資産運用

業界のリーダーではなく実績のない運用会社を採用する5つの理由

2019年2月7日
  • Deb Clarke

    Global Head of Investment Research, Mercer

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「場合によっては、長きにわたるすばらしい業績に酔ってしまい、無関心になる文化が醸成され、謙虚さに欠けたり、はたまた革新をあまり望まないようになってしまうこともありうる。」

成功を祝うのが人間というものだ。人は表彰式やお祝いのハグ、紙吹雪やハイタッチが大好きだ。誰でも勝者が好きだ。しかしながら、資産運用業界においては、いままでかなり成功してきた運用会社が「勝ちつづける」という幻想をもつことは危険だ。場合によっては、長きにわたるすばらしい業績に酔ってしまい、無関心になる文化が醸成され、謙虚さに欠けたり、はたまた革新をあまり望まないようになってしまうこともありうる。最終的に、こういった思考が集まることで将来の苦しみをもたらすかもしれない。

対照的に、実績のない運用会社は、常に価値を生み出す新しい方法を探り、イノベーションを利用して勝ち組になろうとする。機関投資家の代わりに運用責任を担うCIO達は、こうした実績のない運用会社こそが途方もない機会をもたらす可能性があることを認識すべきだ。現在のところ成功している運用会社が、そう、勝つことに対して満足してしまっている場合には特にそうだ。以下に、CIOが機関投資家のための新規投資先を探す際、なぜ実績のない運用会社を見落とすべきでないのかについて5つの理由を示す。

1. 成功が続くという間違った確信
 

資産運用業界では、過去の成功を将来の成功の指標と見なす傾向がある。その根拠としては、過去に高い利益を生み出した運用会社には、将来も高い利益を生み出すのに必要な人材や考え方そしてリソースがある、というわけだ。しかし、こうした先入観は、誤った結果を招く恐れがある。運用の世界では、成功し続けることはまったく保証されていないし、むしろ将来のマイナスと見なされることさえある。人間は本質的に間違いを犯すものだし、運用会社はよくある成功の罠に引っ掛かりやすい、その人間によって運営されている。つまり、無関心や権利、過信によって過去がずっと続くという慢心に陥ってしまうわけだ。世界には成功がもたらす失敗についての寓話がたくさんあり、そういった失敗の中心にあるのはいつも人間の性だ。

中国の「プレーヤーよりもかえって見物客のほうがゲームの状況を正確に判断できる」という意味のことわざが、視野の狭さの危険性と、なぜ外部に意見を求めるのが賢明なのかをよく表している。証明されたリソースのみに頼ることにより、徐々に、同じような戦略や考え方、見識が増幅されてしまう(エコーチェンバー効果)。資産運用業界における、過去の成功を将来の成功の指標と見なす傾向は分からなくもないが、しかし当てにならない先入観だ。常に変化している業界においてそれまで効果的であった戦略を反復することは、衰退への方程式だ。それに引き換え、自社の弱点を鋭く認識している実績のない運用会社はいつも、新たなチャンスの兆しのことを考えている。経験豊富なCIO達は、継続すると思われた成功が持っている危うさを目の当たりにしているため、創造性への注視や未来を作り出すことに価値を見出す傾向にある。資産運用業界がこの10年もしくは20年でどれだけ変化したか、ちょっと振り返ってみてほしい。変化に終わりはない。

2. 自己満足の罠

CIO達は、現在成功している資産運用会社と協業することで想定されるメリットを評価する時、ステークホルダーの代わりにデューデリジェンスを行わなければならない。自己満足は、とても強力でそしてよくある心理的な落とし穴だ。結局のところ、もしクライアントが満足していて価値が生み出されてさえいれば、なぜそれを変えなければならないのか?だが、自己満足というものは一見、気づきにくい。それは、長い時間をかけてほとんど気づかれないうちに忍び込んできて、そして企業文化や日々の業務の一部になってしまう。成功の副産物としての慢心は、会社が自画自賛し始めるとすぐに、成功そのものになりすまし会社に根付いてしまうかもしれない。そして、ロビーの明るい光の下、展示ボックスに業界の最新のアワードなんかを飾ったりするのだ(見たことがあるでしょう!)。      

自己満足に対する解毒剤は、用心と謙虚さ、そして行動だ。運用会社は、画期的あるいは逆張りのアイディアを捜し求め、進化するテクノロジーや新たな規制を活用することを学ばなければならない。成功している運用会社は、現在の自社の財産の輝きで目がくらんでいるから、変化の必然性や圧倒的なパワーが見えないかもしれない。昨日うまくいったことは間違いなく今日もうまくいくし、きっと明日もそうだ、と彼らは考える。運用会社はみな(現在の環境に関係なく)、次に来ることに注視する必要がある。戦略やメカニズムにおいて競争上の優位性を生み出すような試行錯誤をする運用会社は、変化を追いかけるどころか、すでに先行している。自分自身と市場に対して確固たる何かを持っている運用会社は、変化をチャンスとして利用する。

3. クライアントという難題

現状に満足しているクライアントは、分かりやすい理由で、変化に抵抗する。現在のところ良好な利益を生み出している戦略を変えるなんて、正気か?そのため、新しい戦略や大胆なビジョンの実行に関する責任は運用会社のものとなる。将来のチャンスについて今日クライアントを教育することは、明日勝つための鍵となる。これまで儲かってきたやり方を変えたいと思うのであれば、投資委員会はその信念について確信を持つ必要がある。現職者の過去の業績がすばらしければ、決まったコースを変えて危険を冒すことはさらに難しくなるだろう。体質的に変化に抵抗があり、しがらみにとらわれるという欠点を持つクライアントという難題は、運用会社に制約を与える。実績のない運用会社、特にまだあまり名を確立しておらず自社の名声をこれから得ようという会社は、一般的に長期のクライアントを持っていないため、こうした障害に遭わない。長期にわたる成功のしがらみと闘わなくていいので、彼らは、価値を生み出すために新たな、もしくは伝統に捉われないアプローチを自由に探索できる。動きの遅い運用会社にとっては、満足しているクライアントが、長い目で見た時に自社の利益に反する逆風となることさえあるのだ。

4. タイミングがすべて

資産運用業界は、ある時点で優勢だったり劣勢だったりという会社であふれている。CIO達は、自分達を採用したアセットオーナーに対してより効果的に貢献するためには、タイミングに関して可能な限り情報通で優れた見識を持つよう努力するべきだ。最も革新的なアイディアがどこにあるのか、そしてそういったアイディアにどのように資本を投下するかを誰よりも早く明らかにするために、彼らには、いわば未来を占う能力が必要だ。業績の良い運用会社はもしかしたら、そうとは見えないが衰退の途をたどっているかもしれない。なぜなら、彼らは自分達のポテンシャルを認識し、その成功を維持しようと努力をするものの、そのエネルギーを外部ではなく内部に向けているからだ。変化とチャンスが生まれるのは外部だというのに。

クライアントに対して最善の投資戦略を立てる時、CIO達は定性的で将来を見越した評価を行うべきだ。実績のない運用会社の中に、新たな視点をもたらす戦略を提供する競争上の優位性が見つかるかもしれない。もしもあるCIOが、陰りのみえる優良投資先を、勢いのある実績のない投資先に入れ替える判断が遅すぎると、その先にある好機に資本を投下するのに間に合わないかもしれない。この競争の激しい業界において、「最も新しく最良のもの」に関するニュースはあっという間に広がる。タイミングが鍵なのだ。あまり知られていない会社によって提示される、試合の流れを変えるような機会を、強い信念を持たないCIOは見落としてしまうかもしれない。有名な投資家であるジェームズ・ゴールドスミスの言葉を借りると、「流行が見えてからでは遅すぎる。」

5. 進化するテクノロジーとAI

資産運用業界はテクノロジー実験の新たな時代にさしかかっている。勝ち組と負け組が出てくるし、AIのような現代のテクノロジーが破壊をもたらすことも普通となるだろう。フィンテックは業界に大改革をもたらし、特に今は実績がなくても、効率的で現代テクノロジーに精通している運用会社をいつでも新たな分野や関連事業に飛び込ませる構えだ。CIO達はますます、ブロックチェーンのようなテクノロジーが将来の業界にどのように影響するかに対する理解を試されるだろう。AIおよびオートメーションは、着実に実際の人間がやる仕事を行っており、それはつまり、労働集約的なプロダクトやサービスそして古びたオペレーションによって業績をあげてきた運用会社は特に変化に弱いということを意味している。

この切迫した雰囲気によって、新たな、そして実力が未知数の運用会社は、代わりの情報源を捜し求め、価値を生み出す新しい方法でテクノロジーを適用しようとする。実績のない運用会社は新しいテクノロジーを使って名声をつかむことができるかもしれない。なぜならデジタル時代では誰でも情報とリソースへアクセスできるようになったからだ。資産運用の歴史は私達に、この業界の未来は予測できないところからやってくるということを教えてくれる。資産運用残高や特定の戦略で運用した時間の長さといった、過去の成功に対する評価は、時折、将来の成功の予測を見誤らせることがある。アクティブ運用で他社をしのぐ業績を上げるためには、CIO達は、新しく革新的な戦略と思考をもたらす、実績のない運用会社をあらためて検討する必要がある。資産運用業界におけるデジタル変革は既に進行中で、急速に進化している。

最後になったが、よく知っていて居心地のいいものを求めるのが人間というものだ。業績の優れた会社のブランド名や評判は、心強く目に見えない安心感をもたらすかもしれない。これと競争するためには、実績のない運用会社は、老舗の競合他社から自社を差別化できるような先見の明のある戦略を提示しなければならない。こういった生存競争が、革新と変化を推進する。そして、こういった生存本能こそは、現在成功している企業がその財産があるがゆえに失ってしまうものなのかもしれない。

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Fabio Takaki | 19 12 2019

影響力を持つ女性たちには企業、業界、さらには国家を変革する力があります。マーサーのレポート「When Women Thrive Business Thrive ~女性が活躍するとき、企業も持続的に成長する~[T.M.1] 」によると、女性がリーダーとして働き生活している地域では、教育、健康、地域開発プログラムへの貢献度が高くなるとされています。 女性のリーダーが企業や地域社会にポジティブな影響を与えるにも関わらず、世界の大手金融機関のリーダーに女性は少ないのが現状です。また、女性たちは投資対象となる企業の経営陣にも低いウエイトでしか存在しません。オリバー・ワイマンの新しい報告書[T.M.2] (MMCグループ企業の一部) によると、世界の金融機関では経営幹部の20%、取締役会の23%を女性が占めていますが、CEOはわずか6%に留まっています。 しかし、伝統的に女性の昇進が最も難しいとされていた地域の1つの中東において、金融業界の経営幹部に女性が徐々に登用され始めています1。中東の金融業界で女性が地位を確保し地域社会や他の業界に波及していくにつれ、世界の経営者たちはこの動きに注力する必要があるでしょう。 中東の金融業界で活躍する女性の経営幹部 中東の金融業界ではますます多くの女性が、銀行、投資会社、金融、法律、コンサルティング関係の会社の経営幹部を務めています1。たとえば、2018年9月、ローラ・アブ・マネ (Rola Abu Manneh) 氏はスタンダードチャータードUAEのCEOに指名され、UAE初の女性頭取になりました。UAEの銀行業界で長年の経験を持つアブ・マネ氏は、重要案件を銀行に持ち込むナレッジとリーダーシップ力を発揮しています。マネ氏は、CEOに就任した最初の年に、ドバイに拠点を置くエマール・プロパティーズに対し、ホテルをアブダビナショナルホテルに売却するよう提言しました2。 もう一つ例を挙げるとすると、サウジアラビア最大の商業銀行、サンバ・フィナンシャル・グループ初の女性CEOのラニア・ナシャール (Rania Nashar) 氏です。商業銀行セクターで20年以上の経験を持つナシャール氏は、2017年にCEOに指名され、サウジアラビアの上場銀行初の女性CEOとなりました3。また、この瞬間をもってサウジアラビアKSAのビジョン2030の一環として男女平等を促進する改革が始まっており、ナシャール氏はこれを継続させたいと述べています。 「サンバ銀行ほどの規模の銀行でも女性CEOが指揮を執ることができ、史上最高の業績を上げられることを実証するだけでなく、サウジアラビアや世界のすべての女性のために示したいです」とナシャール氏は語り、付け加えました。「サウジの女性たちが誇れるお手本になりたいと思います」4 ルブナ・オラヤン (Lubna Olayan) 氏も、サウジアラビアの有力なリーダーの一人です。彼女は30年以上にわたって、湾岸地域でオラヤングループの貿易、不動産、投資、消費、産業関連の業務を行う持株会社オラヤン・ファイナンシング・カンパニーのCEOを務めました。また、タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」、フォーチュン誌の「世界で最も有力な女性」への選出を含め、多数の賞を受賞し、女性の経済的権利の擁護者として評価されています5。 リーダーシップに重要なジェンダー平等 こうした女性のリーダーたちは、地域の金融業界の男女平等の推進と変革に貢献しています。進歩はしているものの、課題は山積みと言えるでしょう。政府はジェンダーの均等を促進するための取り組みを行っていますが、経営者たちのマインドセットを変え、バイアスを克服するには時間がかかります。 しかし、それは追求する価値のあるプロセスです。人手不足に直面している組織や国家にとって、女性の人材を活用することにより、競争、成長、成功のための戦略的な機会が提供され、経済全体の変革も促進されます。 マーサーのレポート「When Women Thrive Business Thrive ~女性が活躍するとき、企業も持続的に成長する~」によると、女性は供給者、育児・介護者、意思決定者、消費者として重要な役割を担っており、将来の世代の教育と健康、そして地域社会の発展に貢献しているとされています。女性幹部は、結束力の強いチームを作り、人材の維持、スキル開発、育成を行い、多様で新しい視点を組織にもたらす上でも寄与します。 実際、マーサーの調査は女性幹部の登用の増加が、地域社会や国家における経済的および社会的発展に影響を与えることも示唆しています。エコノミストは、男女の雇用格差を是正することで国内総生産を米国で5%、日本で9%、アラブ首長国連邦で12%、ヨーロッパで34%大幅に向上させることができると算出しています。 女性比率の低い領域におけるジェンダー平等の実現 女性の人材を獲得し、意欲的に働いてもらうための適切なアプローチは、それぞれの企業の風土や必要性によって異なるとはいえ、世界的にも有効と考えられる戦略がいくつか存在します。マーサーの調査によると、ジェンダーの多様性を実現するために必要な要素として、健康、経済的な安定、人材の適切なマネジメントが挙げられています。 1.健康 女性にとって健康は特に重要です。女性特有の健康問題や病気の影響があり、男性とは異なる方法で医療制度を利用することがあるためです。 たとえば、女性の罹患率が高い精神衛生上のリスクは、女性の生産性に大きな影響を与えています。単極性うつ病は、仕事上の障害の主な要因となっており、男性より女性の方が約2倍多いと言われています6。 ビジネスにおけるジェンダー平等を実現するには、企業は次のような分野で、女性が最も必要とする方法でヘルスケアを提供する必要があります。 1.     フレキシブルな産休 2.     身体的健康、ウェルネス、メンタルヘルスのサポート 3.     医療リソースへの自由度のあるアクセス 4.     厳しいライフイベントにおける精神的支援 5.     女性専用の医療サポート 2.経済的な安定 女性の抱える経済的責任や経済的ストレスは、男性よりも大きいことが報告されています。プルデンシャルが実施した2018年の調査によると、平均的な女性は、平均的な男性と比較して、退職後の貯蓄が少ないことも明らかになっています。退職後に備えて貯金をしていた女性はわずか54%で、その額は平均115,412ドルです。対照的に、退職後に備えて貯金をしていた男性は61%で、その額は平均202,859ドルでした。女性が退職後に貧困に陥る可能性が大幅に高く、女性の平均余命を短くすることにもつながることを示しています7。 この問題に対応すべく、組織は女性が公正な報酬を受けられるようにすること、将来のお金[T.M.3] の計画についてコーチングや教育支援を強化すること、女性向けに退職オプションを調整すること、貯蓄・退職口座への体系的かつ定期的な積み立てを奨励することを確実に行っていく必要があります。 3.人材の適切なマネジメント 女性には、トレーニングとスキル開発の機会だけでなく、昇進の機会に加え仕事以外の重要な役割を果たすための柔軟な勤務体系も必要です。 経営レベルでの男女共同参画をさらに改善するために、管理職に対する取り組みは欠かせません。しかし通常、管理職は長時間勤務が必要となり、チームやクライアント、上層部の管理能力も求められます。そうした地位の女性たちにとっては出産期と重なる可能性があり、企業がテクノロジーの活用、育児支援、女性向けメンタリングおよび経営支援、ビジネスリソースグループ、多様性および一体性プログラム、トレーニングなど、適切な働き方を提供しなければさらに困難になります。 女性の人材がビジネスに貢献し、事業拡大をもたらす力となりうることに疑いの余地はありません。金融機関と政府が優秀な女性を労働者また経営者[T.M.4] として登用するために求められる戦略に注力することにより、ポジティブな成果が表れてくるでしょう。影響力を持つ女性たちは、ビジネスの洞察力を生かし組織の成長を促すだけでなく、社会における女性の役割が教育やコミュニティを大きく改善し、ひいては国家の変革を可能にします。 出典: 1. 1. "The 50 Most Influential Women in Middle East Finance," Financial News, 29 Apr. 2019, https://www.fnlondon.com/articles/the-50-most-influential-women-in-middle-east-finance-20190429. 2. "FN 50 Middle East Women 2019," Financial News, 2019, https://lists.fnlondon.com/fn50/women_in_finance_/2019/?mod=lists-profile. 3. "Rania Nashar," Forbes, 2018, https://www.forbes.com/profile/rania-nashar/#20d8136e473c. 4. Masige, Sharon."Raising the Bar:Rania Nashar," The CEO Magazine, 27 Jun. 2019, https://www.theceomagazine.com/executive-interviews/finance-banking/rania-nashar/ 5. "Lubna Olayan Retires as CEO of Olayan Financing Co.; Jonathan Franklin Named New CEO," Olayan, 29 Apr. 2019, https://olayan.com/lubna-olayan-retires-ceo-olayan-financing-co-jonathan-franklin-named-new-ceo。 6. "Gender and Women's Mental Health:The Facts," World Health Organization, https://www.who.int/mental_health/prevention/genderwomen/en/#:~:targetText=Unipolar%20depression%2C%20predicted%20to%20be,persistent%20in%20women%20than%20men。 7. "The Cut:Exploring Financial Wellness Within Diverse Populations," Prudential, 2018, http://news.prudential.com/content/1209/files/PrudentialTheCutExploringFinancialWellnessWithinDiversePopulations.pdf.

Varun Khosla | 03 10 2019

何十年にもわたり、スタートアップ企業やその役員報酬というと、シリコンバレーやテクノロジーの第一人者が多数働く、次世代のユニコーン企業を目指す 10 億ドル規模のイノベーティブな会社やその最先端のオフィスビルのイメージで語られてきました。しかし、近年、グローバルスタートアップ企業はこれまで予想もしなかった地域で成長しています。 最近の調査によると、8 億 9,300 万ドルが中東および北アフリカのスタートアップ企業 366 社に投資されています。スタートアップ企業への投資額は 2017 年に比べ 2 億 1400 万ドル増加し、6 億 6900 万ドルとなりました。1 また、東南アジアにおいても、海外 (ほとんどの場合シリコンバレーなどの欧米) で学び、地元に戻った「ウミガメ」と呼ばれる人々によって、スタートアップ企業の立ち上げが相次いでいます。この地域では重要な転換点を迎えており、東南アジアの VC 投資家は 327 ディール、 78 億ドル超を投資しています。2 すべてのスタートアップ企業で必要不可欠な要素、それはリーダーシップです。しかし、幹部クラスの人材と経営陣を確保・維持することは、成長中のスタートアップ企業にとって、特に報酬面では大きな課題となるかもしれません。 役員報酬を変える機関投資家 世界的に有名なスタートアップ企業の多くは、ジェフ・ベゾス、ジャック・マー、マーク・ザッカーバーグなど、カリスマ的な創業者によって立ち上げられました。しかし、これらの有名人や成功物語は、世界中に花開くスタートアップ企業の新しい時代の幕開けを反映しているものではありません。 たとえば、中東・北アフリカ (MENA) では、投資会社がスタートアップ企業の立ち上げに必要な初期の資金援助を行っています。これらの投資会社は、スタートアップ企業の立ち上げ時から資金繰りを支援しています。さらに、これらのスタートアップ企業の経営幹部は創立者ではないため、ロイヤリティや創造性、コミットメントを維持するために異なる報酬モデルを望んでいます。 C-レベルの優秀な人材を獲得するのは、実績がほとんどない、あるいは全くないスタートアップ企業にとってはリスクが高いため、非常に困難と言えるかもしれません。従来、欧米のスタートアップ企業は成長予測を前提とした中長期的なベンチマークを中心に役員報酬パッケージを策定してきましたが、成長モデル、投資戦略、役員報酬の三角化は複雑で厳しい課題となることがあります。 現在、世界的なスタートアップ企業はほとんどの場合、インスピレーションに富む創業者ではなく、投資会社が中心となって設立されているため、会社は経営陣、いわば成功と失敗の分かれ道となり得る人々に払う報酬を決定する際は入念に検討する必要があります。 役員報酬はいくらにすべきか? 当然のことながら投資会社は収益の最大化を望みます。つまり、スタートアップ企業にはできるだけ多くの純資産や株式を保持しておきたいと考えます。スタートアップ企業の役員に支払われる金額 、株、またはオプションはすべて投資会社が運用コストとして支払う費用になります。ただし、スタートアップ企業の役員に低い報酬を提示したり、スキルや経験のない人材を雇ったりすると、企業の競争力、成長力、収益力が損なわれるリスクもあります。 経営陣に潜在的な株式を提供する財務的な取り決め (シャドウエクイティともいう) は、慎重に考慮し検討する必要があります。役員報酬プランは、スタートアップ企業の報酬のインセンティブと経営者を維持する制度として機能させる一方、企業に資金を提供した投資家や株主に適正なリターンを提供するものにしなければなりません。投資家と株主は、経営陣に適切なエクイティ・プールを提供するために、どの程度の株式希薄化を受け入れることができるかを決める必要があります。 このため、多くの企業では、企業価値の増加に対応して資金調達の各投資ラウンドでエクイティ・プールのサイズを縮小する段階的アプローチの実行が決定されます。このタイプのプログラムにより株式希薄化を緩和し、特に製薬業界やフィンテック業界など、熟練した専門家や経営者の才覚や知識を必要とする、先進的なスタートアップ企業を扱う際に創造的な報酬戦略を策定することができます。 投資会社は、一定のタイミングと価格で株式を売買する権利を付与する株式オプション、または会社の実際の所有権を付与する普通株式のいずれかを従業員に提供することがあります。いずれも株式を希薄化しますが、オプションでは通常、普通株式よりも希薄化の効果が高くなります。たとえば、オプションで構成されるエクイティ・プールは、会社資本の 15 ~ 20% に達することがありますが、普通株で構成されるプールではわずか 3 ~ 5% に過ぎません。これは、長期インセンティブ報奨について、同額をオプションで支払うと、普通株の付与と比べて株式の希薄化効果が高まることを示しています。投資会社は、目的に対してどの戦略が最も適しているかを判断する必要があります。 役員および経営幹部に支払うタイミング 投資家が役員や経営幹部に支払うのは、投資回収の後にすべきでしょうか?それとも、業績は多くの場合、制御不能な外部の経済要因に左右されるため、経営者報酬は業績ではなく、従業員として能力を最大限に発揮して仕事を遂行したかどうかに基づいて支払うべきでしょうか。 多くのスタートアップ企業では、投資回収のベンチマークが経営幹部をやる気にさせ、株主価値を生み出すために最善を尽くす追加のインセンティブになると考え、前者の戦略を実行しています。実際、多くのケースで長期インセンティブプランは投資家がリターンを受け取った時にのみ支払われています。あるいは、一部のスタートアップ企業は、相互に合意した特定の企業の目標や目的に基づく役員や経営幹部に対する報酬を選択しています。報酬は現金や株式で提供されますが、株式の売却または付与のタイミングが制限されたり、オプションや普通株の形式で付与されたりもします。 世界中でスタートアップ企業が出現し、アイデアやイノベーション、そして次世代における未来のユニコーンを生み出す投資家や経営幹部が登場してきました。これらのスタートアップ企業の経営幹部を担う役員報酬の支払方法について新たなトレンドが続く中、グローバルスタートアップ企業は投資家の利益を最大化しつつ優秀な経営幹部を確保する選択肢を慎重に検討する必要があります。 出典: · "2018 MENA Venture Investment Summary." MAGNiTT, January 2019, https://magnitt.com/research/2018-mena-venture-investment-summary. · Maulia, Erwida. "Southeast Asian 'turtles' return home to hatch tech startups." Nikkei Asian Review, 22 May 2019, https://asia.nikkei.com/Spotlight/Cover-Story/Southeast-Asian-turtles-return-home-to-hatch-tech-startups.  

ラテンアメリカ、中東、アフリカ、アジアは経済成長と人口動態、投資市場、規制の変化を背景に、世界で最もエキサイティングな市場の一つとなっています。 「マーサーの成長市場におけるアセットアロケーション動向調査: 進化する状況レポートでは、そのうち 14 の市場の年金基金について現在の投資ポジションおよび過去 5 年間の変化を調査しました。この調査には、南半球と東半球の市場全体で約 5 兆ドルの年金基金が含まれています。 世界銀行によると、これらの地域の経済によって世界の成長の約 70% がもたらされるため、資産の所有者、管理者、投資家に対して新たな投資機会が提供されています。消費と貯蓄のさまざまなパターンを生み出す中産階級の急速な拡大も見られ、さらに、世界の機関投資家の上位 50 社のうち半数がこれらの市場に本拠を定めています。1 ますます堅調になりつつある世界の投資環境 ラテンアメリカ、中東、アフリカ、アジアの経済規模は大きく、成長していて、個人が保有する富の割合が増えているため、世界中の投資家にとって特に注目の的となっています。これらの市場はまた、外国人投資家にますます門戸を開いています。同時に、これらの地域における規制の変更により、国内投資家の選択肢が広がり、自国の市場外で投資できるようになっています。その結果、投資環境はオープンで安定したものになっており、世界中の投資家にはますます機会の扉が開かれています。 これらの地域の年金基金制度も改革が進行中で、西欧諸国と同じく退職貯蓄については個人の責任が増大する傾向が見られます。全体的に見て、企業と政府が運営する制度の両方で確定給付 (DB) から確定拠出 (DC) に移行しつつあります。これらの変化により、将来の貯蓄ニーズを満たし、制度への信頼を担保するために効果的な投資ソリューションを提供する必要性が際立っています。 投資家による 3 種類の対応方法 投資家やプランマネージャーは、変化する環境に 3 種類の主な方法で対応しています。 1. 株式に投資する投資家が増加しています。過去 5 年間で、自己資本配分率は 32% から 40% へと約 8% 増加しました。多くの地域の投資家がポートフォリオの期待収益率を高めようとしてこのようなシフトが見られています。競争激化した低リターンの投資環境の中で、世界中の投資家が問題に直面しています。ポートフォリオミックスに株式を追加すると、長期的にリターンの向上が期待できるはずです。   2. 市場の自由化によりポートフォリオの多様化が可能になり、国内資産の代わりに外国資産へのエクスポージャーが高まっています。年金基金における海外エクスポージャーは、過去 5 年間平均で全株式ポートフォリオの 45% から 49% に増加しました。投資家は地理的な多様性を求めていますが、特にコロンビア、日本、韓国、マレーシア、台湾で伺えます。ブラジル、コロンビア、ペルー、南アフリカなどのいくつかの国でも、法律の最近の変更により、現在では外国資産へのエクスポージャーが増加しています。最近では日本政府の年金基金が国内株式を犠牲にして、外国株式に移行しています。 外国債券へのシフトも見られており、外国資産への配分は 16% から 23% に上昇しました。これは国内債券の金利が低いこと大きなやポートフォリオ多様化機会の追求によるものです。ただし、ホームバイアスが残っていますが、規制の変更により、幅広いグローバル投資が支えられるため、このトレンドは続くと予想されます。   3. 投資家のオルタナティブ投資に対する関心が若干高まっています。オルタナティブ投資をポートフォリオに組み入れる投資家が増加しており、マーサーではこのトレンドが継続すると予想しています。代替アセットアロケーションの詳細を公開した投資家のうち、平均配分の 70% 超が不動産とインフラに、約 20% が非公開企業の株式に投資されていました。規制の変更により、一部の分野では投資家にとって代替投資の魅力が増しています。たとえば、チリでは 2017 年に投資制度の改革案が可決され、具体的な制限はポートフォリオによって異なるものの、年金基金の運用者は最大 10% をオルタナティブ案件に投資できるようになりました。この改革の主な目的は、利益を上げて、最終的に年金収入を増やすことにあります。投資家がポートフォリオを多様化し、リターンの向上を追求する中で、代替投資のエクスポージャーは長期的に増大することが予想されます。 投資家の皆様におかれましては、当社レポートの調査結果を、ポートフォリオを見直し、投資リターンの向上のために改善できるアセットアロケーションの分野について調べる機会としてご活用いただければ幸いです。 詳細については、こちらのレポートをダウンロードしてください。 出典: "Top 1,000 Global Institutional Investors." Investment & Pensions Europe, 2016. https://www.ipe.com/Uploads/y/d/w/TOP-1000-Global.pdf.

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Pat Milligan | 19 12 2019

平均寿命はここ数十年で急激に延びています。1960年には平均53歳に満たなかったのが、2017年には72歳となりました。高所得国では、平均寿命は80歳に届こうとしています。1 世界中で平均寿命と労働寿命が延びているため、就労生活における3大ステージ、すなわち「就学」、「就業」、「退職」に沿ったキャリアモデルにこだわる人は少なくなりつつあります。これに代わって広がりを見せているのがマルチステージという形です。一個人が正社員となり退社した後、パートタイムで働いたり、ギグエコノミーに参加したり、熟年期になって新しいことを学んだり資格を取得したりするスタイルです。 企業は、従業員の労働寿命が長くなり退職年齢が上がっている、この新たな現実に合わせてモデルや慣行、ポリシーなどを進化させていかなければなりません。労働寿命を延ばして高齢に至るまで生産性を維持するべく、「高齢化に備える」必要があります。これを怠れば、拡大しつつあるこの層から得られる利益を失うことになるでしょう。 また、こうした従業員が年齢差別を受けないように配慮することも大切です。雇用の平等に対する取り組み、そして徹底したダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(一体性)の戦略を採用している組織でも見過ごされがちなものです。 世界の人材、熟練社員 マーサーが発表したレポート「Next Stage:高齢化への備えはできていますか?」によると、平均寿命と労働寿命は世界中で延びているものの、アジア太平洋地域が最も熟練社員の増加の影響を受けています。 同レポートでは、2015年から2030年の間に65歳以上の人口が2億人を上回ると推計しています。日本は世界初の「超超高齢(ultra-aged)」社会を迎えつつあり、65歳以上が人口の28%を上回るようになります。香港、韓国、台湾が後に続いて「超高齢(super-aged)」社会を迎え、人口の21%以上が近く65歳以上になろうとしているのです。 平均寿命が延びていることから、高齢な従業員は難しい判断に迫られています。多くの人は新しいスキルを学びたい、他の人とつながっていたい、あるいは社会に貢献したいという動機で仕事をしています。しかし、そのような選択肢を持たない高齢な労働者も存在します。延びた寿命の生活資金を賄うためだけに働き続ける人たちです。 老後は出費がかさむこと、年金制度が脆弱化していること、所得格差を背景とした貯蓄不足、低金利などの要因により、かつては退職年齢の迫った社員が当たり前に享受していた安心感が揺らいでいます。継続雇用を望むベテラン社員の存在は、企業や若手従業員にとってかつてない課題であるとともに、機会でもあります。 先入観と偏見を取り除く 世界中の職場において、従業員の人種や性的指向、性別に関わる差別をなくす取り組みは大幅に進歩しているものの、年齢差別については見過ごされがちです。 熟練社員に対する誤解のうち、とりわけ根強く有害なものをマーサーのNext Stageレポートより紹介します。 1.     誤解: 「熟練社員は生産性が低い」 事実:加齢とともに仕事のパフォーマンスが低下するという思い込みが誤解であると証明する研究が多く存在します。 2.     誤解:「熟練社員は新たなスキルやテクノロジーを習得するのが困難」 事実:ここで障害となっているのは、高齢な従業員は新たなスキルの習得が困難ということではなく、往々にして特定のスキルや知識を向上させるために必要なトレーニングを受けていないということです。熟練社員を含む労働者のうち、85%がキャリア開発の可能性を高めるためにスキル開発の機会と技術的なトレーニングを積極的に求めているという研究があります。 3.     誤解:「熟練社員は多くの国で人件費がかさむ」 事実:年齢(と責務)が増すにつれて賃金が上昇する可能性はあるものの、離職率が少ないなど、別の面で雇用者のコストを大幅に削減することもできます。マーサーのデータでは、労働者の年齢が上がる中で、同レベルの役職の賃金に一定の低下が見られます。 熟練した労働者の生産性、学習意欲および能力、雇用者の支出に切り込んだマーサーの調査と分析では、ベテラン社員と若手社員の間に繊細で複雑な関係があることが明らかになっています。高齢な従業員の生産性が低かった事例においても、個人のパフォーマンスに焦点が当てられる一方、メンタリングやトレーニング、指導に充てた時間など、重要な要素が考慮されていませんでした。 熟練社員の価値を高める 企業は、円熟した従業員の才能やスキル、潜在能力を活用することを学ぶ必要があります。マーサーの「2019年グローバル人材動向調査」は、現代のテクノロジーを企業の人事システムに統合することで、ベテラン社員に有益なツールを提供し、価値ある新たなスキルを教えることができるとしています。これらのテクノロジーでは、専門的な学習機能と予測型のソフトウェアアルゴリズムを利用し、精選(キュレーション)されたキャリア開発パスを提供します。 企業の学習プラットフォームでは、特定のキャリア目標に関係するコンテンツを集めたりスキルギャップを埋めたり、また専門知識を共有する同僚とのネットワーク作りにも活用できます。キュレーション学習プログラムでは、従業員が自分のペースでスキルを開発し、個人的なキャリア目標のベンチマークに基づいて資格を取得することも可能です。 また、企業の多くは熟練社員の価値と貢献を正確に評価できていません。そのために高齢な従業員の職業能力開発の機会が制限されているのが現状です。マーサーのNext Stageレポートでは、熟練した労働者は、長年の実務経験から得た深い知識、事業に関連する社会資本、技術またはコンテンツの専門知識を通じて、組織のパフォーマンスに大きく貢献できるとしています。 また、傾聴やコミュニケーション、コラボレーション、チームビルディングなどの重要なソフトスキルは、一般的に軽視されがちです。業績評価や昇進の可能性、報酬など、一般的なパフォーマンス指標に頼る企業では、ベテラン社員の貢献を過小評価し、活用機会を逃してしまいかねません。 熟練社員の価値と可能性を最大限に高めることにより、雇用主はこれらの従業員の経験や知識、人生経験を活用する職業能力開発の機会を新たに創出できます。年齢は知恵を育みます。エンパワーメントによって活用された熟練社員は、過去の貴重な経験を道標にしつつ、企業を明るい未来に導いていけるはずです。 出典: 1. "Life expectancy at birth, total (years)." The World Bank, 2017, https://data.worldbank.org/indicator/sp.dyn.le00.in

Fabio Takaki | 19 12 2019

影響力を持つ女性たちには企業、業界、さらには国家を変革する力があります。マーサーのレポート「When Women Thrive Business Thrive ~女性が活躍するとき、企業も持続的に成長する~[T.M.1] 」によると、女性がリーダーとして働き生活している地域では、教育、健康、地域開発プログラムへの貢献度が高くなるとされています。 女性のリーダーが企業や地域社会にポジティブな影響を与えるにも関わらず、世界の大手金融機関のリーダーに女性は少ないのが現状です。また、女性たちは投資対象となる企業の経営陣にも低いウエイトでしか存在しません。オリバー・ワイマンの新しい報告書[T.M.2] (MMCグループ企業の一部) によると、世界の金融機関では経営幹部の20%、取締役会の23%を女性が占めていますが、CEOはわずか6%に留まっています。 しかし、伝統的に女性の昇進が最も難しいとされていた地域の1つの中東において、金融業界の経営幹部に女性が徐々に登用され始めています1。中東の金融業界で女性が地位を確保し地域社会や他の業界に波及していくにつれ、世界の経営者たちはこの動きに注力する必要があるでしょう。 中東の金融業界で活躍する女性の経営幹部 中東の金融業界ではますます多くの女性が、銀行、投資会社、金融、法律、コンサルティング関係の会社の経営幹部を務めています1。たとえば、2018年9月、ローラ・アブ・マネ (Rola Abu Manneh) 氏はスタンダードチャータードUAEのCEOに指名され、UAE初の女性頭取になりました。UAEの銀行業界で長年の経験を持つアブ・マネ氏は、重要案件を銀行に持ち込むナレッジとリーダーシップ力を発揮しています。マネ氏は、CEOに就任した最初の年に、ドバイに拠点を置くエマール・プロパティーズに対し、ホテルをアブダビナショナルホテルに売却するよう提言しました2。 もう一つ例を挙げるとすると、サウジアラビア最大の商業銀行、サンバ・フィナンシャル・グループ初の女性CEOのラニア・ナシャール (Rania Nashar) 氏です。商業銀行セクターで20年以上の経験を持つナシャール氏は、2017年にCEOに指名され、サウジアラビアの上場銀行初の女性CEOとなりました3。また、この瞬間をもってサウジアラビアKSAのビジョン2030の一環として男女平等を促進する改革が始まっており、ナシャール氏はこれを継続させたいと述べています。 「サンバ銀行ほどの規模の銀行でも女性CEOが指揮を執ることができ、史上最高の業績を上げられることを実証するだけでなく、サウジアラビアや世界のすべての女性のために示したいです」とナシャール氏は語り、付け加えました。「サウジの女性たちが誇れるお手本になりたいと思います」4 ルブナ・オラヤン (Lubna Olayan) 氏も、サウジアラビアの有力なリーダーの一人です。彼女は30年以上にわたって、湾岸地域でオラヤングループの貿易、不動産、投資、消費、産業関連の業務を行う持株会社オラヤン・ファイナンシング・カンパニーのCEOを務めました。また、タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」、フォーチュン誌の「世界で最も有力な女性」への選出を含め、多数の賞を受賞し、女性の経済的権利の擁護者として評価されています5。 リーダーシップに重要なジェンダー平等 こうした女性のリーダーたちは、地域の金融業界の男女平等の推進と変革に貢献しています。進歩はしているものの、課題は山積みと言えるでしょう。政府はジェンダーの均等を促進するための取り組みを行っていますが、経営者たちのマインドセットを変え、バイアスを克服するには時間がかかります。 しかし、それは追求する価値のあるプロセスです。人手不足に直面している組織や国家にとって、女性の人材を活用することにより、競争、成長、成功のための戦略的な機会が提供され、経済全体の変革も促進されます。 マーサーのレポート「When Women Thrive Business Thrive ~女性が活躍するとき、企業も持続的に成長する~」によると、女性は供給者、育児・介護者、意思決定者、消費者として重要な役割を担っており、将来の世代の教育と健康、そして地域社会の発展に貢献しているとされています。女性幹部は、結束力の強いチームを作り、人材の維持、スキル開発、育成を行い、多様で新しい視点を組織にもたらす上でも寄与します。 実際、マーサーの調査は女性幹部の登用の増加が、地域社会や国家における経済的および社会的発展に影響を与えることも示唆しています。エコノミストは、男女の雇用格差を是正することで国内総生産を米国で5%、日本で9%、アラブ首長国連邦で12%、ヨーロッパで34%大幅に向上させることができると算出しています。 女性比率の低い領域におけるジェンダー平等の実現 女性の人材を獲得し、意欲的に働いてもらうための適切なアプローチは、それぞれの企業の風土や必要性によって異なるとはいえ、世界的にも有効と考えられる戦略がいくつか存在します。マーサーの調査によると、ジェンダーの多様性を実現するために必要な要素として、健康、経済的な安定、人材の適切なマネジメントが挙げられています。 1.健康 女性にとって健康は特に重要です。女性特有の健康問題や病気の影響があり、男性とは異なる方法で医療制度を利用することがあるためです。 たとえば、女性の罹患率が高い精神衛生上のリスクは、女性の生産性に大きな影響を与えています。単極性うつ病は、仕事上の障害の主な要因となっており、男性より女性の方が約2倍多いと言われています6。 ビジネスにおけるジェンダー平等を実現するには、企業は次のような分野で、女性が最も必要とする方法でヘルスケアを提供する必要があります。 1.     フレキシブルな産休 2.     身体的健康、ウェルネス、メンタルヘルスのサポート 3.     医療リソースへの自由度のあるアクセス 4.     厳しいライフイベントにおける精神的支援 5.     女性専用の医療サポート 2.経済的な安定 女性の抱える経済的責任や経済的ストレスは、男性よりも大きいことが報告されています。プルデンシャルが実施した2018年の調査によると、平均的な女性は、平均的な男性と比較して、退職後の貯蓄が少ないことも明らかになっています。退職後に備えて貯金をしていた女性はわずか54%で、その額は平均115,412ドルです。対照的に、退職後に備えて貯金をしていた男性は61%で、その額は平均202,859ドルでした。女性が退職後に貧困に陥る可能性が大幅に高く、女性の平均余命を短くすることにもつながることを示しています7。 この問題に対応すべく、組織は女性が公正な報酬を受けられるようにすること、将来のお金[T.M.3] の計画についてコーチングや教育支援を強化すること、女性向けに退職オプションを調整すること、貯蓄・退職口座への体系的かつ定期的な積み立てを奨励することを確実に行っていく必要があります。 3.人材の適切なマネジメント 女性には、トレーニングとスキル開発の機会だけでなく、昇進の機会に加え仕事以外の重要な役割を果たすための柔軟な勤務体系も必要です。 経営レベルでの男女共同参画をさらに改善するために、管理職に対する取り組みは欠かせません。しかし通常、管理職は長時間勤務が必要となり、チームやクライアント、上層部の管理能力も求められます。そうした地位の女性たちにとっては出産期と重なる可能性があり、企業がテクノロジーの活用、育児支援、女性向けメンタリングおよび経営支援、ビジネスリソースグループ、多様性および一体性プログラム、トレーニングなど、適切な働き方を提供しなければさらに困難になります。 女性の人材がビジネスに貢献し、事業拡大をもたらす力となりうることに疑いの余地はありません。金融機関と政府が優秀な女性を労働者また経営者[T.M.4] として登用するために求められる戦略に注力することにより、ポジティブな成果が表れてくるでしょう。影響力を持つ女性たちは、ビジネスの洞察力を生かし組織の成長を促すだけでなく、社会における女性の役割が教育やコミュニティを大きく改善し、ひいては国家の変革を可能にします。 出典: 1. 1. "The 50 Most Influential Women in Middle East Finance," Financial News, 29 Apr. 2019, https://www.fnlondon.com/articles/the-50-most-influential-women-in-middle-east-finance-20190429. 2. "FN 50 Middle East Women 2019," Financial News, 2019, https://lists.fnlondon.com/fn50/women_in_finance_/2019/?mod=lists-profile. 3. "Rania Nashar," Forbes, 2018, https://www.forbes.com/profile/rania-nashar/#20d8136e473c. 4. Masige, Sharon."Raising the Bar:Rania Nashar," The CEO Magazine, 27 Jun. 2019, https://www.theceomagazine.com/executive-interviews/finance-banking/rania-nashar/ 5. "Lubna Olayan Retires as CEO of Olayan Financing Co.; Jonathan Franklin Named New CEO," Olayan, 29 Apr. 2019, https://olayan.com/lubna-olayan-retires-ceo-olayan-financing-co-jonathan-franklin-named-new-ceo。 6. "Gender and Women's Mental Health:The Facts," World Health Organization, https://www.who.int/mental_health/prevention/genderwomen/en/#:~:targetText=Unipolar%20depression%2C%20predicted%20to%20be,persistent%20in%20women%20than%20men。 7. "The Cut:Exploring Financial Wellness Within Diverse Populations," Prudential, 2018, http://news.prudential.com/content/1209/files/PrudentialTheCutExploringFinancialWellnessWithinDiversePopulations.pdf.

デジタルトランスフォーメーションと第 4 次産業革命により、プロフェッショナルとしての将来やキャリアに対する見方が急速に変化しています。人工知能 (AI)や機械学習、オートメーションはかつて安定していたキャリア形成や業界全体を不安に陥れました。世界経済は常に流動的な状態にあります。 テクノロジーの進歩により、従業員が自らキャリアを認識し管理する方法にも革命がもたらされています。マーサーの 2019 年グローバル人材動向調査では、高度で創造破壊的なテクノロジーの影響に対し、個々の従業員と企業が互いに協力しなければならないことが示されました。ラテンアメリカのキンバリークラークはこの事実を受け止め、マーサーと提携しデジタル時代の絶え間ない変化に対応するべく、画期的な専門能力開発アプローチを生み出しました。 このソリューションは、ワークフォース内の経験豊かなメンターと従業員に価値を与えるデジタルプラットフォームを組み合わせ、独自の道筋で専門能力の開発に励むことができるようにしたものです。 キャリアプラットフォーム キンバリークラーク社は、会社の従業員と企業経営にインパクトをもたらす創造破壊、いわゆるイノベーションからポジティブな成果を引き出すという課題を提示しました。そこでマーサーが 150 名の従業員を対象にアンケートを行ったところ、驚くべき発見がありました。従業員の 5 人のうち 4 人が自身のキャリアについてはっきりした意見がなく、明確な方向性を見出すためのサポートが必要と答えたのです。 これらの回答を踏まえ、手探りで進む時代に未知の世界への不安を抱く従業員の仕事の満足度とキャリアの安定性を高めるデジタルメカニズムを構築しました。結果として完成したのが「キャリアプラットフォーム」です。 キンバリークラークには、ビジネス環境の再構築が進み、人々が大きな力に翻弄されているように感じているタイミングでこそ、キャリアアップを図る方法を従業員に示したいという想いがありました。これを受けてマーサーはさらに調査を進め、従業員が何を感じているのか、そしてそれはなぜなのか、真に理解するために可能な限り多くの情報を収集し、調査結果から引き出されたプログラムで 4 つのスプリントに辿り着きました。 1.     情報の収集 2.     コンテンツの強化 3.     適用の合理化 4.     すべての検証 驚くべき結果として、これらは従業員と会社にとって独自のキャリアを認識する上で不可欠なものとなりました。マーサーはアジャイル開発手法のスプリントを導入することで、キンバリークラークの既存の組織構造内でプラットフォームとプロセスをシームレスに開発し、反復しました。 キンバリークラークは、この創造的なアプローチを重要な差別化要因としてとらえ、今後マーサーが柔軟で順応性のあるパートナーになると考えました。それぞれのアジャイルスプリントでは、明確な目標を掲げ従業員とステイクホルダーのブレインストーミングと面談から詳細なロードマップまで作成し、従業員にとって魅力ある直感的なインタフェースをデザインしました。マーサーは キンバリークラークのあらゆる層の従業員と緊密に連携し、スプリントとタイムラインの管理から最終的にデジタル・キャリア・プレイブックと専門能力開発ツールとアセットを提供、従業員が独自のキャリアパス戦略を立案できるようにしました。 キャリアプラットフォームには、一群のカスタマイズされたツールと機能を備え、人間の知恵の価値とデジタル管理の洞察と機能が結集しています。キンバリークラークの経験豊富なメンターによるアドバイスを従業員一人ひとりに提供することによって、自身の個人的な目標や情報に基づいた意思決定を行い、専門能力開発の選択を行うことができます。これにより従業員は継続的な教育に対するプロアクティブなアプローチでキャリアを向上させ、キャリアパスや仕事の経験を選択することができます。 従業員がプラットフォームを活用して自分の関心や才能、スキルに基づいた決断をする際にアドバイスを受け、常にテクノロジーによるイノベーションが発展する中、自信をもって働くことができるようになります。 透明性による自己決定権 透明性は、従業員の福利厚生や生産性に責任を持つ経営幹部のリーダーやマネージャーにとって極めて重要です。大企業の経営層は多くの場合、現場からは切り離されていると感じており、従業員の課題や夢、職業上の目標を理解し真につながる方法を模索しています。このプラットフォームで従業員と経営者の間のコミュニケーションが民主化されることにより、相互理解が深まり、形式的な仕事も減ることで、従業員が自らのキャリアをコントロールできるようになります。 キンバリークラークの従業員にとって、キャリア・マネジメント・プラットフォームには将来を考える上で大きなメリットがあります。キャリアを明確に管理できるという機能です。キャリアプランの設計と実現は複雑なプロセスで、多くの場合、曖昧で誤解を招く機会や課題に関する説明も見受けられます。マーサーが開発したプラットフォームでは、従業員はキャリアやメンターによるアドバイスにアクセスできる自己管理ツールがあります。キンバリークラークの従業員は、このダイナミックな協調関係により、将来とキャリアを思い描くだけでなく、最高のアドバイスをもらいながらプロフェッショナルとしての夢をどう実現するかに向き合っています。このプラットフォームでは自身のペースで成長し夢を持つ一方で、スキル、才能、知識基盤を向上させるヒント、そして社内での雇用確保やキャリアパスが促進されます。 また、自分のキャリアや専門能力の開発を自己管理することもできます。とても協力的とは言えない上司やマネージャーの存在により、キャリアアップを妨げられていた友人や家族を誰もが知っているのではないでしょうか。このプラットフォームにより従業員一人ひとりが、理不尽にも誰かの偏見に自分の未来をコントロールされることなく、目標や達成したいことを公開できます。事業の経営者にとって画期的なのは、社員や人的資本にこのようなレベルでアクセスできることです。 また、生産性の高い従業員が見過ごされている、感謝されていない、無視されていると感じるために離職することで、新たな人材を採用するにはあらゆる面でコストがかかり、企業にとって重荷となっています。ラテンアメリカでは、エンゲージメントアンケートでキャリア開発の機会に満足していると回答したのは従業員の 50% に留まりました。半数の人がもっと満足できる仕事を他で探そうと検討している可能性があります。貴重な人材が失われるだけでなく、代わりの人材を採用する多くの時間やお金、リソースが費やされ、企業に破壊的な影響を及ぼします。 水平異動という新たな昇進機会 キャリアアップとは従来、企業内の階段を上って昇給、昇進、権力が増すことと定義されてきました。今日は、従業員の一人ひとりが水平異動を効果的で長期的なキャリア戦略として考慮する必要があります。 プラットフォームを活用することで、社員にはかつてない専門能力開発の門戸が開かれます。リストラにより従来の職はなくなる可能性はありますが、新しい世界は多くの強力なテクノロジーによって接続されます。そして以前は見過ごされていた水平移動によってより報いの多い機会に恵まれる可能性があります。たとえば、ある職員はボリビア、ニカラグア、ウルグアイなどの国における最初のカントリーマネージャーとして割り当てられるかもしれません。 変化は既に始まっていますが、未来の職業ではスキルを構築するために何年も同じデスクやパソコンの前で苦労する必要はありません。キャリアアップは将来的に水平異動という枠にもとらわれることなく、やりがいのある職業経験と独自のプロフェッショナルとしての実績により鍛えられたクリティカルシンキングが求められます。行動的で、豊富な知識や情報を持つ社員を生み出すのは経験です。今こそ、価値を経験にシフトさせましょう。 入社日から始まる未来の仕事 調査結果は、職業の安定性、給与、そして将来のキャリア機会という 3 つの大きな分野で従業員に懸念があることを明らかにしました。これらの懸念に対処するため、ユーザーフレンドリーなキャリアプラットフォームが開発されています。 キンバリークラークは、確かなものが何もない経済情勢の中、従業員にかつてないほどの新しい機会を創出するという任務をマーサーに委ねました。最終的に従業員だけでなく経営陣も熱意ある反応を示すものとなりました。マネージャーやリーダーは、以前より職員に安定したやりがいのあるキャリアを提供する義務があると感じていたからです。 さらに、このプラットフォームは新入社員の入社1日目から導入できるため、職員と企業にとって極めて高い価値をもたらします。それは組織のキャリア全体で真の情報源となります。 グローバル経済がデジタルトランスフォーメーションに適応していくにつれ、ラテンアメリカだけでなく世界中の企業やその社員は価値を発揮し、技術革新で満足度の高いく仕事と生活の質を向上させる新しい方法を探る必要があります。キャリアプラットフォームは目まぐるしいスタートを切りました。 この経験を通して学んだ教訓は、従業員と企業はお互いにとって最善を望んでいるということです。そして、その絆を深めることに貢献できることを嬉しく思います。

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