キャリア

何十年にもわたり組織は非常にエンゲージメ ントの高い社員がもたらす恩恵を認識し、理解を深めようとしてきました。マーサー | シロタが Engagement InstituteTMと共同で実施した最近の研究「エンゲージメントのDNA:組織がエンゲージメントの高い文化を創造・維持する方法」 では10人中9人のシニアリーダーがエンゲージメントは重要であると考え、10の組織のうち8つの組織が正式なエンゲージメントプログラムを既に導入していると回答しています。エンゲージメントは明らかに重要なフォーカスエリアになっていま す:組織は従業員のエンゲージメント向上のために年に約10億ドルの予算を投入していると推計されています1。しかしながら、従業員エンゲージメントにこのように巨額の投資を費やしており、また従業員エンゲージメントの推進に利用できるさまざまなアプローチが存在するにもかかわらず、 ほとんどの組織は未だに、エンゲージメントの課 題克服における進捗状況に不満を感じています。 実際のところ、調査の結果、マネージャーがエンゲージメント調査のデータに対して望ましい結果を達成するためにはどう対応すればよいかを知 っていると思う、と回答したHRリーダーは50%に留まりました2。 ではどこに問題があるのでしょうか。関連するデータや洞察の不足でしょうか?従業員の意見を聞き、その懸念を理解することができないのでしょうか?それとも、組織はただデータを収集するだけで満足し、良い結果を生むよう意図された行動計画の実行を怠っているのでしょうか?当社は、さまざまな利害関係者(ビジネスリーダー、HRリーダー、最前線のマネージャーや従業員)と議論する中で、エンゲージメントレベ ルの高い組織が人事的課題に取り組む方法と 従業員を関与させるために使用する無数の方 法には、それぞれ違いがあるにも関わらず、1つの点は共通であることに気が付きました。それは、エンゲージメントレベルの高い組織はエンゲージメントへのアプローチの基軸を1つの重要な価値「共感」に据えているという点です。 中には「従業員の職場での体験をより良く理解するために従業員エンゲージメント調査を実施するということ自体が、つまり共感的になっているということではないか」という人もいるでしょう。ある程度はそうも言えますが、現実的には、調査は最初の一歩に過ぎません。共感の原則は調査プロセスのみならず、従業員エンゲージメントの過程の全場面に適用されるべきで、特に行動計画などの調査実施後の関連する対処への適用が重要となります。 デザイン思考を採用して共感的になる   従業員エンゲージメントへの共感的アプローチは概念的には比較的単純だと思われるかもし れませんが、効果的に実施するためにはほとんどの組織が既に採用している最も伝統的な方法からの大胆な変更が必要となります。 共感的な、エンゲージメントレベルの高い組織を作るという目標を達成する方法をより良く理解するために、マーサーは人を中心にしたデザイン思考を取り入れることで、エンゲージメントの課題に対処し、従業員エンゲージメントの専門家となっている一流組織と協働しました。デ ザイン思考の枠組みは数多くありますが(良く知られたところでは、スタンフォードやIDEOなどが提唱)、すべてに共通するのが、従業員を中心としたアプローチの整備における主要な三段階、つまり、模索、創造、実現です。この三段階は 以下の通り概説されます: 模索段階 従業員やその他の同組織に属する利害 関係者、ならびに問題の背景について詳細を知る 把握した事項と様々な立場にある人から話を聞いた内容を統合する 創造段階 過去のステレオタイプから離れ、画期的なアイディアを構築するため繰り返し考察する 学習するためのプロトタイプを構築し、アイ ディアを改善するための土台を提供する 実際のユーザー、つまりこの場合には従業員にアイディアとプロトタイプを試してもらう 実現段階 選択した解決策を実施し継続的改善に焦点を当て続ける     模索段階   第一段階は、さらに発見と定義の2つのステップに 別れます。 発見 従業員エンゲージメント調査を使用して従業員からのフィードバックを収集することは、組織が従業員の固有のニーズを模索し、従業員が価値を認めるものを発見するのに役立ちます。従業員エンゲージメント調査の結果は、ビジネス上の目標を達成するだけでなく、従業員のニーズに真に対応する意義深い行動をデザインするために、組織がどこに共感する必要があるのかを示します。 このステップにおけるその他の重要な要素は、説得力のある問題提起をすることです。優れた構成の従業員エンゲージメント調査は将来の方向性を示す問題の中核的要素を特定します。中核的要 素には以下が含まれます: 誰が — 問題に最も関連性の高い特定の従業員セグメントを明らかにする 何が — 問題により生じる影響を理解する いつ — 調査を複数回実行することでその影響がプラスなのかマイナスなのかにかかわらず(例えば人員減や離職率など)特定の従業員動向がいつ生じたのかを特定する どこで — 問題が発生している場所を特定する なぜ — 統計分析を使用して従業員エンゲージメントを変動させる要素を特定する   定義 組織は収集した情報をすべて統合する必要があります— こうして知り得た情報を活かし、パターンを特定し、意義を見出し、自社の従業員動向の全体像を描きます。またこのステップで組織は、全般的従業員エンゲージメントアーキテクチャの基礎を策定し始めます。発見した事柄を従業員の体験というストーリーに変換することで、問題の根本を特定し、それを今後どう解消していくのかを明確にします。ストーリーはシンプルなもので構いません。例えば私が先日対応したテクノロジー企業では、従業員に高い自律性を提供し、実験的アプローチを会社のプロセスに組み込むことで従業員のエンゲージメントに成功しました。これは単に 経済的報酬を得ることだけでなく、革新する機会を提供されることでモチベーションが上がる傾向がある従業員には効果がある方法です。 組織の共感性を高める主要な部分は、従業員の過去の経験のマッピングと将来の経験の予想図を通して従業員の体験の分析を強化することです。その目的は時間の経過に沿って従業員の体験がどう変動するのかを把握することです。この他にも以下に挙げる要素が追加される場合があります:ハイポイント(
従業員から最も高い評価を獲得した瞬間)、ブレー
クダウン(人により受容の度合いが大きく異なり、一部の従業員からの評価を下げることにつながった瞬間)、感情(雇用主が従業員の人物像を定義することで予測できる特定の変更に対する従業員の心理的
反応)、タッチポイント(組織における従業員の体験全体のさまざまな部分とのつながり)。これは各組織に固有のエンゲージメントの基礎的部分を理解し、従業員のエンゲージメントを促進するプロセスを明らかにする上で役立ちます。また、従業員の体験のさまざまな構成要素同士を繋げることを可能にします。つまり(従業員との直接のやり取りに関連する)フロ ントステージから(エンゲージメントプログラムの導入を成功させるために必要な舞台裏の準備を含む) バックステージを結び付けます。 従業員の過去の体験を効果的にマッピングし、将来を想定することで以下が可能になります: 従業員の体験と使用されているシステムに関する明確な概要を提供する(業績管理や学習と開発など) カテゴリー間(例えば、報酬と俊敏性)や組織内関連グループ(マネージャーと従業員など)のコミュニケーションを促進する 特定の事柄が機能していない場所を見つけ、最も適したオプションを特定するために優れた改善と意思決定への支援の機会を示す     創造段階 ほとんどの組織が従業員の声とニーズに耳を傾ける ことに積極的であるものの、行動計画は未だに「閉じられた扉」の向こうで行われることが一般的で、そのため真に共感的になり得ていない。創造段階は利用可能な解決策を協力して特定するためのアイディアの発散と収束の段階、そして、模索段階からの結果の上に構築する段階です。この段階の「観念化、プ ロトタイプ、テスト」の3つのステップは循環的サイク ルとして機能します。 観念化 アイディアの創造において真に共感的であるために、エンゲージメントレベルの高い組織は従業員を行動計画策定に巻き込んだ参加型のデザインアプローチを採用しています。こうした組織は従 業員は重要な知識を提供できる存在であるとみなし、自らのニーズにどう対処すべきかについて、自分自身を表現するための適切な手段を提供された場合には、正確に表現できると認識しています。究極の目標は従業員それぞれに、組織で経験した独自のス トーリーを話してもらうことです。 これは効果的な従業員エンゲージメントプログラム策定の中核として機能し、多くの利点を提供します: 既存の解決策を超越することで革新的になる潜 在性を高める 従業員の多様性に富む見地と集合的知恵を活かす 模索する価値のある予期していなかった知識を 発見する イノベーションのためのオプションを増やし、柔軟性を高める 創造されるアイデアを所有しているという感覚をもたせる プロトタイプ 従業員のエンゲージメント行動計画の観念化が完了したら、最も有望なアイディアに注目しながら、共感性と革新の可能性を損ねることなく、組織を最善の解決策に導くのに役立つ質問に回答するためにプロトタイプの構築が重要になります。従業員エンゲージメントのための行動のプロトタイプは従業員の関与を促進するものである限り、形式に縛りはありません:従業員が ゲームとして楽しむコンセプトのストーリーボードやすべてを取り込んだガジェット、もしくはロールプレイング活動などさまざまな形式の活動が挙 げられます。プロトタイプはシンプルなもので構いません ̶ 手の込んだ詳細なものである必要はありません。解決策を示すいくつかのポイントや実施される手順を概説するだけで構いません。重要な点はプロトタイプが共感のアイディアをサポートし、従業員が実際に体験できるものであるという点です。 プロトタイプ作成プロセスをガイドする4つの原則: とにかく始める — 先延ばしにしない。従業員
エンゲージメントに関して何を行うか明確な考え
がなく、詳細が不明な場合でもそれらに阻止されてはいけません。何らかのメモやアイディアがあるだけでプロセスを進行するには十分です。 明確なインジケータを探す — プロトタイプは 一定の変数(例えば、業績評価と昇給や企業年金基金への会社の拠出比率を結びつけるかどうかなど)が含まれる特定の質問に対して回答することを可能にするため重要です。こうした変数は次 のステップまたは行動(変数の関係を強めるのか方向性の変更を決定するか)を支援するための根拠として機能します 考えを破棄する用意を整える — プロトタイプは絶対の解決策ではありません。従業員のエンゲージメントを高める方法は多数あります:組織は 1つのアイディアや解決策に固執しすぎることなく、他のオプションを模索することにもオープンな姿勢を保つ必要があります。 従業員に注目し続ける — 「従業員が求めるものとは?」と問い続けることが重要です。この質問への答えは有意義な従業員からのフィードバックを収集することでプロトタイプの作成に焦点を当てるのに役立ちます。こうした従業員からのフィードバックは、繰り返し行われる過程で情報を提供し次のステップにつながります。 クラウドソーシングキャンペーン: 会社は従業員に対し、人事プログラム(例えば、外部で行う社内行事や福利厚生プログラム)のための予算確保に参加するよう奨励します。その方法は金銭的価値はないものの、社内通貨として機能する仮想トークンを使用して特定のイベント案やイニシアチブに「投票」するよう依頼するというものです。例えば、人事プログラムのためにシニアリーダー1人当たり100米ドルの予算がある場合、シニアリーダーは最も有望なプログラムを特定し、会社がこうしたプログラムにどのくらいの予算を割り当てるべきかを決定するために、従業員向けに50米ドルの仮想トークンを発行します。会社の資金の用途に対する従業員の考えを組織に示す機会を提供し、従業員が予算の決定により直接的な影響力を持てるようにし、どういった体験が最高の結果と価値をもたらすのかについての意見を表明する機会を提供することで、従業員のエンゲージメントを高めます。 見せかけの扉: 見せかけの扉とは通常、従業員エンゲージメントイニシアチブまたはプログラムに対する行動を依頼するシンプルなウェブペ ージを指します。多くの場合従業員は「詳細を 表示」または「参加登録」といったボタンをクリックするよう促されます。組織はその後、さまざまなエンゲージメントプログラムに対する従業員 の行動と反応を追跡できるため、どのプログラ ムが最も多くのクリックレートを獲得したか、もしくはどのプログラムの訪問者数が最も多かっ たかなどを判断することが可能で、従業員の関心に最も適合するプログラムを理解する上で役立つ価値あるデータを提供します。 オズの魔法使い: このシナリオでは、従業員は自分がどの従業員エンゲージメントイニシア チブに参加しようとしているのかわかりません。代わりに背後でフィードバックが収集されます。例えば私が最近対応した小売企業では、従業員はカスタマーサービススキルの改善に繋がるより良いトレーニングアプローチを希望していました。そのため、企業は最善のトレーニング実施方法を探るため、新しいオンラインプログラムを作成しました。この会社は、従業員との最適な通信回数などを判断するためにテクノロジーの使用を精査することを希望しました。従業員がオンラインプ ログラムを受講する中で、従業員の行動と応答(例えばプログラム内の1つのページから次のページ への移動方法など)が指導、モニター、記録され、トレーニング実施方法のデザインを形成し、洗練させる上で生かされました。さまざまな変数に対して テストを実施し、テスト結果に従ってトレーニングの デザインを採用することで、この小売り企業は従業 員のニーズに最適なトレーニングをカスタマイズす ることに成功しました。 テスト プロトタイプが現実的な解決策になるこ とを確認するために、テストを実施する必要があります:従業員からプロトタイプに対するフィードバックを引き出し、従業員エンゲージメントへのフォーカスを強化します。またテストは循環的サイクルをサポートし、言うまでもなく最も適した解決策を特定する上で重要です。 テストへの共感的なアプローチは循環プロセスの中で従業員のフィードバックを収集し、従業員エンゲージメント行動計画のデザインを形成する上での一助となります。「マイクロパイロッティング」 は1つの有用な選択肢で、市場の最新動向であり、従業員のフィードバックを取得する優れた方法です。マイクロパイロットの実施には多岐にわたる方法があります。私がエンゲージメントレベルの高い組織と仕事をしてきた経験から得た、いくつかの例を以下に列挙します。   実現段階 従業員エンゲージメントプログラムの実行段階で 共感性への焦点を維持するために、開発には一貫性が必要で、すべての利害関係者は継続的学習のアプローチを採用する必要があります。実現段階で成功している組織は共感的アプローチには真のインパクトがあり、従業員エンゲージメントの取り組みは本物でなければならず、単に見世物として構築 されるべきではないことを理解しています。そしてさ らに重要なのは、従業員エンゲージメントプログラ ムは「実行可能」かつ「学習可能」でなければなりま せん。   実行可能   o 参加型:従業員が導入に参加している。 o 当事者意識:従業員エンゲージメントの推進の責任はリーダーシップとHRのみが負うものではありません。この重要な責任は一般従業員にも委任されている。 o 透明性:従業員は従業員エンゲージメントプログラムの全側面に関し明確に理解し ている。 o 応答性: 従業員エンゲージメントプログラ ムは重要な要素を捉えるようデザインされている(例えばボーナスに関連するコミュニケ ーションや昇進の決定、または会社からの退職など)。 o 包括的:従業員はエンゲージメントへの取り組みに個人的な利害関係があると感じており、誰も疎外されているとは感じていない。 o ルールに基づく:インセンティブやその他 の行動に対する結果が生じるようにすることで、行動を強いるために公正な方針の枠組 みを導入し、特定された従業員エンゲージメント対策が適切に導入され、希望した通りのインパクトが達成されていることを確認できるようにしている。   学習可能:   進歩的な調査デザインとは?エンゲージメントのレベルの高い組織は、1度のみ実行する従業員エンゲ ージメント調査を作成することはありません。こうした組織は定期的にエンゲージメント調査を実施し、 従業員の意見を継続的に聞けるようにします。調査に用いられる質問の数は通常限られているため、 優れた調査の体験を提供できるよう、現在の状況を反映する適切な質問を選択することが非常に重要です。調査の質問は、全般的な戦略に沿った内容で、長期的な目標を視野に入れつつ、組織内で変革 が自然に進展していく過程に合わせて策定される必要があります。シニアリーダーが組織の変革が従業員にもたらす影響について知りたいと言う場合には、調査の質問は革新的な変化に対する従業員の反応を的確にとらえる質問でなければなりません。 例えば、組織の変革が進む中で調査の質問は、初期段階では従業員の変化に対する意識について尋ね、その後の調査では、従業員の変化に対する理解やコミットメントについて尋ねるものに進化した形式をとるかもしれません。 最後に 創造的破壊が進むこの時代において、従業員のエ ンゲージメントの向上に成功する組織は、競争に先んずることは明白です。人材を巡り競争が激化するビジネス社会で勝利するためには、組織は有意義で豊かな従業員の体験をデザインするためにデ ザイン思考を導入することで共感性の原則を強化し、モデル化する必要があります。組織が従業員に対して真に共感的で、文字通り従業員の立場に立ち、従業員エンゲージメントイニシアチブに対し、継続的学習に重点を置いた循環的アプローチをとる場合、その組織は発展的な人材の構築に成功し、 ビジネスの成功は自然についてくることでしょう。 1 Mercer | Sirota and Engagement Institute study, DNA of Engagement: How Organizations Create and Sustain Highly Engaging Cultures, 2014. 2 Ibid.

アンディ・リュン | 21 8 2018
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