハイタッチが大好きだ。誰でも勝者が好きだ。しかしながら、資産運用業界においては、いままでかなり成功してきた運用会社が「勝ちつづける」という幻想をもつことは危険だ。場合によっては、長きにわたるすばらしい業績に酔ってしまい、無関心になる文化が醸成され、謙虚さに欠けたり、はたまた革新をあまり望まないようになってしまうこともありうる。最終的に、こういった思考が集まることで将来の苦しみをもたらすかもしれない。 対照的に、実績のない運用会社は、常に価値を生み出す新しい方法を探り、イノベーションを利用して勝ち組になろうとする。機関投資家の代わりに運用責任を担うCIO達は、こうした実績のない運用会社こそが途方もない機会をもたらす可能性があることを認識すべきだ。現在のところ成功している運用会社が、そう、勝つことに対して満足してしまっている場合には特にそうだ。以下に、CIOが機関投資家のための新規投資先を探す際、なぜ実績のない運用会社を見落とすべきでないのかについて5つの理由を示す。 1. 成功が続くという間違った確信   資産運用業界では、過去の成功を将来の成功の指標と見なす傾向がある。その根拠としては、過去に高い利益を生み出した運用会社には、将来も高い利益を生み出すのに必要な人材や考え方そしてリソースがある、というわけだ。しかし、こうした先入観は、誤った結果を招く恐れがある。運用の世界では、成功し続けることはまったく保証されていないし、むしろ将来のマイナスと見なされることさえある。人間は本質的に間違いを犯すものだし、運用会社はよくある成功の罠に引っ掛かりやすい、その人間によって運営されている。つまり、無関心や権利、過信によって過去がずっと続くという慢心に陥ってしまうわけだ。世界には成功がもたらす失敗についての寓話がたくさんあり、そういった失敗の中心にあるのはいつも人間の性だ。 中国の「プレーヤーよりもかえって見物客のほうがゲームの状況を正確に判断できる」という意味のことわざが、視野の狭さの危険性と、なぜ外部に意見を求めるのが賢明なのかをよく表している。証明されたリソースのみに頼ることにより、徐々に、同じような戦略や考え方、見識が増幅されてしまう(エコーチェンバー効果)。資産運用業界における、過去の成功を将来の成功の指標と見なす傾向は分からなくもないが、しかし当てにならない先入観だ。常に変化している業界においてそれまで効果的であった戦略を反復することは、衰退への方程式だ。それに引き換え、自社の弱点を鋭く認識している実績のない運用会社はいつも、新たなチャンスの兆しのことを考えている。経験豊富なCIO達は、継続すると思われた成功が持っている危うさを目の当たりにしているため、創造性への注視や未来を作り出すことに価値を見出す傾向にある。資産運用業界がこの10年もしくは20年でどれだけ変化したか、ちょっと振り返ってみてほしい。変化に終わりはない。 2. 自己満足の罠 CIO達は、現在成功している資産運用会社と協業することで想定されるメリットを評価する時、ステークホルダーの代わりにデューデリジェンスを行わなければならない。自己満足は、とても強力でそしてよくある心理的な落とし穴だ。結局のところ、もしクライアントが満足していて価値が生み出されてさえいれば、なぜそれを変えなければならないのか?だが、自己満足というものは一見、気づきにくい。それは、長い時間をかけてほとんど気づかれないうちに忍び込んできて、そして企業文化や日々の業務の一部になってしまう。成功の副産物としての慢心は、会社が自画自賛し始めるとすぐに、成功そのものになりすまし会社に根付いてしまうかもしれない。そして、ロビーの明るい光の下、展示ボックスに業界の最新のアワードなんかを飾ったりするのだ(見たことがあるでしょう!)。       自己満足に対する解毒剤は、用心と謙虚さ、そして行動だ。運用会社は、画期的あるいは逆張りのアイディアを捜し求め、進化するテクノロジーや新たな規制を活用することを学ばなければならない。成功している運用会社は、現在の自社の財産の輝きで目がくらんでいるから、変化の必然性や圧倒的なパワーが見えないかもしれない。昨日うまくいったことは間違いなく今日もうまくいくし、きっと明日もそうだ、と彼らは考える。運用会社はみな(現在の環境に関係なく)、次に来ることに注視する必要がある。戦略やメカニズムにおいて競争上の優位性を生み出すような試行錯誤をする運用会社は、変化を追いかけるどころか、すでに先行している。自分自身と市場に対して確固たる何かを持っている運用会社は、変化をチャンスとして利用する。 3. クライアントという難題 現状に満足しているクライアントは、分かりやすい理由で、変化に抵抗する。現在のところ良好な利益を生み出している戦略を変えるなんて、正気か?そのため、新しい戦略や大胆なビジョンの実行に関する責任は運用会社のものとなる。将来のチャンスについて今日クライアントを教育することは、明日勝つための鍵となる。これまで儲かってきたやり方を変えたいと思うのであれば、投資委員会はその信念について確信を持つ必要がある。現職者の過去の業績がすばらしければ、決まったコースを変えて危険を冒すことはさらに難しくなるだろう。体質的に変化に抵抗があり、しがらみにとらわれるという欠点を持つクライアントという難題は、運用会社に制約を与える。実績のない運用会社、特にまだあまり名を確立しておらず自社の名声をこれから得ようという会社は、一般的に長期のクライアントを持っていないため、こうした障害に遭わない。長期にわたる成功のしがらみと闘わなくていいので、彼らは、価値を生み出すために新たな、もしくは伝統に捉われないアプローチを自由に探索できる。動きの遅い運用会社にとっては、満足しているクライアントが、長い目で見た時に自社の利益に反する逆風となることさえあるのだ。 4. タイミングがすべて 資産運用業界は、ある時点で優勢だったり劣勢だったりという会社であふれている。CIO達は、自分達を採用したアセットオーナーに対してより効果的に貢献するためには、タイミングに関して可能な限り情報通で優れた見識を持つよう努力するべきだ。最も革新的なアイディアがどこにあるのか、そしてそういったアイディアにどのように資本を投下するかを誰よりも早く明らかにするために、彼らには、いわば未来を占う能力が必要だ。業績の良い運用会社はもしかしたら、そうとは見えないが衰退の途をたどっているかもしれない。なぜなら、彼らは自分達のポテンシャルを認識し、その成功を維持しようと努力をするものの、そのエネルギーを外部ではなく内部に向けているからだ。変化とチャンスが生まれるのは外部だというのに。 クライアントに対して最善の投資戦略を立てる時、CIO達は定性的で将来を見越した評価を行うべきだ。実績のない運用会社の中に、新たな視点をもたらす戦略を提供する競争上の優位性が見つかるかもしれない。もしもあるCIOが、陰りのみえる優良投資先を、勢いのある実績のない投資先に入れ替える判断が遅すぎると、その先にある好機に資本を投下するのに間に合わないかもしれない。この競争の激しい業界において、「最も新しく最良のもの」に関するニュースはあっという間に広がる。タイミングが鍵なのだ。あまり知られていない会社によって提示される、試合の流れを変えるような機会を、強い信念を持たないCIOは見落としてしまうかもしれない。有名な投資家であるジェームズ・ゴールドスミスの言葉を借りると、「流行が見えてからでは遅すぎる。」 5. 進化するテクノロジーとAI 資産運用業界はテクノロジー実験の新たな時代にさしかかっている。勝ち組と負け組が出てくるし、AIのような現代のテクノロジーが破壊をもたらすことも普通となるだろう。フィンテックは業界に大改革をもたらし、特に今は実績がなくても、効率的で現代テクノロジーに精通している運用会社をいつでも新たな分野や関連事業に飛び込ませる構えだ。CIO達はますます、ブロックチェーンのようなテクノロジーが将来の業界にどのように影響するかに対する理解を試されるだろう。AIおよびオートメーションは、着実に実際の人間がやる仕事を行っており、それはつまり、労働集約的なプロダクトやサービスそして古びたオペレーションによって業績をあげてきた運用会社は特に変化に弱いということを意味している。 この切迫した雰囲気によって、新たな、そして実力が未知数の運用会社は、代わりの情報源を捜し求め、価値を生み出す新しい方法でテクノロジーを適用しようとする。実績のない運用会社は新しいテクノロジーを使って名声をつかむことができるかもしれない。なぜならデジタル時代では誰でも情報とリソースへアクセスできるようになったからだ。資産運用の歴史は私達に、この業界の未来は予測できないところからやってくるということを教えてくれる。資産運用残高や特定の戦略で運用した時間の長さといった、過去の成功に対する評価は、時折、将来の成功の予測を見誤らせることがある。アクティブ運用で他社をしのぐ業績を上げるためには、CIO達は、新しく革新的な戦略と思考をもたらす、実績のない運用会社をあらためて検討する必要がある。資産運用業界におけるデジタル変革は既に進行中で、急速に進化している。 最後になったが、よく知っていて居心地のいいものを求めるのが人間というものだ。業績の優れた会社のブランド名や評判は、心強く目に見えない安心感をもたらすかもしれない。これと競争するためには、実績のない運用会社は、老舗の競合他社から自社を差別化できるような先見の明のある戦略を提示しなければならない。こういった生存競争が、革新と変化を推進する。そして、こういった生存本能こそは、現在成功している企業がその財産があるがゆえに失ってしまうものなのかもしれない。

Deb Clarke | 07 2 2019
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資産運用業界が、政府の規制や顧客の目的、業界のイノベーションと並行して進化する中、機関投資家たちは多様化し増え続けている資産運用形態の選択に迫られています。このような資産運用形態のオプションを誰にでもわかりやすく、食べ物―とりわけ家庭料理と出来合いの食事に喩えてお話しします。 家庭料理としての資産運用アーキテクチャー     もっとも好まれる家庭料理は、良質でもっとも好まれる材料から作られています。食べ物にこだわりのある人は、家の近くの農場でとれた有機卵やノルウェーの海岸から運ばれてきた新鮮なサーモンなど、数多くの食品を地元のファーマーズマーケットや栽培農家、ヨーロッパのチーズショップ、国際市場といった、膨大な数の売り手から選択することができます。資産運用業界では、このように一般に公開された幅広いサービス・プロバイダーや、多様な投資形態のことを、オープン・アーキテクチャーと呼んでいます。 例えば、ホリデーシーズンの料理に適した食材を買う場合、皆さんのおばあちゃんなら、卵は川沿いの店、玉ねぎは近所の菜園、鶏肉は笑顔がはじける肉屋さん――といった具合に、どこから何を買えば良いものが手に入るかを知っていることでしょう。これと同じ様に、オープンアーキテクチャーでは、ファンドマネージャーから、カストディアン、信託会社、アドミニストレーター、ファンド運用管理者に至るまで、最も適切と思われる投資ツールや専門家を機関投資家が選定することが可能になります。また、このアーキテクチャーの中では、品質、専門家、イノベーションを、ひとつのサービス・プロバイダーが独占することはありません。運用業界全体が開放されているため、機関投資家は利用可能なオプションのすべてを活用し、ニーズに合ったソリューションを探すことができるのです。 出来合いの食事としての資産運用アーキテクチャー     出来合いの食事というのは、どの文化にも存在するものです。例えば日本には弁当があります。インドには、ダッバーワーラーがありますし、ブラジルにはバナナがあります(とても健康的です!)。出来合いの食事は、限られた時間と投資と労力でも手に入るので人気があります。投資運用業界では、この出来合いの食事は、バンドルド(ひとまとめにすされた)アーキテクチャーとして知れています。このアーキテクチャーでは、機関投資家は、まとまった複数のサービスを購入する形式をとります。機関投資家は、自分の投資戦略と成長ニーズに合ったサービスが含まれる、ひとまとまりを選定するのです。単純に、弁当か、ダッパーワーラーか、バナナを買ってしまえば良いので、肉屋さんを値切ったり、お皿を洗う必要もないわけです。おばあちゃんの買い物の往復も必要ありません。 バンドルド・アーキテクチャーには、出来合いの食事のような便利さがあります。それ以外にあれこれ考える必要はなく、カスタマイゼーションの必要もありません。一方、オープン・アーキテクチャーは出来合いの食事を提供する代わりに、資産運用者自身に買い物をさせ、多様なサービス・プロバイダーによって新たに開発、提示された資産運用業界の最新のイノベーションの閲覧を可能にします。結局のところ、機関投資家は、自分の環境、リソース、プロフィール、目的を考慮した上で、どのサービスが自分の目的・・・空腹を満たすかを判断しなければならないのですが、もしかするとこれらをオプションと掛け合わせることがベストなのかもしれません! 資産運用アーキテクチャーについてもっと知りたくなりましたか?。そしてそれをどう掛け合わせれば投資戦略が最も多くの価値と収益を生むようになるかを学んでみたくなりましたたでしょうか。ご興味のある方は、こちらより資産運用(と食にこだわる)マーサーにご連絡下さい。  

Janet Li | 03 1 2019
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意見の相違があるのが人間というものだ。完璧な水餃子の作り方からどの統治制度が一番良いのかといったことまで、人々は常に世界(や餃子)に対し、異なる見方をしてきた。我々のこの異なる意見を持つ性質を考えれば、中国のグレーターベイエリア(GBA)構想は、驚くべき人類のコラボレーションといえる。このGBA構想は、広東省・香港・マカオに広がる11の都市を結びつけ、その経済的、文化的、地理的、そして政策的な利益を共有させるという大掛かりな計画だ。実際のところ、手強い、だが非常に面白い挑戦だ。 背景:大いなる理想から昨今の現実へ 2017年に李克強首相により発表された政府報告書により、中国は、それまでは理論上のものだったGBAの発展計画を本格的に進めることを正式に宣言した。この構想が初めて紹介されたのは、2011年の「珠江河口ベイエリア・アクションプラン」という調査だ。北京からのこの指針は、計画を一気に国際的なスポットライトの下へ推し進め、参加する11の都市群の際立った財政的、文化的そして経済的な資産を利用する「都市クラスター」戦略を明らかにした。しかしながら、地理的にその地域は近いかもしれないが、参加する社会はそれぞれ明らかに異なっている。 例えば、法規制や政策、ビジネス実務や租税構造、そして文化的観点や優先順位の違いが、資源や人材を途切れることなく効率的に連携させることを難しくしている。GBAの成功の鍵となるのは、人材や情報から資本や資源といった、あらゆるものの流れを自由にすることだ。すでに大きな進展を見せてきている。中国は、香港・珠海・マカオを結ぶ55キロメートルの橋を作り、高速鉄道網を香港にまで伸ばした。このインフラは、自由な往来やアイディア、資本、資源の交換を促進するための抜本的な取り組みの、ほんの一部に過ぎない。 (Source: Research Gate_W Martin de Jong)   文化的そして経済的な違いを調整する GBA内の11の都市に、共同グループの利益を優先しながら地域のビジネスの目標を追い求めるよう説得するためには、ある種の情報に精通したそつのない統治が必要だろう。法律や経済、技術、労働力、そして地理的に複雑な主導権を連携させるためには色々な障害があるだろう。GBA地域の企業は革新的な考え方に対してオープンでなければならない。リーダーや政策立案者は、ジョイントベンチャーや戦略的パートナシップから合併・買収まで、様々な戦略やビジネスモデルを探求する必要がある。各地域がこれらの課題を長期的な成功を目指して受け入れなければならない。 GBAが求める協力と透明性の範囲は多岐にわたる。包括的な枠組みにおいては、労働力の移住の適法性や環境政策から、計画発展の基準や運営の規格に至るまでの、あらゆることで起こる争いを解決する好ましい方法を確保している。しかし、今日、この複雑なリレーションシップはほとんど理論上のものだ。なぜなら、GBA地域全体の多くの企業が文化や規制、運営上の違いの中をそれぞれに進み続けているからだ。クロスボーダー人材に直接影響を与えるような主要なプロセスを統合するには時間がかかるだろう。例えば、香港で働く中国本土のスタッフは時々、ビザの延長を待つために数日、時には数週間も深センや広州から動けなくなることがある。こういった例は、GBA構想の成功における人的資本の役割を示している。結局のところ、地理的境界や文化を超えて人的資本をどうやってやりくりするかの答えを見つけ出すことが重要になるだろう。 こういった現実に取り組むために、多くの多国籍企業が、香港大学で学んだ中国本土の卒業生を採用することが増えてきている。こういった卒業生たちは両方の市場の文化に詳しく、GBA関連の仕事に就きやすい。さらに、多くの企業が、全く異なって定着した政策により引き起こされる混乱を何とかしようと積極的に動いている。給与や課税制度、医療給付や、従業員やその家族が得られる教育の質などの違いだ。給与や機会の公正な分配は、GBA域内での人材の自由な移動を保証するために不可欠なものだ。 歩み寄りの力を利用する おそらく、GBA発展に寄与した最も印象的な政策の達成は、香港と深センの間の落馬洲河套地区の地域的な分裂を解決したことだ。この、地理的にも象徴的にも帯状の地域は、西洋に影響される香港の人々と理想を、北京中心の利益と文化を持つ深センから引き離していた。この合意の最も心を打つ面は、両者が自身の利益をより求めるために歩み寄りを見せるという意欲を積極的に見せたことだ。 中国本土は、結局、香港に対して世界で最も富をもたらす市場の一つへのアクセスを提供している。深センにとって、香港はグローバル経済への入り口だ。この合意は、文化の違いや一見したところ異なるビジネスの優先順位の中を生き抜くために協力する方法を見つけることによって、構想全体のコンセプトを証明している。中国本土、香港そしてマカオが協力してこそ、技術革新、財政的な影響そして国際貿易の画期的な地理上の中心を作り出すことができるだろう。この大きな賭けに世界中が注目している。 GBAは、サンフランシスコ・ベイエリアを抜かし、世界のベイエリアのGDPで東京に続く第2位となった。事実、現在13兆USドルのGDPと7千万人の人口を持つGBAは中国全体の経済の12パーセントを担っている。場所によって政策的、財政的そして法システム的に広く異なっている中で、この共同地域の持続的で公平な成長の鍵となるのは、人材のインフラだろう。異種同士を効果的に交流させるには、人材管理のエキスパートによる最先端の見識と、思慮深いビジネスリーダーや政策立案者が必要だ。地域内の専門知識を持つ人にとっては、この構想は、中国南部において協調関係を築き前例のないコラボレーションに取り組む革新的な機会を提供してくれる。 重要なのは歩み寄ることだが、水餃子に関してだけは別だ。本当の水餃子には18個のひだがあるものだ。お母さんに聞いてみなさい。 中国の人材管理に関してもっと知りたい場合は、Mercer China をご覧ください。   1News Analysis: New Opportunities For Hong Kong in Emerging ... www.xinhuanet.com/english/2017-03/11/c_136121179.html 2China's Greater Bay Area Puts Hong Kong in the Lead As Super Connector To the World https://www.dorsey.com/newsresources/publications/client-alerts/2018/02/chinas-greater-bay-area-puts-hong-kong-in-the-lead 3Hong Kong’s Startup Scene: the Future Of Mainland–hong ... www.china-briefing.com/news/2017/08/08/hong-kongs-startup-scene... 4 China Is Building 19 'supercity Clusters' Andrew Sheng-Xiao Geng- Fung Global Institute- University of Hong Kong - https://www.weforum.org/agenda/2018/09/how-cities-are-saving-china

Jackson Kam | 27 12 2018
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21世紀の経済の歴史は浅いものの、初めの20年間については、「世界経済 リーダーの移行期」と要約することができます。北大西洋を中心とした経済は[1] 世紀半ものあいだ世界経済を支配してきましたが、アジア、ラテンアメリカ、アフリカといった経済成長の著しい地域に主導権を渡そうとしています。今世 紀も30年が経過する頃には、太平洋と南半球に世界経済成長の基盤が移 行しているものと思われます。 特にアジアとラテンアメリカにおいて顕著に見られる教育水準が上がった中流 階級の増加に伴い、これらの地域における消費及び事業投資の伸びが世界 の経済活動のけん引役となるばかりでなく、高級消費材及び福利厚生、保 険、投資などのサービス領域へと徐々に変化していくでしょう。 世界経済リーダーの移行 金融危機がピークとなった2008年以降、高度経済成長地域1が世界中で新 しい経済活動を席巻してきました。世界銀行の集計によると、世界経済はこ の期間にGDPを10兆6550億ドル伸長させましたが、うち約8兆2800億ドル、つまり77%以上は高度経済成長地域におけるものとのことです2。今世紀初 めより、すべての新規事業活動のうちの65%近くが、高度経済成長地域で起 こっています。世界経済に占める高度経済成長地域による新規事業活動が 2000年末時点で30%だったのに対し、2015年末時点では42%以上に上昇 したことが明らかになっています(図1を参照)。 金融危機以降の景気は、概して以前よりも回復に時間がかかっており[3]、これ が、投資、雇用、規制環境に悪影響を及ぼしています。しかしながら、2008 年以降、高度経済成長地域の景気が(金融危機の発生源である)北大西洋 地域と比較してより早く回復した要因は、堅牢な財政収支、好ましい人口動 図1. 世界GDPシェア    態、将来の収入増に自信を強めつつ消費を伸ばしている中流階級の拡大です。比較的安定した財 政収支のおかげで、(特にアジア全域、ラテンアメリカおよびペルシャ湾近郊において)国や地域の 住宅および交通インフラへの継続的な公的投資が可能となり、急激な都市化を進めることができま した。医療や教育インフラへの投資は、寿命を延ばし、生産性を向上させ、農業、製造業、さらには 一部のサービス業に至るまで、相対的な競争力を向上させました。 中国経済の成長が平均4.0%という、より持続可能なレベルに収束してきていることもあり、高度経済 成長地域は2000年から2015年の平均と比べれば僅かな減速を見せるでしょう。それでも、高度経 済成長地域は北大西洋中心とした地域の経済成長を上回るでしょうし、2030年までには世界経済 のリーダーが入れ替わるものと予測されます(図2を参照)。 図2. 世界GDPシェア   台頭する中流階級 北大西洋中心の経済地域が過去半世紀にわたって繁栄してきた のは、もっぱら消費者層の規模の大きさとその拡大によるものでし た。世界経済のリーダーは今後数十年かけて交代していくでしょ うが、特にアジアやラテンアメリカを中心とした高度経済成長地域 は、消費インフラに対する投資を回収し、安定的な経済力を手に することでしょう。 2025年には、GDPを基準とした上位25都市のうち10都市を高度 経済成長地域が占めることになるでしょう。また年収2万ドル以上 (2025年までにはさらに上昇する大都市の物価基準においても上 層中流階級と呼べる金額) を稼ぐ個人の数を基準とすると、上位 25都市のうち14都市は、高度経済成長地域内となる可能性が高 いでしょう(表1を参照)[4]。 北大西洋中心の経済地域の過去の経験から私たちが学んだこ と。それは都市化が発展し、都市や経済活動において中流階級 が大勢を占めるようになると、医療、教育、レジャーおよび金融 サービス(保険と投資)のようなサービス業への需要が急激に増 すということです。しかし、アジア、ラテンアメリカ、中東、アフリカ、あるいは東欧でさえ、その中流階級は、北大西洋地域の中流階 級とは異なります。そのため、特にサービス業においては文化、教 育、宗教における彼らの伝統や特性が「新しい」サービスの重要な要素となるでしょう。 この分野における多くの多国籍企業の成功要因は「イノベーション の差別化」という観点から見ることで良く理解できます。 退職者向けの投資、金融サービスおよび保険 これらの国々における退職者や貯蓄者は、(先進諸国でそう であったように)企業の資本獲得に重要な役割を果たします。しかし、彼らからの投資を引き出すためには、今までと違ったイ ノベーションや商品提案が必要となるでしょう。企業が成功する ためには先進諸国のモデルに依存するのではなく、マーケット の特定のニーズに応えなければなりません。 サービス経済への移行 今後数年間の高度経済成長地域のインフラ投資は、依然として製造業や農業での競争優位性 確保が軸になると思われますが、一方で、より教養を持ち、より裕福な増加していく中流階級に属 する人々がますます多くのサービスを求めることになります。農業や製造業のニーズを満たすため の人材計画では大幅な人材のミスマッチが起こり、サービス産業への移行を見据えた人材を確 保できることが新たな競争優位性となるでしょう。 テクノロジーの役割 ここで言うテクノロジーは、ロボット工学や人間に取って代わる組立てラインだけではありません。経 済成長地域での農業や製造業といった分野は、過去30年間でテクノロジーによって著しい生産 性の向上を実現しました。しかしながら、情報分析、データ収集及び管理、電子商取引/マーケ ティング、インテリジェンス、セキュリティは、将来に亘り今までと同様あるいはそれ以上に重要な 分野となるでしょう。サービス業を含めて、教育やトレーニングを通じてテクノロジースキル習得の ために人材育成に投資することは、先進諸国の各企業を凌ぐ競争優位性を勝ち取るための重要 な鍵となるでしょう。 経済成長地域は、今日の課題にいかに立ち向かうか 追い風には混乱や遅延を招く向かい風が伴いますが、世界経済リーダー移行への道筋から外れていくわけではありません。2008年から2009年の金融危機における、比較的ゆっくりした景気回復の ために、多くの北大西洋中心の経済地域の政府は財政赤字や過去にない多額の債務負担に苦し み、さらに景気後退以前からの労働力の高齢化や製造業の衰退が追い打ちをかける結果となってい ます。これが結果として、英国のブリグジット国民投票、米国の大統領選挙、イタリアの憲法改正をめ ぐる国民投票に代表される、ポピュリズム、保護貿易主義、経済ナショナリズムの支持につながってい ます。2017年にオランダ、フランスおよびドイツで行われる選挙では、グローバル化、地域経済連合、そして国を跨った資産や労働力の移動に関する規制緩和を支持する政治活動の耐久力が厳しく試 されることとなるでしょう。 アジア、ラテンアメリカ、および他の経済成長地域の政策決定者がこうした課題にどのように対処する のかは、彼らが貿易戦争を回避するだけでなく、世界経済リーダーとなる上での分水嶺となることでし ょう。多国籍企業にとっては、経済成長地域において増大し消費を続ける中流階級への対応と同時 に、今後10年程の間にグローバル化する上で直面する課題を乗り越えることが、競争から一歩抜き んでるための最優先事項となるでしょう。   1 Countries outside the European Union, Switzerland, Norway, Iceland, United States, Canada, Japan, Australia and New Zealand 2 World Bank 3 IMF Working Paper. Financial and Sovereign Debt Crises: Some Lessons Learned and Those Forgotten, 2013 4 McKinsey Global Institute. Urban world: Cities and the rise of the consuming class, 2012.

Ardavan Mobasheri | 13 3 2017
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ラテンアメリカ、中東、アフリカ、アジアは経済成長と人口動態、投資市場、規制の変化を背景に、世界で最もエキサイティングな市場の一部となっています。 「マーサーの成長市場におけるアセットアロケーション動向調査: 進化する状況レポートでは、そのうち 14 の市場の年金基金について現在の投資ポジションおよび過去 5 年間の変化を調査しています。この調査には、南半球と東半球の市場全体で約 5 兆ドルの年金基金が含まれています。 世界銀行によると、これらの地域の経済によって世界の成長の約 70% がもたらされるため、資産の所有者、管理者、投資家に対して興奮を誘う機会が提供されています。消費と貯蓄のさまざまなパターンを生み出す中産階級の急速な拡大も観察されています。さらに、世界の機関投資家の上位 50 社のうち半数がこれらの市場に本拠を定めています。1 ますます堅調になりつつある世界の投資環境 ラテンアメリカ、中東、アフリカ、アジアの経済規模は大きく、成長していて、個人が保有する富の割合が増えているため、世界中の投資家にとって特に注目の的となっています。これらの市場はまた、外国人投資家にますます門戸を開いています。同時に、これらの地域における規制の変更により、国内投資家の選択肢が広がり、自国の市場外で投資できるようになっています。その結果、投資環境はオープンで安定したものになっており、世界中の投資家にはますます機会の扉が開かれています。 これらの地域の年金基金制度も改革が進行中で、西欧諸国と同じく退職貯蓄については個人の責任が増大する傾向が見られます。全体的に見て、企業のと政府が運営する制度の両方で確定給付 (DB) から確定拠出 (DC) に移行しつつあります。これらの変化により、将来の貯蓄ニーズを満たし、制度への信頼を担保するために効果的な投資ソリューションを提供する必要性が強調されています。 投資家による 3 種類の対応方法 投資家やプランマネージャーは、変化する環境に 3 種類の主な方法で対応しています。 株式に投資する投資家が増加しています。過去 5 年間で、自己資本配分率は 32% から 40% へと約 8% 増加しました。多くの地域の投資家がポートフォリオの期待収益率を高めようとしてこのようなシフトが見られています。競争激化した低リターンの投資環境の中で、世界中の投資家が問題に直面しています。ポートフォリオミックスに株式を追加すると、長期的にリターンの向上を期待できるはずです。 市場の自由化によりポートフォリオの多様化が可能になり、国内資産の代わりに外国資産へのエクスポージャーが高まっています。年金基金における海外エクスポージャーは、過去 5 年間平均で全株式ポートフォリオの 45% から 49% に増加しました。投資家は地理的な多様性を求めていますが、特にコロンビア、日本、韓国、マレーシア、台湾でそういえます。ブラジル、コロンビア、ペルー、南アフリカなどのいくつかの国でも、法律の最近の変更により、現在では外国資産へのエクスポージャーが増加しています。最近では日本政府の年金基金が国内株式を犠牲にして、外国株式に移行していることが観察されています。外国債券へのシフトも見られており、外国資産への配分は 16% から 23% に上昇しました。これは国内債券の金利が低いこと大きなやポートフォリオ多様化機会の追求によるものです。ただし、ホームバイアスが残っていますが、規制の変更により、幅広いグローバル投資が支えられるため、このトレンドは続くことが予想されます。 投資家のオルタナティブ投資に対する関心が若干高まっています。オルタナティブ投資をポートフォリオに組み入れる投資家が増加しており、マーサーではこのトレンドが継続すると予想しています。代替アセットアロケーションの詳細を公開した投資家のうち、平均配分の 70% 超が不動産とインフラに、約 20% が非公開企業の株式に投資されていました。規制の変更により、一部の分野では投資家にとって代替投資の魅力が増しています。たとえば、チリでは 2017 年に投資制度の改革案が可決され、具体的な制限はポートフォリオによって異なるものの、年金基金の運用者は最大 10% をオルタナティブ案件に投資できるようになりました。この改革の主な目的は、利益を上げて、最終的に年金収入を増やすことにあります。投資家がポートフォリオを多様化し、リターンの向上を追求する中で、代替投資のエクスポージャーは長期的に増大することが予想されます。 投資家の皆様におかれましては、当社レポートの調査結果を、ポートフォリオを見直し、投資リターンの向上のために改善できるアセットアロケーションの分野について調べる機会としてご活用いただければ幸いです。 詳細については、こちらのレポートをダウンロードしてください。 出典: "Top 1,000 Global Institutional Investors." Investment & Pensions Europe, 2016. https://www.ipe.com/Uploads/y/d/w/TOP-1000-Global.pdf. 著者: フィオナ・ダンシレ 役職: マーサー、成長市場、ウェルスリーダー 経歴: フィオナは、年金、投資、企業経営などについて 30 年のコンサルティング経験を有しています。成長市場を担当する前はマーサー英国の CEO を務め、英国の投資事業で主導的な役割を担っています。現在、アジア、中東、トルコ、アフリカ、ラテンアメリカの 22 を超える国々で投資、年金基金ソリューションを提供する戦略の策定を担当しています。

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近年になって激しさを増す経済の多様化と開発努力の観点から、プライベートエクイティ(PE)は、湾岸協力会議(GCC)においてますます重要になっています。PEはGCCにおける比較的新しい資産クラスとして台頭してきていますが、GCCでは、UAEや西ヨーロッパの先進国市場に見られ、ファンドマネジャーが過半数の株式を取得する従来の「買収型」PEよりも、「成長資本型」PEへの関心が高まっています。実際、ベンチャーキャピタル(VC)では、Careemのようなこの地域のVCユニコーンの成功やAmazonによるSouq.comの買収を受けて、資金調達が急増しています。 PEは、経済成長を促進する上で重要な役割を果たすことができます。GCCは、富の増加、最近の重要な経済改革、そして地域の各政府が強力に主導する、現地の起業家精神の強化や中小企業の振興などの要素によって、PE投資にとってきわめて魅力的な地域となっています。 地域の各政府は、地域での起業計画を奨励するため、規制を緩和したインキュベーターや地域ハブを創設することにより、VCのさらなる成長を促進しようとしています。最終的にはこうした取り組みが、持続可能な経済成長を促進し、より大きな成功をもたらし、さらに高度な技術を要する仕事を増やすことでしょう。 しかし、大きな話題になったAbraaj Groupの事件を受け1、投資業界はこの地域において、より強固な企業統治を求めています。自らの資金がどう扱われるかという点について、投資家がより大きな注意を払うようになったため、現地のPEマネジャーは以前よりはるかに厳しい監視を受けるようになっています。 地域の投資家は、民間市場の業績を測定する際、さらに深い理解を求めるようになっています。買い手や投資家は、過去のパフォーマンスなどの要素を考慮し、投資と業務に対してデューデリジェンスを実施して、実証済みかつ試験済みの情報に基づいてPE市場に参入する決定を下したいと考えています。 民間市場の絶対的および相対的なパフォーマンス測定はとても重要であると同時に、非常に繊細なものでもあります。「価値創造」はPEのストーリーにおける重要な側面であるため、測定は正確であるのみならず意味を持つものでなくてはなりません。 あらゆる投資と同様、過去のパフォーマンスを評価することは常に、ポートフォリオの全体的資産配分にPEを含めるかどうかを決定する際の要素となります。しかし、PE投資家は、厳格なデューデリジェンスを通して、ファンドの真のパフォーマンスをさらにじっくり見極めなくてはなりません。測定基準と定性的測定の組み合わせは、ファンドの実績と将来のパフォーマンスの可能性を総合的に理解するために重要です。 定量的測定基準に関して最も一般的に使用される3項目は、内部収益率(IRR)、投資倍率(TVPI)、および実現倍率(DPI)です。 IRRは、民間市場投資のパフォーマンス測定に最も広く引用されている測定基準です。これは、一定期間にわたって行われた投資と取得された投資を考慮する、時間ベースの測定です。投資が成熟する(または特定の価格で売却する)のに時間がかかればかかるほど、年換算IRRは低くなります。 2つ目の指標であるTVPIは、当初の投資と比較して、(配当および最終的な売却を通じて)投資からどれだけの価値が得られたかを検討するものです。最後の指標はDPIで、当初投資された金額と比較して、当初の資本のうちのどれだけが(配当またはその他の支払いを通じて)返ってくるかを測定するものです。DPIは実現値のバロメーターであり、合計値ではありません。 これら3つの指標はすべて、投資家がPEファンドの過去のパフォーマンスを評価するために重要な役割を果たします。PEファンドのパフォーマンスを包括的かつ正確に評価する唯一の答えはありませんが、これらの指標を一括使用すると、より深く理解することができます。 ファンドの過去のパフォーマンスを測定しても、今後のPEファンドのパフォーマンスがわかるわけではありません。こうしたコミットメントの有効期間は長いため、投資に関連する他の要素を検討する必要があります。その一環として、投資チームの安定性を評価する場合があります。投資チームによるディールソーシングの方法や、投資先企業で価値を生み出している方法を検討することになります。 Abraajの事例を受け、マネジャーやバックオフィス業務の評価は、デューデリジェンスの重要な測定基準の1つになりました。効果的な内部統制、強力なシステム、十分な人数の運用チームも、PEファンドを成功させるために重要となります。 民間市場のパフォーマンス測定は、公設市場のパフォーマンス測定より明らかに複雑です。民間市場のパフォーマンスを測定するためには、関連する測定基準や手法に対する見方を明確にする必要があります。しかも、さまざまな観点から情報が入るうえに、特殊な分析方法が求められます。さらに、主観が入ることがあるうえ、操作されるおそれもあります。結局のところ、このようなパフォーマンス測定は、民間市場投資の成功の不完全な評価を表現するものとなっています。しかし、民間市場のパフォーマンス測定は進化し続けており、現在の欠点が改善される可能性はあります。 投資家にとって鍵となるのは、長期にわたって持続的に強力な投資を生み出すことができる投資人材を見出すことです。過去のパフォーマンスはマネジャーの今までの実績を評価するためには役立ちますが、将来の成果を保証するものではありません。したがって、投資家は深い「定性的」投資を行いつつ、運用に対するデューデリジェンスを実施して、投資が将来的に成功する可能性を見極める必要があります。 マーサーによる投資戦略の支援方法についての詳細は、こちらをクリックしてください。 出典: Ramady, Mohamed, "Abraaj Capital:The Rise and Fall of a Middle East Star," Al Arabiya, July 3, 2018, https://english.alarabiya.net/en/views/news/middle-east/2018/07/03/Abraaj-Capital-The-rise-and-fall-of-a-Middle-East-star.html#.

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アジア太平洋地域(APAC)の経済は、特定の地理的、社会的、財政的状況により定義されるため、それぞれ独特な形で世界経済の変動の影響を受けます。しかし、急速なデジタル変革と硬直する地政学的緊張のため、APACにあるすべての経済成長国の運命は、あまねく広がるグローバリゼーションの影響と切り離せなくなりました。 APACの経済は、今後2年で5.6%の堅実な成長を遂げると予測されています。ただし、この地域に対するそうした楽観的な予測は、依然として深刻な脆弱性をはらんでいます。1 脆弱な領域は、経済、地政学、科学技術および環境面の4つに分類できます。各カテゴリーに目を通して、近い将来、成長が見込まれる国々にどのような課題が浮かび上がってくるのか見ていきましょう。 1.経済面―債務と住宅 2016年、APACは北米を越えて、世界の債務の最大の要因地域となりました。実際、APACの債務は世界の債務の35%を占め、2008年の金融危機以降、着実に大幅な増加を示しています。この債務により、地域経済は金利上昇や潜在的なデフォルト危機の影響を受けやすくなっています。 危険にさらされている領域は、経済圏ごとに異なります。例えば、中国では非金融企業と一般家庭の債務が増加していますが、日本では国債市場をリスクにさらす公債が最大の関心事となっています。また、インドは、国立銀行の不良資産への支出で2,100億米ドルの打撃に直面しています。 2010年以降、APAC全域、特に香港、オーストラリア、ニュージーランド、そして、インドにおける住宅価格は収入より速いペースで高騰しており、ムンバイの家庭では、手頃な価格の住宅などほとんど存在しないと感じています。住宅価格が高騰する中、資産バブルがはじける危険が心配されています。ただし、リスクレベルを決定づける信用貸付のしくみと家計債務の額は各国で異なります。APACは、一般世帯が借金を返済できず、それが国際的な銀行業界を悩ませ続ける世界的な経済危機の一因となってしまった、2008年の米国の住宅市場危機から学んだ教訓を心に留めておかなくてはなりません。 オーストラリアは現在、世界最高水準の家計債務を抱えています。オーストラリアの銀行ポートフォリオの大半が抵当貸付に由来し、2008年の崩壊直前の米国の住宅市場をはるかに上回るレベルに達していることから、多くの米国および世界の投資家は、オーストラリア市場に対してヘッジを行う傾向にあります。 2.地政学の面―保護主義と不平等 相互に繋がった世界経済では、あらゆる地域が国際貿易の動向や関税の影響を受けます。中国・アメリカ間で拡大する貿易戦争がAPAC全域のサプライチェーンを脅かしています。一部の国が他国以上に苦労しているため、保護主義の傾向が、この地域の密接に絡み合った経済網に浸透していくおそれがあります。 急速な地政学的進展は不安を生み出します。そうした不安により、企業や政策立案者はしばしば、経済がマイナスの結果を被らないよう、制限や防護を余儀なくされます。実際、中国とアメリカが優先事項を再定義する中、APACの国々は、絶えず変化し続けるこの状況に対し、どこでどのように適応するかを決める必要があります。オーストラリアからインドまで、APAC経済圏は、ビジネスパートナーを疎外したり成長の機会を犠牲にしたりすることなく、他の国々と協力および競争するという複雑な状況をうまく切り抜けなくてはなりません。 APACは混沌とした地政学的状況の中で安定を模索していますが、国際的な貿易や商取引の結果、多くの国で、国内における人口構成が劇的に変化しています。貿易に適した港、近代的な技術の中心地、高度な科学技術を必要とする雇用チャンスにアクセスできることから、大都市や巨大都市が増加しました。革新的な文化、アイデア、インフラを提供する都市部に若い世代が継続的に移住するため、周辺および農村地域は社会の主流から取り残されています。持つ者と持たざる者の間の格差拡大は、所得と富の不平等、広範囲にわたる不満、市民の不安を招くおそれがあります。 政策決定者は、APACにおける人的資本管理を形成する一般的な考え方や規制を管理しようとしています。シンガポールのジョセフィーヌ・テオ上級国務相は最近、シンガポール国民が周辺諸国に移動して仕事をする必要があることに触れ、特にシンガポールが中国とのビジネス関係を強化する中で、APACの他の経済成長国における機会に先入観を持たないよう国民に求めました。2 3.科学技術面―奇跡と脅威 科学技術は世界経済の未来を形作ります。新たに出現する機器や科学技術は、政府による規制より速く進化しているため、監視の隙間を縫って、経済成長、イノベーション、そして犯罪にとって前例のない機会が生み出されることになります。科学技術は、APACが労働力の生産性を高め、社会改革を進め、環境面での持続可能性を支持する手助けとなってきました。ASEAN諸国に対するデジタル変革の影響はきわめて大きく、特にeコマース分野では、2017年第1四半期にASEAN諸国が世界の売上高の40%を占めました。東南アジアだけでも、インターネットやそれがもたらすあらゆる可能性にアクセスできる人々の数は、2025年までに2億人から6億人へと3倍に増えると予想されています。3 新しい科学技術のために失われる仕事もある一方で、同じ科学技術が多くの新しい仕事を生み出すことにもなります。実際、AIシステムを構築している多くの企業は、人間の従業員がAIの設計と実行に積極的な役割を果たすことを発見しました。4イノベーションが雇用創出につながることは、歴史が明らかにしています。例として、コンピュータの出現を取り上げてみましょう。タイピスト関連の役割での需要は減少したかもしれませんが、コンピュータベースの仕事に対する需要は、開発、運用、プログラミングに関連する新しい仕事を生み出しました。しかしながら、これらの進歩には現代的課題も伴います。 高度な技術を持った世界中のサイバー犯罪者は、政府、公的機関、あらゆる規模の企業の弱点を探り続けるでしょう。データや情報が天然資源と同等に貴重になるにつれ、国家間のサイバー攻撃が頻度と複雑性を増していきます。政府と多国籍企業との間の錯綜する同盟関係は、人々やそのプライバシーに対する権利に劇的な影響を与えます。人権や個人情報へのアクセスに関する政策が国により異なるため、人々が科学技術とさらなるつながりを持つようになれば、保護境界線を設定し、人間の可謬性を軽減するために、新世代のサイバー法が登場することでしょう。 4.環境面―自然災害と人為的解決策 環境要因は、APACの将来の経済見通しと全体的な生活の質を決定します。地理的に見て、APACは世界で最も災害が発生しやすい地域です。洪水や熱帯低気圧といった環境災害は、ほとんどの人々、インフラ、施設が集中する沿岸部に甚大な被害をもたらします。自然災害は予測不可能であるため、突然、時には大規模に、人命の損失、人口移動、そして広範囲にわたる社会的・経済的混乱を引き起こします。 そうしたトラウマを受けた後、個人や地域社会は、政府やその他の機関が救済を提供できるようになるまで、悲しみを抱えながら、医療活動も不安定な中で自力で進まなければなりません。APACは、自然災害が人々と経済にもたらす荒廃を軽減するための、統合された政策およびシステムを積極的に施行すべきです。こうした動きはすでに見られます。香港のように比較的成熟した市場では、ハリケーンのような災害時にリソースを調整し、迅速に対応する能力が飛躍的に向上しています。科学技術と企業の利益がAPACをより緊密に結びつける中、各政府には、他の国々や地域に対する自国の責任が正確にはどのようなものであるのか判断する必要が生じます。 UNESCAPのデータ 地球規模で考えると、APACは有害な排出物や汚染物質の抑制に不可欠な役割を果たしています。時代遅れのインフラストラクチャと手ぬるい規制は、現代的な科学技術と政策に置き換えなければなりません。しかし、変化には時間と費用が伴います。多くのAPAC諸国はいまだ、石炭やその他の化石燃料など、従来のエネルギー資源に依存しています。ただ、地域および地方レベルでは大きく進歩しています。 例えば、中国は、石炭や石油に代わる大気中の汚染物質を減らすグリーン燃料技術の導入で、目覚しい進歩を遂げてきました。5化石燃料を風力や太陽光などのクリーンエネルギー資源に置き換えるという中国の新たなイニシアチブは、国内経済に悪影響を与えることなく、北京などの諸都市で大幅に空気の質を改善してきました。実際のところ、中国は持続可能な資源がエネルギーの未来であると考え、グリーンビジネスに積極的に投資しています。例えば、ハイテクなソーラーパネルの分野では、世界のソーラーパネルの3分の2が中国製となっており、電気自動車の分野では、2025年までに、テスラ社さえも凌ぐ年間700万ドルの売上を予測しています。6 APACは、地域として、再生可能エネルギー源を促進し、直接的で差し迫った脅威となる大気汚染や水不足の問題に取り組むための枠組みや新しい科学技術にも合意しています。経済発展と、気候変動および持続可能性イニシアチブの進展とのバランスをとるのは困難ですが、必要なことです。 この地域のその他の課題同様、気候変動に対応するには、APAC諸国、政府そして労働者の間に、新しい協力の時代が必要となることでしょう。2017年1月の米国の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)離脱を受け、APACは、地球規模の問題を解決するため、より地域的なアプローチを検討することを余儀なくされました。しかしながら、APAC首脳は初心を貫き、2018年にはオーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、ニュージーランド、マレーシア、メキシコ、ペルー、シンガポール、ベトナムが参加して、TPPの改訂版に署名しました。 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)と呼ばれるこの新しい協定は、世界のGDPの約14パーセント(当初のTPPの40パーセントから減少)に相当するもので、参加国間の新たな貿易ダイナミクスや監督規制だけでなく、相互に合意された環境保護法の遵守についても詳述しています。知的財産権、仲裁および投資紛争の解決に関する条項のいくつかは、新しい協定では省かれました。これは、特定の問題に関して進行中の多国間協力や、公共の利益のために必要とされる各国政府による地域介入を引き続き進める余地を与えるためです。新しい協定では、当該地域の労働者の移動を規制しておらず、加盟国は、自国農民およびサービス経済の利益の保護を実現しています。 ますます自国中心主義になった米国の影響により、APACは互いの結びつきを強め、ビジネスチャンス、人材のやり取り、世界規模のデジタル変革への共同参画へとさらなる道を切り開くことを余儀なくされる可能性があります。APAC諸国のほとんどが新協定を批准したことは、世界の他地域で保護主義の言説が増加する中で、自由貿易の輝かしい砦となっています。 APACの将来について楽観的になれる理由は数多くあります。デジタル変革は、前例のない成長の機会、そして労働者を科学技術の進歩、起業活動、およびイノベーションの世界規模の急増に結び付ける力をAPAC経済圏に提供しています。環境問題や経済的逆風に対処する差し迫った必要性が、APAC全体に緊迫感を生み出しています。問題解決への協調的なアプローチは、APACの未来にとって明るい予兆となっています。献身的なリーダーやAPACに本部・本社を置く組織が、地域全体の繁栄を目指して強みを結集しています。世界経済の変化が続く中で、APACはますます影響力のある役割を果たすようになるでしょう。 出典: Evolving Risk Concerns in Asia-Pacific: http://bit.ly/2APQVlZ. Lee, Pearl."Ties with China Multifaceted and Strong:Josephine Teo."The Straits Times, 2 Mar. 2017, www.straitstimes.com/singapore/ties-with-china-multifaceted-and-strong-josephine-teo. "Asean the 'next Frontier' for e-Commerce Boom."Bangkok Post. https://www.bangkokpost.com/business/news/1249798/asean-the-next-frontier-for-e-commerce-boom. Mims, Christopher."Without Humans, Artificial Intelligence Is Still Pretty Stupid."The Wall Street Journal, https://www.wsj.com/articles/without-humans-artificial-intelligence-is-still-pretty-stupid-1510488000?mod=article_inline. Song, Sha."Here's How China Is Going Green."World Economic Forum, www.weforum.org/agenda/2018/04/china-is-going-green-here-s-how/. Jeff Kearns, Hannah Dormido and Alyssa McDonald."China's War on Pollution Will Change the World."Bloomberg, www.bloomberg.com/graphics/2018-china-pollution/.

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時代は変化しています。世界は倫理的で長期的に持続可能な投資を志向し始めています。将来に備える政府は、持続可能な発展を支援する金融市場の役割をますます強調するようになっています。責任ある投資(RI)ソリューションに対する投資家の需要は大幅に高まっています。これはRI関連投資に割り当てられる資産の増大から見て取れます。低コストのインデックス投資へのシフトに伴い、現在利用可能なRIインデックスも増えています。 RIインデックスは、環境、社会、企業のガバナンス(ESG)に関する多くの投資家の考え方を、既存のパッシブ運用やファクター投資に組み込むための重要な第一歩になると期待されています。マーサーでは、責任ある投資を、ESGファクターが業績に重大な影響を与える可能性があるという信念の下で、投資管理プロセスと企業所有の手法にESGファクターを組み込むことと定義しています。 一方、GCC(湾岸協力理事会)地域では、政府は経済の多角化を図る中で、責任ある投資の重要性についての認識を高めています。2017年12月にパリで開催された「ワンプラネットサミット」で「ワンプラネットSWFワーキンググループ」を設立した6つのソブリンウェルスファンド(SWF)のうち、GCC諸国のファンドが4つに上ります。 UAE国内でも、「持続可能な開発のためのグリーンエコノミー」や「グリーンアジェンダ」など多数のイニシアティブが、未来の責任ある投資に向けて国を動かしています。多様化戦略との調和に関しては、これらのイニシアティブは、国家の経済成長と環境持続可能性の目標をすり合わせることにより、「ビジョン2030」をサポートしています。 アブダビでは、マスダール・シティ(数十億ドル規模のグリーンエネルギープロジェクト)などのさまざまな開発を通じて、目立った形でアジェンダに貢献しています。1一方、ドバイでは、エネルギー・アンド・エンバイロンメント・パーク(通称エンパーク、クリーンエネルギーと環境テクノロジー企業のためのフリーゾーン)を開設しています。2 GCC諸国で責任ある投資事例の影響が強まるにつれ、投資の意思決定やプロセスにESGファクターやサステナビリティのテーマを組み込むことを求める声が高まっています。機関投資家は、投資そのものだけでなく、自身の評判や収益の面についても、責任ある投資の効果を考慮に入れるようになっています。持続可能な投資は、資源不足、人口動態の変化、幅広い環境問題や社会問題に対応する政策の変化など、さまざまな課題への解決策を提示する企業の潜在能力を活かすための魅力的なチャンスを提供します。 ESGファクターを企業の長期的なパフォーマンスに組み込むメリットは数々の調査や産業界のエビデンスによって示されています。たとえば、ドイツ銀行は2012年に100件以上の学術研究を調べ、ESG評価の高い企業のほうが、負債比率の面で資本コストが低く収まっていると結論づけました。また、2015年に台湾国立台中科技大学の許教授と台湾国立中興大学の鄭教授が行った別の研究では、社会的責任を果たしている企業のほうが信用格付けが高く、信用リスクが低いと判明しました。3 環境問題や社会問題に対する一般の関心に応えるべく企業が取り組みを進める中で、ESGに配慮することもまたベストプラクティスであると考えられるようになりました。従業員はますます環境にポジティブな影響を与える企業のために働き、投資したいと思うようになっています。CFA研究所などのグローバルなイニシアティブや団体は、ESGを考慮しないことの財務面や評判におけるリスクを強調しています。 ESGを適用するメリットがようやく理解されるようになってきたGCCですが、実のところESGの理念そのものはGCCとまったく無縁というわけではありません。シャリア(イスラム法)準拠の投資は過去20年間にわたって行われています。どちらのフレームワークでも、ネガティブスクリーニング(好ましくない活動を行う企業の排除)アプローチを採用し、持続可能なリターンが得られる投資機会を探ります。ESGファクターとシャリアスクリーニングの組み合わせにより、イスラム投資家は、社会的目標と環境的目標を同時に達成しながら、投資パフォーマンスを向上させることができます。 UAEは現在、投資の多様化に注力しています。そのため、ESGの組み込みを成功させるための重要なステップとなる戦略とプロセスが密接に連携するような、責任ある投資の市場と文化を醸成することは非常に有益です。 持続可能な成長を求める場合、気候変動などの新たに高まりつつあるリスクを軽減するために、インサイト(洞察)とオーバーサイト(監視)のレイヤーを追加することが非常に大切です。そのためのESGアセスメントの導入は、明確なKPIを設定し、プロジェクトがどこでどのように価値を生み出すかを識別し、プロジェクトに伴うリスクを緩和するのに役立ちます。 たとえば、マーサーではクライアントに「Investment Framework for Sustainable Growth」(持続可能な成長のための投資フレームワーク)を適用しています。このフレームワークは、ESGファクターに関連する財務的影響(リスク)と、持続可能性の問題の影響を最も直接的に受ける業界における成長機会を識別するものです。影響の測定とリスクの緩和はますます重要になっており、強力な投資ガバナンスプロセスが求められます。 ESG導入のメリットは計り知れません。ESGの原則の導入に着手したとはいえ、GCCには、政府が投資家を含む利害関係者と十分なエンゲージメントを図り、地域全体で戦略を調整するために行うべき仕事がまだ多く残っています。 ESG組み込みのグローバルな基準を満たすことを求める圧力は今後強まる一方です。そこから逃げるのではなく、企業、投資家、政府が連携して、責任ある投資と持続可能な成長の面でGCCを前進させる働き方を定義すべきです。 出典: Carvalho, Stanley, "Abu Dhabi To Invest $15 Billion in Green Energy," Reuters, January 21, 2008, https://www.reuters.com/article/environment-emirates-energy-green-dc/abu-dhabi-to-invest-15-billion-in-green-energy-idUSL2131306920080121. Energy and Environment Park:Setup Your Company In Enpark, UAE Freezone Setup, https://www.uaefreezonesetup.com/enpark-freezone. Chen, Yu-Cheng and Hsu, Feng Jui, "Is a Firm's Financial Risk Associated With Corporate Social Responsibility?"Emerald City, 2015, https://www.emeraldinsight.com/doi/abs/10.1108/MD-02-2015-0047.</p>

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中国は社会全体でイノベーションの文化を育んでいますが、最も注目すべきはスタートアップ企業です。多国籍企業は中国のスタートアップ企業に投資するか、成功している「ユニコーン」企業が中国の消費者ベースの増大する需要を満たしている方法からヒントを得ることで、自社の力にしていくことができます。 マーサーの「2019年グローバル人材動向調査」によると、多国籍企業は中国の労働者が雇用主に最も望んでいること、つまり健全なワークライフバランスを提供する能力に留意する必要があるとされています。現在、これは技術系のスタートアップ企業で働く従業員にとって切実な問題となっています。 イノベーションの文化を発展させる 中国政府は業界のイノベーション文化の育成のため、ビジネス規制をよりいっそう緩和することで起業家による実験や成長を促進しています。さらに、効率的なインフラや地域の支援の提供も行っています1。 この新しい風土のもとで特に著しく成長しているセクターの一つはフィンテックの保険版、インシュアテックです。たとえば、中国平安保険、テンセント、アリババが後援するデジタル保険会社の衆安オンラインは、保険会社向けのSaaSプラットフォームを開発し、保険請求、医療保険、処方薬局、地元の病院情報を含む衆安のデータベースへの迅速なアクセスを提供しています2。 インシュアテックのもう一つの事例としては、ルイ・シン・インシュアランス・テクノロジー (Rui Xin Insurance Technology) とチャイナ・レンディング (China Lending) の提携が挙げられます。この提携では、保険会社がチャイナ・レンディングの商品を提供する独自の消費者金融プラットフォームの開発支援を目指しています。この2社は両社のプラットフォームで多数の保険商品を開発し、集客の向上のために連携しています3。 こうしたインシュアテックの提携は、中国が現状打破のための実験的コラボレーションやイノベーションのための土台をいかに構築しているかを例証したものです。 中国のユニコーン企業からヒントを得る 中国のスタートアップ企業数千社が多くのセクターで革新的なビジネスモデルを開発し、革新的な製品を販売することにより従来の企業から顧客を奪い、業界を混乱させています4。 実際、中国では120社ものスタートアップ企業が成功しており、世界234社のユニコーン企業の半数以上を占めています5。中国のスタートアップ企業が卓越している理由は、巨大市場ですばやく拡大できること、そして米国の2倍の博士号を持つ専門家の人材プールを活用できることにあります。また、リスク許容度が高く、「怖いもの知らずの実験」を行って新製品を急ピッチで市場に投入しています。 これらのユニコーン企業はデジタル化の破壊的なイノベーションとともに、大きなリスクを進んで引き受け、母国をイノベーターとしてのかつての地位に押し上げたいと考えています5。 多国籍企業がこの活力を自社の力にする方法 変革・起業家精神を持つ清華大学戦略学部の准教授兼副議長、朱恒源 (Hengyuan Zhu) 氏は、成功を収めているスタートアップ企業は「イノベーションのコンテキスト化」を実践していると考えています。これには中国国内の地域の顧客と連携し、特定の地域で求められている製品を確実に適合させることも含まれます。中国で事業を展開する多国籍企業はここからヒントを得ています6。 朱氏は、「成功を望む多国籍企業は中国の現地支店で意思決定ができるよう権限を付与する必要がある。そうすることでグローバルなリソースを活用し、イノベーションシステムに統合し、中国人の顧客のために中国でイノベーションを実現できる」としています。 組織が成功するためには、職場の革新的な文化においてバランスを取らなければなりません。たとえば、組織では実験的な試みを行いますが、しっかり規律を守って行う必要があります。職場のあらゆる面でこのように慎重に考えることで、成功と生産的で革新的な文化の実践が保証されます。 996勤務への対応:不健康なワークライフバランス 中国の技術者コミュニティ、特にスタートアップ企業の間では、「996.ICU」と呼ばれる勤務スタイルに反発が強まっています。この「996.ICU」とは、中国のプログラマーの一般的な勤務スケジュール、つまり働きすぎで集中治療室 (ICU) 送りになるリスクに脅かされながらも午前9時から午後9時まで週6日働くという意味です7。一部のスタートアップ企業は、あからさまにこのような勤務を求めたり、不当なKPIのノルマを要求しています。中国人の心情に訴えることにより、このような勤務を奨励している人もいます。 たとえば、アリババの創業者ジャック・マー氏は、「どの会社も従業員に996勤務を強いるべきではありませんが、幸福を手に入れるには勤勉な労働が必要であるということを若者が理解することは重要です。996勤務を擁護するわけではありませんが、私は一生懸命に働く人を尊敬しています!」7と語っています。 このような意見は「2019年グローバル人材動向調査」で明らかになった大半の中国人労働者の意見とは対照的です。大多数の人は、職場で能力を発揮するための最大の条件は、ワークライフバランスを管理できることと回答しています。このことは、楽しく働きながら新しいスキルやテクノロジーを身につけることよりも優先度が高くなっています。 中国のスタートアップ企業への投資を考えていたり、ユニコーン企業からヒントを得ようとしている多国籍企業は、中国の労働者の健全なワークライフバランスを促進しながら、変革に成功した人々の多くの特性を取り入れることを検討すべきです。そうすることで最終的には組織の業績も向上するはずです。 出典: Jun, Zie."Whole-of-society effort drives technology development in China," Global Times, 25 Jun. 2019, http://www.globaltimes.cn/content/1155732.shtml. Fintech News Hong Kong."ZhongAn Technology Launches AI-Powered Data Platform for China's Insurance Industry," Fintech News, 14 Aug. 2018, http://fintechnews.hk/6308/insurtech/zhongan-technology-saas-insurance-data/. China Lending Corporation."China Lending Forges Strategic Partnership with Rui Xin Insurance Technology to Develop Online Financial Services Platform," PR Newswire, 15 Jul. 2019, https://www.prnewswire.com/news-releases/china-lending-forges-strategic-partnership-with-rui-xin-insurance-technology-to-develop-online-financial-services-platform-300884622.html. Greeven, Mark J; Yip, George S. and Wei, Wei."Understanding China's Next Wave of Innovation," MIT Sloan Management Review, 7 Feb. 2019, https://sloanreview.mit.edu/article/understanding-chinas-next-wave-of-innovation/. Nheu, Christopher."The Secret Behind How Chinese Startups are Winning," Startup Grind, 1 May 2018, https://medium.com/startup-grind/the-secret-behind-how-chinese-startups-are-winning-44876b196626. Zhu, Hengyuan and Euchner, Jim."The Evolution of China's Innovation Capability," Research-Technology Management, 10 May 2018, http://china.enrichcentres.eu/sharedResources/users/4807/The%20Evolution%20of%20China%20s%20Innovation%20Capability.pdf. Liao, Rita."China's startup ecosystem is hitting back at demand-working hours," TechCrunch, Apr. 2019, https://techcrunch.com/2019/04/12/china-996/.

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