資産運用 & 変革

新時代を迎えるグローバルスタートアップ企業の役員報酬

2019年10月3日
  • Varun Khosla

    Principal, Head Executive Remuneration, Middle East, Mercer

article-img
「投資会社は、注意深く役員報酬を決定しなければなりません。最終的にはそれが成功と失敗の分かれ道となり得るからです」

何十年にもわたり、スタートアップ企業やその役員報酬というと、シリコンバレーやテクノロジーの第一人者が多数働く、次世代のユニコーン企業を目指す 10 億ドル規模のイノベーティブな会社やその最先端のオフィスビルのイメージで語られてきました。しかし、近年、グローバルスタートアップ企業はこれまで予想もしなかった地域で成長しています。

最近の調査によると、8 億 9,300 万ドルが中東および北アフリカのスタートアップ企業 366 社に投資されています。スタートアップ企業への投資額は 2017 年に比べ 2 億 1400 万ドル増加し、6 億 6900 万ドルとなりました。1

また、東南アジアにおいても、海外 (ほとんどの場合シリコンバレーなどの欧米) で学び、地元に戻った「ウミガメ」と呼ばれる人々によって、スタートアップ企業の立ち上げが相次いでいます。この地域では重要な転換点を迎えており、東南アジアの VC 投資家は 327 ディール、 78 億ドル超を投資しています。2

すべてのスタートアップ企業で必要不可欠な要素、それはリーダーシップです。しかし、幹部クラスの人材と経営陣を確保・維持することは、成長中のスタートアップ企業にとって、特に報酬面では大きな課題となるかもしれません。

役員報酬を変える機関投資家

世界的に有名なスタートアップ企業の多くは、ジェフ・ベゾス、ジャック・マー、マーク・ザッカーバーグなど、カリスマ的な創業者によって立ち上げられました。しかし、これらの有名人や成功物語は、世界中に花開くスタートアップ企業の新しい時代の幕開けを反映しているものではありません。

たとえば、中東・北アフリカ (MENA) では、投資会社がスタートアップ企業の立ち上げに必要な初期の資金援助を行っています。これらの投資会社は、スタートアップ企業の立ち上げ時から資金繰りを支援しています。さらに、これらのスタートアップ企業の経営幹部は創立者ではないため、ロイヤリティや創造性、コミットメントを維持するために異なる報酬モデルを望んでいます。

C-レベルの優秀な人材を獲得するのは、実績がほとんどない、あるいは全くないスタートアップ企業にとってはリスクが高いため、非常に困難と言えるかもしれません。従来、欧米のスタートアップ企業は成長予測を前提とした中長期的なベンチマークを中心に役員報酬パッケージを策定してきましたが、成長モデル、投資戦略、役員報酬の三角化は複雑で厳しい課題となることがあります。

現在、世界的なスタートアップ企業はほとんどの場合、インスピレーションに富む創業者ではなく、投資会社が中心となって設立されているため、会社は経営陣、いわば成功と失敗の分かれ道となり得る人々に払う報酬を決定する際は入念に検討する必要があります。

役員報酬はいくらにすべきか?

当然のことながら投資会社は収益の最大化を望みます。つまり、スタートアップ企業にはできるだけ多くの純資産や株式を保持しておきたいと考えます。スタートアップ企業の役員に支払われる金額 、株、またはオプションはすべて投資会社が運用コストとして支払う費用になります。ただし、スタートアップ企業の役員に低い報酬を提示したり、スキルや経験のない人材を雇ったりすると、企業の競争力、成長力、収益力が損なわれるリスクもあります。

経営陣に潜在的な株式を提供する財務的な取り決め (シャドウエクイティともいう) は、慎重に考慮し検討する必要があります。役員報酬プランは、スタートアップ企業の報酬のインセンティブと経営者を維持する制度として機能させる一方、企業に資金を提供した投資家や株主に適正なリターンを提供するものにしなければなりません。投資家と株主は、経営陣に適切なエクイティ・プールを提供するために、どの程度の株式希薄化を受け入れることができるかを決める必要があります。

このため、多くの企業では、企業価値の増加に対応して資金調達の各投資ラウンドでエクイティ・プールのサイズを縮小する段階的アプローチの実行が決定されます。このタイプのプログラムにより株式希薄化を緩和し、特に製薬業界やフィンテック業界など、熟練した専門家や経営者の才覚や知識を必要とする、先進的なスタートアップ企業を扱う際に創造的な報酬戦略を策定することができます。

投資会社は、一定のタイミングと価格で株式を売買する権利を付与する株式オプション、または会社の実際の所有権を付与する普通株式のいずれかを従業員に提供することがあります。いずれも株式を希薄化しますが、オプションでは通常、普通株式よりも希薄化の効果が高くなります。たとえば、オプションで構成されるエクイティ・プールは、会社資本の 15 ~ 20% に達することがありますが、普通株で構成されるプールではわずか 3 ~ 5% に過ぎません。これは、長期インセンティブ報奨について、同額をオプションで支払うと、普通株の付与と比べて株式の希薄化効果が高まることを示しています。投資会社は、目的に対してどの戦略が最も適しているかを判断する必要があります。

役員および経営幹部に支払うタイミング

投資家が役員や経営幹部に支払うのは、投資回収の後にすべきでしょうか?それとも、業績は多くの場合、制御不能な外部の経済要因に左右されるため、経営者報酬は業績ではなく、従業員として能力を最大限に発揮して仕事を遂行したかどうかに基づいて支払うべきでしょうか。

多くのスタートアップ企業では、投資回収のベンチマークが経営幹部をやる気にさせ、株主価値を生み出すために最善を尽くす追加のインセンティブになると考え、前者の戦略を実行しています。実際、多くのケースで長期インセンティブプランは投資家がリターンを受け取った時にのみ支払われています。あるいは、一部のスタートアップ企業は、相互に合意した特定の企業の目標や目的に基づく役員や経営幹部に対する報酬を選択しています。報酬は現金や株式で提供されますが、株式の売却または付与のタイミングが制限されたり、オプションや普通株の形式で付与されたりもします。

世界中でスタートアップ企業が出現し、アイデアやイノベーション、そして次世代における未来のユニコーンを生み出す投資家や経営幹部が登場してきました。これらのスタートアップ企業の経営幹部を担う役員報酬の支払方法について新たなトレンドが続く中、グローバルスタートアップ企業は投資家の利益を最大化しつつ優秀な経営幹部を確保する選択肢を慎重に検討する必要があります。

出典:

· "2018 MENA Venture Investment Summary." MAGNiTT, January 2019, https://magnitt.com/research/2018-mena-venture-investment-summary.

· Maulia, Erwida. "Southeast Asian 'turtles' return home to hatch tech startups." Nikkei Asian Review, 22 May 2019, https://asia.nikkei.com/Spotlight/Cover-Story/Southeast-Asian-turtles-return-home-to-hatch-tech-startups.

 

more in invest

Fabio Takaki | 19 12 2019

影響力を持つ女性たちには企業、業界、さらには国家を変革する力があります。マーサーのレポート「When Women Thrive Business Thrive ~女性が活躍するとき、企業も持続的に成長する~[T.M.1] 」によると、女性がリーダーとして働き生活している地域では、教育、健康、地域開発プログラムへの貢献度が高くなるとされています。 女性のリーダーが企業や地域社会にポジティブな影響を与えるにも関わらず、世界の大手金融機関のリーダーに女性は少ないのが現状です。また、女性たちは投資対象となる企業の経営陣にも低いウエイトでしか存在しません。オリバー・ワイマンの新しい報告書[T.M.2] (MMCグループ企業の一部) によると、世界の金融機関では経営幹部の20%、取締役会の23%を女性が占めていますが、CEOはわずか6%に留まっています。 しかし、伝統的に女性の昇進が最も難しいとされていた地域の1つの中東において、金融業界の経営幹部に女性が徐々に登用され始めています1。中東の金融業界で女性が地位を確保し地域社会や他の業界に波及していくにつれ、世界の経営者たちはこの動きに注力する必要があるでしょう。 中東の金融業界で活躍する女性の経営幹部 中東の金融業界ではますます多くの女性が、銀行、投資会社、金融、法律、コンサルティング関係の会社の経営幹部を務めています1。たとえば、2018年9月、ローラ・アブ・マネ (Rola Abu Manneh) 氏はスタンダードチャータードUAEのCEOに指名され、UAE初の女性頭取になりました。UAEの銀行業界で長年の経験を持つアブ・マネ氏は、重要案件を銀行に持ち込むナレッジとリーダーシップ力を発揮しています。マネ氏は、CEOに就任した最初の年に、ドバイに拠点を置くエマール・プロパティーズに対し、ホテルをアブダビナショナルホテルに売却するよう提言しました2。 もう一つ例を挙げるとすると、サウジアラビア最大の商業銀行、サンバ・フィナンシャル・グループ初の女性CEOのラニア・ナシャール (Rania Nashar) 氏です。商業銀行セクターで20年以上の経験を持つナシャール氏は、2017年にCEOに指名され、サウジアラビアの上場銀行初の女性CEOとなりました3。また、この瞬間をもってサウジアラビアKSAのビジョン2030の一環として男女平等を促進する改革が始まっており、ナシャール氏はこれを継続させたいと述べています。 「サンバ銀行ほどの規模の銀行でも女性CEOが指揮を執ることができ、史上最高の業績を上げられることを実証するだけでなく、サウジアラビアや世界のすべての女性のために示したいです」とナシャール氏は語り、付け加えました。「サウジの女性たちが誇れるお手本になりたいと思います」4 ルブナ・オラヤン (Lubna Olayan) 氏も、サウジアラビアの有力なリーダーの一人です。彼女は30年以上にわたって、湾岸地域でオラヤングループの貿易、不動産、投資、消費、産業関連の業務を行う持株会社オラヤン・ファイナンシング・カンパニーのCEOを務めました。また、タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」、フォーチュン誌の「世界で最も有力な女性」への選出を含め、多数の賞を受賞し、女性の経済的権利の擁護者として評価されています5。 リーダーシップに重要なジェンダー平等 こうした女性のリーダーたちは、地域の金融業界の男女平等の推進と変革に貢献しています。進歩はしているものの、課題は山積みと言えるでしょう。政府はジェンダーの均等を促進するための取り組みを行っていますが、経営者たちのマインドセットを変え、バイアスを克服するには時間がかかります。 しかし、それは追求する価値のあるプロセスです。人手不足に直面している組織や国家にとって、女性の人材を活用することにより、競争、成長、成功のための戦略的な機会が提供され、経済全体の変革も促進されます。 マーサーのレポート「When Women Thrive Business Thrive ~女性が活躍するとき、企業も持続的に成長する~」によると、女性は供給者、育児・介護者、意思決定者、消費者として重要な役割を担っており、将来の世代の教育と健康、そして地域社会の発展に貢献しているとされています。女性幹部は、結束力の強いチームを作り、人材の維持、スキル開発、育成を行い、多様で新しい視点を組織にもたらす上でも寄与します。 実際、マーサーの調査は女性幹部の登用の増加が、地域社会や国家における経済的および社会的発展に影響を与えることも示唆しています。エコノミストは、男女の雇用格差を是正することで国内総生産を米国で5%、日本で9%、アラブ首長国連邦で12%、ヨーロッパで34%大幅に向上させることができると算出しています。 女性比率の低い領域におけるジェンダー平等の実現 女性の人材を獲得し、意欲的に働いてもらうための適切なアプローチは、それぞれの企業の風土や必要性によって異なるとはいえ、世界的にも有効と考えられる戦略がいくつか存在します。マーサーの調査によると、ジェンダーの多様性を実現するために必要な要素として、健康、経済的な安定、人材の適切なマネジメントが挙げられています。 1.健康 女性にとって健康は特に重要です。女性特有の健康問題や病気の影響があり、男性とは異なる方法で医療制度を利用することがあるためです。 たとえば、女性の罹患率が高い精神衛生上のリスクは、女性の生産性に大きな影響を与えています。単極性うつ病は、仕事上の障害の主な要因となっており、男性より女性の方が約2倍多いと言われています6。 ビジネスにおけるジェンダー平等を実現するには、企業は次のような分野で、女性が最も必要とする方法でヘルスケアを提供する必要があります。 1.     フレキシブルな産休 2.     身体的健康、ウェルネス、メンタルヘルスのサポート 3.     医療リソースへの自由度のあるアクセス 4.     厳しいライフイベントにおける精神的支援 5.     女性専用の医療サポート 2.経済的な安定 女性の抱える経済的責任や経済的ストレスは、男性よりも大きいことが報告されています。プルデンシャルが実施した2018年の調査によると、平均的な女性は、平均的な男性と比較して、退職後の貯蓄が少ないことも明らかになっています。退職後に備えて貯金をしていた女性はわずか54%で、その額は平均115,412ドルです。対照的に、退職後に備えて貯金をしていた男性は61%で、その額は平均202,859ドルでした。女性が退職後に貧困に陥る可能性が大幅に高く、女性の平均余命を短くすることにもつながることを示しています7。 この問題に対応すべく、組織は女性が公正な報酬を受けられるようにすること、将来のお金[T.M.3] の計画についてコーチングや教育支援を強化すること、女性向けに退職オプションを調整すること、貯蓄・退職口座への体系的かつ定期的な積み立てを奨励することを確実に行っていく必要があります。 3.人材の適切なマネジメント 女性には、トレーニングとスキル開発の機会だけでなく、昇進の機会に加え仕事以外の重要な役割を果たすための柔軟な勤務体系も必要です。 経営レベルでの男女共同参画をさらに改善するために、管理職に対する取り組みは欠かせません。しかし通常、管理職は長時間勤務が必要となり、チームやクライアント、上層部の管理能力も求められます。そうした地位の女性たちにとっては出産期と重なる可能性があり、企業がテクノロジーの活用、育児支援、女性向けメンタリングおよび経営支援、ビジネスリソースグループ、多様性および一体性プログラム、トレーニングなど、適切な働き方を提供しなければさらに困難になります。 女性の人材がビジネスに貢献し、事業拡大をもたらす力となりうることに疑いの余地はありません。金融機関と政府が優秀な女性を労働者また経営者[T.M.4] として登用するために求められる戦略に注力することにより、ポジティブな成果が表れてくるでしょう。影響力を持つ女性たちは、ビジネスの洞察力を生かし組織の成長を促すだけでなく、社会における女性の役割が教育やコミュニティを大きく改善し、ひいては国家の変革を可能にします。 出典: 1. 1. "The 50 Most Influential Women in Middle East Finance," Financial News, 29 Apr. 2019, https://www.fnlondon.com/articles/the-50-most-influential-women-in-middle-east-finance-20190429. 2. "FN 50 Middle East Women 2019," Financial News, 2019, https://lists.fnlondon.com/fn50/women_in_finance_/2019/?mod=lists-profile. 3. "Rania Nashar," Forbes, 2018, https://www.forbes.com/profile/rania-nashar/#20d8136e473c. 4. Masige, Sharon."Raising the Bar:Rania Nashar," The CEO Magazine, 27 Jun. 2019, https://www.theceomagazine.com/executive-interviews/finance-banking/rania-nashar/ 5. "Lubna Olayan Retires as CEO of Olayan Financing Co.; Jonathan Franklin Named New CEO," Olayan, 29 Apr. 2019, https://olayan.com/lubna-olayan-retires-ceo-olayan-financing-co-jonathan-franklin-named-new-ceo。 6. "Gender and Women's Mental Health:The Facts," World Health Organization, https://www.who.int/mental_health/prevention/genderwomen/en/#:~:targetText=Unipolar%20depression%2C%20predicted%20to%20be,persistent%20in%20women%20than%20men。 7. "The Cut:Exploring Financial Wellness Within Diverse Populations," Prudential, 2018, http://news.prudential.com/content/1209/files/PrudentialTheCutExploringFinancialWellnessWithinDiversePopulations.pdf.

ラテンアメリカ、中東、アフリカ、アジアは経済成長と人口動態、投資市場、規制の変化を背景に、世界で最もエキサイティングな市場の一つとなっています。 「マーサーの成長市場におけるアセットアロケーション動向調査: 進化する状況レポートでは、そのうち 14 の市場の年金基金について現在の投資ポジションおよび過去 5 年間の変化を調査しました。この調査には、南半球と東半球の市場全体で約 5 兆ドルの年金基金が含まれています。 世界銀行によると、これらの地域の経済によって世界の成長の約 70% がもたらされるため、資産の所有者、管理者、投資家に対して新たな投資機会が提供されています。消費と貯蓄のさまざまなパターンを生み出す中産階級の急速な拡大も見られ、さらに、世界の機関投資家の上位 50 社のうち半数がこれらの市場に本拠を定めています。1 ますます堅調になりつつある世界の投資環境 ラテンアメリカ、中東、アフリカ、アジアの経済規模は大きく、成長していて、個人が保有する富の割合が増えているため、世界中の投資家にとって特に注目の的となっています。これらの市場はまた、外国人投資家にますます門戸を開いています。同時に、これらの地域における規制の変更により、国内投資家の選択肢が広がり、自国の市場外で投資できるようになっています。その結果、投資環境はオープンで安定したものになっており、世界中の投資家にはますます機会の扉が開かれています。 これらの地域の年金基金制度も改革が進行中で、西欧諸国と同じく退職貯蓄については個人の責任が増大する傾向が見られます。全体的に見て、企業と政府が運営する制度の両方で確定給付 (DB) から確定拠出 (DC) に移行しつつあります。これらの変化により、将来の貯蓄ニーズを満たし、制度への信頼を担保するために効果的な投資ソリューションを提供する必要性が際立っています。 投資家による 3 種類の対応方法 投資家やプランマネージャーは、変化する環境に 3 種類の主な方法で対応しています。 1. 株式に投資する投資家が増加しています。過去 5 年間で、自己資本配分率は 32% から 40% へと約 8% 増加しました。多くの地域の投資家がポートフォリオの期待収益率を高めようとしてこのようなシフトが見られています。競争激化した低リターンの投資環境の中で、世界中の投資家が問題に直面しています。ポートフォリオミックスに株式を追加すると、長期的にリターンの向上が期待できるはずです。   2. 市場の自由化によりポートフォリオの多様化が可能になり、国内資産の代わりに外国資産へのエクスポージャーが高まっています。年金基金における海外エクスポージャーは、過去 5 年間平均で全株式ポートフォリオの 45% から 49% に増加しました。投資家は地理的な多様性を求めていますが、特にコロンビア、日本、韓国、マレーシア、台湾で伺えます。ブラジル、コロンビア、ペルー、南アフリカなどのいくつかの国でも、法律の最近の変更により、現在では外国資産へのエクスポージャーが増加しています。最近では日本政府の年金基金が国内株式を犠牲にして、外国株式に移行しています。 外国債券へのシフトも見られており、外国資産への配分は 16% から 23% に上昇しました。これは国内債券の金利が低いこと大きなやポートフォリオ多様化機会の追求によるものです。ただし、ホームバイアスが残っていますが、規制の変更により、幅広いグローバル投資が支えられるため、このトレンドは続くと予想されます。   3. 投資家のオルタナティブ投資に対する関心が若干高まっています。オルタナティブ投資をポートフォリオに組み入れる投資家が増加しており、マーサーではこのトレンドが継続すると予想しています。代替アセットアロケーションの詳細を公開した投資家のうち、平均配分の 70% 超が不動産とインフラに、約 20% が非公開企業の株式に投資されていました。規制の変更により、一部の分野では投資家にとって代替投資の魅力が増しています。たとえば、チリでは 2017 年に投資制度の改革案が可決され、具体的な制限はポートフォリオによって異なるものの、年金基金の運用者は最大 10% をオルタナティブ案件に投資できるようになりました。この改革の主な目的は、利益を上げて、最終的に年金収入を増やすことにあります。投資家がポートフォリオを多様化し、リターンの向上を追求する中で、代替投資のエクスポージャーは長期的に増大することが予想されます。 投資家の皆様におかれましては、当社レポートの調査結果を、ポートフォリオを見直し、投資リターンの向上のために改善できるアセットアロケーションの分野について調べる機会としてご活用いただければ幸いです。 詳細については、こちらのレポートをダウンロードしてください。 出典: "Top 1,000 Global Institutional Investors." Investment & Pensions Europe, 2016. https://www.ipe.com/Uploads/y/d/w/TOP-1000-Global.pdf.

企業がすべてのものをデジタル化する移行を継続するにつれ、このトランスフォーメーションの波は必然的に仕事のすべての領域に押し寄せ、財務機能から税務コンプライアンス、データアナリティクス、またその先に至るまですべてをデジタル化するでしょう。 マーサーのグローバル・タレント・トレンド 2019レポートによると、約 73% の役員は今後 3 年間で業界内で大きな創造的破壊が起こることを予想しています。デジタルトランスフォーメーションにより、この数字は 2018 年の 26% から大幅に上昇しています。また、半数以上の役員は、企業の現在の職の 5 分の 1 が AI とオートメーションに取って代わられることを予想しています。これは一部の企業で懸念となる一方、この 2 種類の激震により、2022 年までに 5,800 万人の新規雇用が生み出されることも意味しています。                           マーサーの年次アンケートに回答したビジネスリーダーは、科学技術の進歩が世界経済の成長に対して及ぼす影響について様々な意見を持っています。デジタル化により機会が開ける分野がある一方、一群の新たな、そしておそらく機敏なプレーヤーによる競争激化も予想されます。 世界経済先行きの見通し   マーサーのレポート2019 年以降の経済・市場の見通しによると、世界経済の混乱は米中貿易摩擦がどのように解決するかの不透明性によりさらに悪化します。米国経済は金利上昇により幾分減速するかもしれませんが、中国経済は貿易摩擦解決の行方次第です。他の新興国市場では、ほぼ同じペースでの成長が見込まれており、経済摩擦が緩和されたときに力強く成長する可能性があります。 マーサーの2019 年のテーマと機会調査報告は、「行き過ぎた信用を示す証拠の増加」により生み出される急激な混乱、および中央銀行の巨額の流動性注入からの撤退により経済にどのような影響が及ぶかについて注目しています。 同報告書はまた、政治的影響、特に貿易への影響により「グローバリゼーションのペースが減速し、一時停止し、さらには逆戻りするかもしれない」という明確な可能性についても指摘しています。さらに、政府、規制当局および受益者から、資産所有者および投資運用会社にサステナビリティを標準的な行動として取り入れさせるような期待が高まっています。 税務コンプライアンスのデジタルトランスフォーメーション   この目まぐるしく変わる状況において、企業はさまざまな地域の税務コンプライアンスを含む、機会と義務の両方を管理し、対応するのに役立つデジタル化にますます注目しています。一部の国では現在、徴税努力を改善するためのデジタルテクノロジーの導入も進んでいるため、これはいわゆる動く標的のようなものになっており、特にアジアについてそう言えます。 2015 年に地域内 28 か国の平均税収の GDP 比率はわずか 17.5% でしたが、これは OECD 諸国の平均 34% の半分に過ぎません。インド、カザフスタン、マレーシア、モンゴル、ネパール、シンガポール、および中国では主要な税金についての電子納税申告書の活用の点で大きな前進が見られています。さらに、中華人民共和国、インドネシア、モンゴル、ベトナムの歳入機関では、電子決済が義務付けられるようになりました。1 デジタル化と税規制の強化もまた、徴収努力を大幅に改善することを目的としていますが、さらなる努力が求められています。政府は電子監査システムに基づいて課税額を示す eAssessment を企業に送ることを含め、デジタル化の助けを借りて税務管理の取り組みを大きく前進させています。2税務申告書の毎月の売上額に矛盾が検出されて場合、利息や罰金を含む eAssessment が自動的に発行されます。 ソヴォスの社長兼 CEO、アンディ・ホヴァンチク氏は率直に言います:「要するに、税金の徴収は最も重要なビジネスプロセスに組み込まれるようになっており、税務の世界を変え、何十年も前のビジネスプロセスを創造的に破壊しています。結果的に、税金が財務部や経理部のデジタルトランスフォーメーションを推進している状況です。それで企業は税務のオートメーションに対し、これまで以上に新しいアプローチによるコンプライアンスの確保が求められていると言えます」2 Vertex Inc. の取引税の最高税務責任者、マイケル・バーナード氏を含め、財務担当役員は次の点に同意しています。バーナード氏は言います。「世界中の政府は、IT 部門に対してコアプロセスにワークフローを組み込むことを求める電子請求規則、およびリアルタイムの VAT コンプライアンスチェックなど、新しい形式のコンプライアンスに目を向けています。2019年、金融機関は税務上の考慮事項をデジタルトランスフォーメーション戦略に織り込むようになります。効果的なロードマップには、データを活用してビジネスプロセスと税務コンプライアンスの責務を関連付けるアクションが含まれるようになるでしょう」3 コンプライアンスをビジネス戦略の指針に   デジタル化だけで最新の税法に準拠した税務コンプライアンスを実現することはできません。コンプライアンスをビジネス戦略の中心に据える必要があります。これには、従業員がコンプライアンスに関してマインドフルネスの状態になるのを支援するため、企業全体でトレーニングセッションを導入することも含まれます。ただし、ますます説明責任が求められる時代に、TMFGroup のコンプライアンスおよび戦略規制サービスのグローバルヘッド、レイラ・シュワルク氏は、コンプライアンスの概念を競合他社と区別できる「ビジネスイネーブラー」として考え直すべきと指摘しています。4 シュワルク氏によると、「コンプライアンスは余分な開発作業としてではなく、ビジネスの成功をもたらすイネーブラーとしてみなすべきです。企業が組織上の課題に関連して創意工夫に富むソリューションを一体となって編み出す場合にのみビジネスの成功がもたらされます」。「APAC 企業は新しい規制時代に直面しており、コンプライアンスチームは自社の利益と、長期的な競合優位性の確保の両方で重要な役割を果たしています」と彼女は続けます。 市場の不確実性や大きな変化が先に控えているため、時代を先取りしてデジタルトランスフォーメーションの波を乗り切るだけでなく、ビジネスを成功させる方法についてことが、これまで以上に重要になっています。今日、これらの点を考慮し、コンプライアンスとデジタル化を中心にしたビジネス戦略の立案を始めましょう。そうすれば、明日の見通しは明るいものとなります。 出典: 1.Suzuki, Yasushi; Highfield, Richard. "How digital technology can raise tax revenue in Asia-Pacific." Asian Development Blog, 13 Sept. 2018, https://blogs.adb.org/blog/how-digital-technology-can-raise-tax-revenue-asia-pacific./ 2.Hovancik, Andy. "How Modern Taxation is Driving Digital Transformation in Finance." Payments Journal, 16, Jul. 2018, https://www.paymentsjournal.com/how-modern-taxation-is-driving-digital-transformation-in-finance/. 3. Schliebs, Henner. "2019 CFO Priorities: Experts Predict Top Trends." Digitalist Magazine, 18 Dec. 2018, https://www.digitalistmag.com/finance/2018/12/18/2019-cfo-priorities-experts-predict-top-trends-06195293. 4.Szwarc, Leila. "Regulatory compliance – The new business enabler." Risk.net, 18 Mar. 2019, https://www.risk.net/regulation/6485861/regulatory-compliance-the-new-business-enabler.

Voice on Growthその他の記事

Amy Scissons | 26 3 2020

今日の世界では、多様な人材を育成し、雇用し続けることはかつてなく困難になっています。多様性の問題を「解決」するばかりで人材確保ができるものではありません。多様な人材を育成、開発しなければ、離職や意欲の低下という新たな問題に直面します。 この点はマーサーが発表したレポート「ダイバーシティ&インクルージョンテクノロジー:革新的な新興マーケット」の論評にも反映されています。「経営者らは、多様な組織や包容性の高い文化がないことは全体の問題であり、個人の力ではどうにもならないことを理解し始めている」 幸い、多様な人材のニーズを的確に支援する方法があります。詳しく見ていく前に、まず多様な人材の構築、維持、育成の重要性について考えましょう。 開発された多様な人材のメリット   今日の企業が生き残るためには、HRを含めビジネスのあらゆる面で俊敏性を優先する必要があります。マーサーの「2019年グローバル人材動向調査」における調査では、素早い変化を実現し、事業の混乱を最小限に抑えつつ、急激なトレンドにも迅速に対処する自信を持っている企業は約3割です。では、HRのアジャイルアプローチとは、どのように実践されているのでしょうか。 この俊敏性と自信は、一つには十分に開発された多様な人材から生まれています。従業員をスキルアップさせて将来のビジネスニーズを満たせるようにしておくことで、デジタルオートメーションや産業融合など、あらゆる激変に伴う移行を円滑化できます。俊敏性を高めることで、広範囲にわたる業界の変革を乗り切り、競合他社を出し抜いて、スムーズに優位性を獲得できるとしたら、いかがでしょうか。 それを実現するためには、多様な人材が必要としているものに注目しなければなりません。 多様な人材のニーズを理解する   まず、今日の人材は、スキル開発の機会が見える雇用プロセスを求めています。マーサーの「2018年グローバル人材動向調査」によると、会社が個人的および職業的に成長する機会を与えてくれていると考える従業員は66%に過ぎませんでした。 とはいえ、マーサーの「2019年グローバル人材動向調査」になると、世界の人材が職場で優先するものは微妙に変化しています。従業員と雇用主の間でスキルアップのニーズに差があるのが世界的な傾向です。 労働者が雇用関係に求めるものを調査した結果、新たなスキルの開発が第1位となった国もあります。世界的には、これは従業員の雇用主に対する要望第3位になっています。いくつか例を見てみましょう。 1.     ブラジル:世界の大半の地域と同じく、貢献に対する評価が第1位となっているものの、従業員が求めているもの第2位がスキルの向上と新たな能力の開発となっています。 2.     メキシコ:新たなスキルとテクノロジーを学ぶ機会が従業員にとって最優先事項となっており、次にワークライフバランスの管理が続きます。 3.     中国:中国の従業員にとっては、ワークライフバランスが最優先事項であり、次に新たなスキルの習得が続きます。3位に優先することは、楽しい職場環境です。 4.     中東:中東では、何よりも新たなスキルの開発や新たなテクノロジーの学習機会が最優先事項となっています。ワークライフバランスが2位、有意義なプロジェクトが3位と続きます。 これらの嗜好は様々な形で表出します。例えば、メキシコの労働者の9割以上は、カジュアルなフリーランススタイルの働き方に対してオープンであり、新たな仕事の機会を求めるとともに、自らのスケジュールを管理することに一定の関心があることが分かります。これはワークライフバランスの優先度の高さとも結びつきます。 優先順位は国によって多少異なるものの、世界的、文化的、地理的な違いを越えて、従業員が職場に求めるものは似通っていることが分かります。真の課題は、雇用主がスキル開発にどのように取り組むかという点にあります。 人材のスキル再開発、スキルアップ、育成   スキルの再開発とスキルアップにおいて、従来のトレーニングは必ずしも最善の方法ではありません。多文化の人材の特定のニーズに対応していないことが多いためです。例えば、講義形式のセッションにおいて、受講者がテーマを自らに当てはめて考えることができなければ、理解は困難になります。また、受講者が大人数の前で発言することを好まない場合、会話の交換が難しくなる可能性があります。 そこでマーサーのダイバーシティ&インクルージョンレポートが指摘するように、新たなテクノロジーを活用する独自の方法でこの課題に対処できます。その例の1つは、プライベート通信チャネルの活用です。翻訳会社などが提供しているような新たなツールを活用し、教室での受講者は匿名で質問でき、トレーナーはバランスの取れたディスカッションの仲介役を果たすことができます。また、トレーナーが受講者のパルスサーベイを行い、会話のトピックに対する安心感の推移を評価できます。 このような新たなテクノロジーや手法を活用することによって、人材育成に目を見張る成果が出ることがあり、そこに独自のメリットも伴います。ただし、離職率の低減にも等しく重点を置いてスキル開発に取り組まなければ、効果が乏しくなることに留意します。手塩にかけて育てた人材が競合他社で新たなスキルを活用することほど悔しいことはありません。雇用主が学習を最終目標と見なすのではなく、従業員のキャリアジャーニーにおける継続的なステップとして見る必要があるのはそのためです。 従業員はスキル開発を望み、キャリアに対するその影響を理解しているというデータがあります。一方の雇用主は、競争力を維持するためにも、学習についてさらに革新的なアプローチを取る必要があります。多文化の背景や多様なニーズを持つ労働者を含め、全ての人材を育成すること、これが長期的に業績を維持していく秘訣です。

Simon Coxeter | 27 2 2020

ファイナンスは、会社のあらゆる機能に影響を与え、個人にとっては個人の生活にも影響を及ぼします。従業員の経済状態が厳しくなると、仕事の満足度や態度に影響が及び、パフォーマンスが妨げられる可能性があります。経済的なストレスを抱えた労働者は、そうでない労働者よりも仕事の機会を逃し、医療費が高いことが知られています。これらの要因は、必然的に企業の従業員エンゲージメントレベルを損ない、最終的には業績にも影響します。特に、複数の従業員が経済的困難を経験している場合はそう言えます。 同時に人事のプロフェッショナルは、人は給料のためだけに働いているのではなく、給与を上げるだけでは必ずしも仕事の満足度が上がるとは限らないことを知っています。さらに従業員は明るい企業文化、柔軟な予定、表彰、人材開発(L&D)、退職プラン、その他の福利厚生も求めています。当然、従業員は給料は別の話としても、自分の価値が認められ、未来が開けている会社で働きたいと考えています。 世界の失業率が40年間で最低レベルに到達する中、人手不足が進行し、雇用主はますます採用競争が激化する環境に直面している一方、福利厚生パッケージは優秀な人材を集めてつなぎ留めるますます重要なツールになりつつあります。福利厚生で成長を続けているプログラムの一つは、体系化されたファイナンシャル・ウェルネスです。 ファイナンシャル・ウェルネスのソリューションでは、目標の策定、基本的なファイナンシャル・リテラシー、予算編成、負債管理、経済的ストレスの軽減などのコースがあり、従業員はお金に関する教育が受けられます。ファイナンシャル・ウェルネスのプログラムの目的は住宅、自動車、大学、退職金などのための貯蓄など、お金が関係する様々なライフステージで目標達成に役立つ行動に向けて従業員をガイドすることにあります。「マーサーの健康的で働きがいのあるレポート」では、ファイナンシャル・ウェルネスが提供された場合、福利厚生プランに対する従業員(および雇用主)の満足度が高いことが明らかになっています。さらに、多くの企業はファイナンシャル・ウェルネスの投資対効果を33%と報告しています。 従業員が経済状態について不安を抱く。 多くの従業員にとって、ストレスの最大の原因はお金です。マーサーのInside Employees Mindsレポートで3,000人のワーカーを対象に行われた調査では、経済的ストレスがどの程度仕事に影響を与えたか、という質問に対して、経済的な課題を抱えている人の62%が最も大きな経済的な心配として月々の支払いを挙げています。その中には年間の世帯収入が10万ドル以上の人々も含まれていました。 経済的ストレスは年齢層によって異なります。ヤングアダルト層は、特に大学の教育関連費用などで多額の負債を抱えています。ファミリー層はキャッシュフローの問題や予想外の出費で経済的な目標達成に苦労しています。中高年層も高齢の親の介護や家に戻ってきた子供の世話をすることで経済的なストレスを抱えていることがあります。ひとり親には特有の経済的ストレスがあります。したがって、ファイナンシャル・ウェルネスプログラムを設計する際は、従業員全体の年齢層とそれぞれの生活の経済状態を考慮することが重要です。 注目すべきファイナンシャル・ウェルネスのトレンド 経済的な困難からくるすべての苦悩については、ファイナンシャル・ウェルネスのプログラムにより状況が改善され、従業員にも雇用主にも利益がもたらされることが期待されます。ギャラップの調査によるとファイナンシャル・ウェルネス(経済的健康)は、所得レベルに関係なく、前向きな行動と強い人間関係に密接に関連しています。 雇用主はファイナンシャル・ウェルネスのプログラムを導入することで、従業員がより幸福で、より健康的で、より生産的になることで恩恵を得ます。モルガン・スタンレーとファイナンシャル・ヘルス・ネットワークの共同調査では、75%の従業員がファイナンシャル・ウェルネス・プログラムは福利厚生の重要な要素であり、60%がファイナンシャル・ウェルネス・ソリューションを実施している会社で働き続けたいと回答しています。 雇用主は従業員が抱える経済的ストレスに対処することの重要性を認識していますが、従業員へのサポートを提供する取り組みの点で改善の余地があります。アジア太平洋、ヨーロッパ、アフリカ、中東、および北米の従業員を対象にしたシグナの世界幸福度調査では、従業員の87%が職場でストレスを感じており、個人の経済状態が最大のストレス要因になっています。そして、従業員の38%はストレス管理のサポートがまったく提供されていないと回答しています。従業員のうち雇用主からサポートを受けていると回答しているのは46%に上る一方で、サポートが適切であると感じているのは28%にとどまります。 そろそろファイナンシャル・ウェルネスの水準を引き上げても良いころです。企業が従業員のファイナンシャル・ウェルネスのソリューションを最大限に活用し、競合他社を先んじるために企業が検討しているいくつかの新しいトレンドと戦略を以下に示します。 ユーザーはパーソナライズされたテクノロジー主導型ソリューションを求めています。 ファイナンシャル・プランニングについては、モダンでシンプルなインタフェースで経済状態の全体像を把握し、お金に関する目標を達成して説明責任を果たせるように、パーソナライズされた解説つきのソリューションが求められています。 最近のForresterの調査によると、資産管理会社の顧客はファイナンシャル・プランニングのソリューションに対してもっと多くの機能やデジタル対応を求めています。こうした需要から、アカウントの集約、パーソナライズされたコンテンツ配信などの機能が生まれ、説明責任という基本的な要素がファイナンシャル・ウェルネス・プログラムの成功をもたらしています。「ヘルプ・ミー・ヘルプ・マイセルフ」型のツールは経済状態のスナップショット、予算プランナーやローン返済計算機の機能を備え、ユーザーごとにパーソナライズされます。 特に、モルガン・スタンレーとファイナンシャル・ヘルス・ネットワークによる調査では、42%の従業員が、雇用主の提供する福利厚生やプログラムについて十分に知らされていないと感じる、と回答していることが明らかになりました。すべての福利厚生を活用していない多くの従業員は、もっと明確な説明があり、利用しやすくなれば、福利厚生を利用するようになるだろうと回答しています。Thompsons Online Benefits Watchによると、従業員の70%が福利厚生パッケージへのスマートフォンによるアクセスを望んでいますが、それを提供している雇用主は51%にすぎません。 これらのギャップは、企業がファイナンシャル・ウェルネス・プログラムを向上させ、従業員にとって使いやすく魅力的なものにする機会があることを意味しています。雇用主はライブWebセミナー、ソーシャルメディア、SMS通知などを使って福利厚生について知らせる必要があるでしょう。また、スマートフォンからアクセスでき、ユーザーエクスペリエンスをパーソナライズできるオンラインツールを提供する必要もあります。 2.データアナリティクスとデジタルテクノロジーによって、ファイナンシャル・ウェルネス・プログラムをパーソナライズする。 ファイナンシャル・ウェルネス・プログラムでは、データ・アナリティクスに基づいてデジタル時代に従業員が期待するパーソナライゼーションが提供されます。データ・アナリティクスは従業員をタイプとカテゴリーに分類し、ライブイベントやライフステージごとにプログラムがパーソナライズするのに役立ちます。 オンラインストアで消費者の好みが収集され、統計データを使用して推奨や提案が行われるのと同様、ファイナンシャル・ウェルネス・プラットフォームではデータ・アナリティクスとアルゴリズムを活用して、従業員が目標に向けて成長しているか、何らかの支援が必要かどうかを判断します。 一部のプログラムでは、データ・アナリティクスを活用して従業員の節約と支出の習慣をフレーミングし、同僚と比較します。これらのプログラムでは、行動を分析し、スコアを提示できるため、従業員が貯蓄や債務の管理で改善が見られているかどうかを確認するのにも役立ちます。 一部のプログラムでは、従業員個人を対象に、新車の購入や結婚などのマイルストーンに的を絞ったマーケティングキャンペーンを作成する機能を雇用主に提供することもできます。これらのマイルストーンを活用し、家財保険への加入や教育貯蓄口座の開設を推奨するなど、貯蓄や支出といった何らかの行動のヒントを提供することもできます。 データ・アナリティクスを使用して各従業員のプロフィールを作成し、カスタマイズされたセルフサービス型のツールでサポートできます。こうすることで従業員は質問の答えを見つけ、ライフステージの変化をより適切に計画できるようになります。たとえば、従業員は自分のプロフィールやファイナンスに関するすべての情報を検討し、子供を産んだ場合に加入すべき生命保険の金額を判断できます。データ・アナリティクスがないと、金額は自分で計算しなければならず、面倒で時間がかかるほか、ファイナンシャル・アドバイザーに相談する場合はコストがかかります。 雇用主側のメリットとしては、ファイナンシャル・ウェルネス・プログラムのパフォーマンスを判断するデータを収集できるという点が挙げられます。このデータはプログラムで新しいコンポーネントや機能を提供するのに役立ち、従業員のニーズへの対応が改善されます。 3.従業員は口先だけでなく実質的な支援を求めている。 福利厚生エコシステムにおいては、ファイナンシャル・ウェルネス・プログラムの重要性が拡大し、給料の支払いだけでなく、経済的な安定についても雇用主に面倒を見てもらいたいとする従業員が増えています。Thompsons Online Benefits Watchによると、従業員の79%が計画、節約、投資に関する健全なアドバイスを提供する点で雇用主を信頼しています。従業員の経済状態の改善に向けて、雇用主には現実的で実際的な方法を示すことが期待されています。 メリルリンチの調査によると、ファイナンシャル・ウェルネスのプログラムに従業員が望むことと、雇用主が提供しているものの間には大きなギャップがあることが明らかになっています。たとえば一般的に、従業員は最終的な目標達成に向けて努力し、一度に一つの目標に集中したいと考える傾向にあります。一方で雇用主は、全体のファイナンスを管理するための包括的なアプローチを強調し、厳格なアプローチを取ります。 雇用主の包括的な戦略が善意に基づいていることは確かですが、利用者にとっては負荷が重くなる傾向があります。特にストレスの多い状況では、ファイナンシャル・プランニングは脅威として受け取られることもあります。こうした状況を緩和するため、ウェルネス業界の企業は従業員の視点からプログラムを設計して、総合的なアプローチを提供しています。経済的な健康を心身の健康と統合するホリスティックプログラムでは、お金に関する「部屋の片づけ」を行い、経済状態や結婚式用の貯蓄、住宅の購入、ローンの管理など、生活のさまざまな要素を結びつけるのに役立ちます。 適切に設計されたプログラムは、理解不可能なサービスや金融商品の複雑な情報や提案を次から次へと提示して従業員を怖気づかせるのではなく、ファイナンシャル・ウェルネスのトピックをわかりやすく説明しなければなりません。 4.エンゲージメント、生産性向上、成功のためのファイナンシャル・ウェルネス・プログラムのビジネスケースを構築する。 経営陣が知っているかどうかにかかわらず、従業員は経済的ストレスを職場に持ち込んでおり、それは会社の業績に影響を与えています。米国人材マネジメント協会の調査では、個人的な経済問題が過年度の全体的な仕事のパフォーマンスに少なくとも何らかの影響を及ぼしたと答えた回答者が83%もいたことがわかっています。このディスエンゲージメントは、企業にとって大きな損失を意味します。従業員のストレスにより、企業は年間500万ドル以上のコストを負担する可能性があります。 従業員のファイナンシャル・ウェルネスを支援することは、事業上の損失につながるため、組織にとって重要な優先事項となる傾向が高まっています。GuideSparkの調査によると、ウェルネス・プログラムが重要な福利厚生と回答したのは従業員の82%で、ストレス管理(86%)および運動(85%)に次いで3番目でした。 従業員のウェルネス・プログラムの成果は前途有望です。Employee Benefit Newsによると、ファイナンシャル・ウェルネスプログラムの参加者は経済状態が向上したことが明らかになっています。個人的な経済状態について「非常にストレスを感じている」と答えた参加者の割合は、ファイナンシャル・ウェルネス・プログラムの導入後には52.4%から19.2%へと減少しました。同様に、ファイナンシャル・ウェルネス・プログラムの導入後、参加者の56%が毎月のキャッシュフローを上手に管理できるようになったと回答しています。 5.学生ローンの返済とリーズナブルなコストの教育への関心が高まる。 人事業界においては、従業員を育成するスキル開発が従業員エンゲージメントの原動力となってきました。ただし、実際のところ多くの従業員にとって過去の支払いが負担となっています。高等教育の費用が高騰し、先進国と発展途上国の両方で学生ローンの債務問題が発生しています。大学の授業料は上昇し続けており、大卒の学生ローンの負債額は記録的なレベルに達しています。世界銀行は、先進国よりも発展途上国で高等教育の問題が発生していることを報告しています。 莫大な負債と高い授業料により、多くの従業員はキャリアアップのチャンスを得る前に意欲がそがれ、企業の人材格差が拡大し、人材の層が薄くなっています。授業料が上昇し負債が増大する中で、人事のプロフェッショナルには、企業と従業員の双方が直面する問題について解決策を示すことが求められています。つまりローンの返済教育を行うことで、従業員ができるだけ早くローンを返済できる戦略を立てることです。人事部の中には、さらに踏み込んでローンの代位弁済や授業料の返還プログラムを提供するよう経営陣に説得できる場合もあるでしょう。 従業員が経済状態を心配している場合、転職して、必要なツールや報酬を喜んで与えてくれる雇用主を見つける必要があるかもしれません。ローンの返済に関するアドバイスやサポートを提供することにより、従業員が直面する個人的な問題の解決策を提示できます。そうすれば従業員はもっと会社に尽くすようになり、会社全体の士気が向上するだけでなく、生産性も高まります。 授業料の返還とその後の教育の奨励により、企業はデジタルトランスフォーメーションで繁栄し、生涯学習の文化を育成する点で大いに貢献することもできます。デジタル化が進行する中、従業員の役割は常に変化しており、固定の役職や詳細な職務記述書は過去のものです。現在のテクノロジーの成長のペースを考えると、技術スキルの多くは、今高く評価されていても、ほんの数年で時代遅れとなるかもしれません。 スキルの格差が拡大すると、企業は新しい従業員を簡単に採用するわけにはいかなくなります。その代わりにスキルアップと事業経営に新しいテクノロジーの導入に情熱を傾ける学習意欲に富む人材の採用に注目していく必要があります。授業料の返還や教育プランについてのアドバイスを行うことで、デジタル時代のための有能な人材を引き付け、育成していくことができるでしょう。 GallupのAnnual Global Emotions Reportでは、世界中の人々が多大なストレスを強いられており、経済状態は確実に最大のストレス要因の一つとなるだろうとしています。従業員のストレスが高まるにつれて、個人のパフォーマンスが低下し、会社の業績に悪影響を及ぼすことに多くの企業が気づくでしょう。何か手を打たなければ従業員の経済的なストレスレベルが上がり続け、企業は生産性の低下、欠勤の増加、エンゲージメントレベルの低下に苦しむことになります。 ファイナンシャル・ウェルネスのソリューションを適切に導入すれば、すべての関係者の経済状態は右肩上がりに上昇し、従業員にも会社にも利益がもたらされます。人事部は従業員と会社が手を取り合いながら働いていくというメッセージを発信することで、両者を結びつけるユニークな立場にあります。

島田 圭子 | 27 2 2020

世界経済フォーラムが2019年末に発表したジェンダー・ギャップ指数で、日本は153ヵ国中、過去最低の121位となった。ランキングを2018年の110位から大きく下げている。一方で例年実施している同フォーラム年次総会(通称:ダボス会議)での弊社主催イベント「When Women Thrive, Business Thrive - 女性が活躍するとき、企業も持続的に成長する」には今年三菱ケミカルホールディングス株式会社が日本企業からパネリスト参加をされ、弊社主催の同タイトルの調査にも日本から有意な数の企業の参加があり、企業における女性活躍への関心は高まっている。そのような中、先般小泉環境相の「男性による」育休取得が話題になった。特に海外からは、自国では男性の取得が当たり前であり、日本で男性の取得率が6.16%(2018年厚労省調べ)と低いことに驚く声が多くきかれた。この「男性の育休取得」を、小さなこどもを持つ働く「女性の活躍」との関連で見ていきたい。 まず、日本における育児休業制度とはどのようなものか。現在につながる法定の育児休業制度は、日本では1992年に所得補償のない状態で施行、1995年に雇用保険による一部所得補償が導入され、その後何度かの改正を経て現在では原則として休業開始時賃金月額の50%(休業開始後6か月間は67%)支給される。父親の育児休業取得を促す仕組みとして、取得回数と期間の特例がある。子1人につき原則1回である育児休業の回数を、子の出生日から8週間以内に父親が最初の育児休業を取得した場合に2回目の取得を可能とし(「パパ休暇」)、また原則満1歳までの育児休業期間に対して、夫婦の両方が時期をずらして取得することによって、子どもが最大1歳2か月まで休業を可能としている(「パパ・ママ育休プラス」)。それでも男性の取得率は大きく上がっていない。主な理由として、「会社での育児休業制度の未整備(27.5%)」に加え、「業務繁忙による職場の人手不足(27.8%)」、「職場で育児休業を取得しづらい雰囲気(25.4%)」等が挙がっている(出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「仕事と家庭の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」(平成29年度))が、取得後に職場で不利な扱いを受ける等のパタニティハラスメントの存在も否めない。共働き世帯が1997年を境に増加し、専業主婦世帯の2倍を超すようになっても(2018年男女共同参画白書)、共働き世帯の夫の家事・育児にかける時間は1日平均46分(妻は4時間44分)と大幅な差がある。(2016年社会生活基本調査)。 この男性の育児休業取得の促進は、特に日本企業、また日本社会にとってどのような意味があるだろうか。それは、働く女性の活躍の加速である。私は女性の活躍を阻むもののひとつとして、専業主婦世帯が多かった時代の名残で、育児は母親がすべき、従って女性は(仕事をしていても)家事・育児をメインで負担すべきという考え方とそれにより、女性が家事・育児に時間を取られすぎている状況があると考える。特に子どもが小さい時には、保育園に子どもを迎えに行き、食事を与え、寝かしつけてから夜仕事をする、というサイクルが続くと心身共に疲弊し、当初希望していてもより重い役割を担うことに逡巡するリスクは必ずある。せっかく管理職になっていても、疲弊して管理職を降りる決意をするケースも存在する。なお、この「ワンオペ育児」を助長しているのが、女性(母親)のみによる育児休業制度の取得だと考えており、この間に母親が家事・育児をメインでカバーする状態が確立してしまうと、仕事復帰後にその状況を変えることが難しくなる。男性(父親)側も、手伝おうにも習熟していないので対応が難しく、また入る隙がないということになる。男性が育児休業を取得することにより、まず育児をしっかりと体験するので、母親(女性)と役割分担ができる知識とスキルが身に付き、子どもとのアタッチメントが高まる。この経験は早い段階で行うほど効果がある。主に母親が育児休業を取得する現状においては、男性(父親)は産後直後と、女性(母親)の仕事復帰の前に2回取得できると、比較的初期に育児・家事の分担ができ、女性の早期の仕事復帰とその後の仕事と育児・家事のバランスがとりやすくなるのではないかと思う。 育児は母親がするものという固定概念を崩すには大きな力が必要となる。職場で実質的に促進するなど、経営側も現場も取得を本気でサポートする風土を作らないと、給付金を80%に引き上げても男性の育児休業取得は促進されないと考える。また、実際に取得する場合には、うまい引継ぎや生産性の向上も求められるだろう。働き方改革、日本の雇用・人材マネジメントの改革の一環として、ぜひ特に日本企業で男性の育児休業取得に向けた後押しをしていけると理想的である。まずは各企業で定めている年間5日程度の有給の「育児休暇」の取得からスタートするのでも意味があると考える。

back_to_top