キャリア

M&A におけるディールバリューを高めるには、人事関連リスクに対し、早期に、また明確かつ体系的に取り組むことが重要です。人事関連リスクの主な例として、拙劣なインテグレーション、カルチャーや組織の違いへの無配慮、優秀な人材のリテンションの失敗、不明瞭な従業員コミュニケーションなどがあり、これらによってディールバリューが著しく毀損するリスクがあります。   うまく機能している HR M&A チームは、HR M&Aプレイブックを作成し、ディールプロセスを管理する共通アプローチを確立することで、これらの共通する人事関連リスクに対処しています。   HR M&A プレイブックには、共通に含めるべき重要な要素があります。   第一に、プレイブックは実戦的である必要があります。従来の HR M&A プレイブックは、総合的な百科事典のような機能をしており、各 HR ワークストリームのプロセスマップに加えて、想定される全てのディールシナリオを網羅していました。   従い、実際のディールにおいては、HR チームで活用しにくい状況がありました。プレイブックの効果を高めるには、活用されなければなりません。HR M&A プレイブックの開発にあたっては、情報過多を防ぎかつHR チームへの十分なガイダンスを提供する必要があります。HR チームも、プレイブックをどのようなディールシナリオにも適用できなければならず、難しいバランスを保つことになります。   第二に、プレイブックでは、ディールサイクル全体における HR (人事部)の役割を定義する必要があります。ディールバリューを最大化するため、HR は戦略的パートナーとして機能し、ディールコンテクストにおける役割と、リスクの軽減やディール目的の達成のためにどのように貢献できるかを明らかにしておかなければなりません。明確に定義されたプレイブックは、HR M&Aチームの各メンバー(経験の多寡に関わらず)が果たすべき役割を理解し、ディール固有の問題に素早く取り組むうえで役に立ちます。   タスクや判断基準が明確だと、HR M&Aチームメンバーの自信につながり、財務や法務、IT など他のチームとの人事面での 連携がしやすくなります。ディール全体を通じて組織連携を図ることで、組織横断で判断すべき重要な意思決定を、個別チームが単独で行うことを防ぐことができます。   このような環境では、HRチームは迅速に実行ができ、早期のディールバリューへのポジティブな影響が期待できます。それこそが究極のゴールです。   第三に、プレイブックにはデューデリジェンスの項目が含まれている必要があります。HR が関わるのはディールクローズ直前あるいはクローズ時となり、十分なデューデリジェンスが行われていないケースが散見されます。現在は売り手優位の市場であるため、買い手がデューデリジェンスに充てられる期間が短くなり、ますます売り手からの情報が不足する傾向にあります。   HRチーム がディールの早い段階で関与しなければ、買い手はディール価格やインテグレーション戦略、ディールスケジュールに重大な影響を及ぼし得る不要なリスクを負うことになり、結果的にディールが「不成立」になったり、シナジーが失われたりすることがあります。デューデリジェンスで明らかになる一般的な人事関連の問題には、経営権の移転によるチェンジ・オブ・コントロール(CiC)のトリガー、高額なセベランス(解雇・離職手当)の取り決め、リテンションリスク、カルチャーギャップ、確定給付型年金の積立不足、報酬・福利厚生制度のコンプライアンス問題などがあります。   効果的な M&A プレイブックには、適切な情報を請求し、レッドフラッグイシューを迅速に特定するためのデューデリジェンスツールに加え、経営企画部等のディールチームが早期に HRチームを動員すべき理由を示したビジネスケースが示されています。   第四に、プレイブックでは、推奨されるインテグレーションアプローチの概要を説明します。ディールは一つとして同じものはなく、例外が多いため、推奨されるインテグレーションアプローチ (または一般的なディールタイプに対する様々なアプローチ) について、HRチーム と経営陣が事前にすり合わせておくことが大切です。このプロセスの一環として、目指す統合成果について各ワークストリームで目線を合わせ、このアプローチをとる時期、予算、リソースの要件について理解し、例外や逸脱の承認プロセスを確立します。   ディールが発生しても、規定されたアプローチがあれば、各ワークストリームで例外事項が必要かどうかを素早く判断し、必要な場合は確立された承認プロセスに従って例外承認を得て進めることができます。これによりディールの実行が大幅に加速され、シナジーの実現につながります。インテグレーション戦略は、ディール目的にあるゴールを実現するようにデザインする必要があります。多くの場合、M&A の目標策定は CEO が担当しますが、HRチームは人事の観点から執行を担当します。   人事関連のインテグレーションアプローチは事業戦略に根ざし、以下の通りディールにおける人事関連の全ての側面に対応することが求められます。   · 今後のオペレーティングモデルと組織構造を明確に定義する   · 役割、責任、意思決定権限を一貫した形で定義する   · 今後の事業目標を支えるカルチャーを創出する   · 重要な人材を見極め、リテインする計画を立てる   ·  削減するポジションを決め、対象者を客観的に見極める計画を立てる (必要に応じて)   · 事業上の優先事項に合わせた報酬体系を立案する   · 各部門に求められる変化への適応を促す統一的かつ一貫したコミュニケーションプランを策定する   · 従業員のクロストレーニングと順応をサポートする要員を配置する   · 給与計算や福利厚生管理などの基本的な 人事 機能を維持・継続する   第五に、プレイブックにはプロジェクトマネジメントツールを含める必要があります。M&A ディール全体においてプロジェクトマネジメントが大切です。買収前、買収後の財務目標を達成するには、マイルストーンと成功指標を設定し、主要なタスクを明文化し、期日までに完了していくことが求められます。   確固としたタスクリストのテンプレートは、あらゆるプレイブックの中核とになります。これらのツールにより、ディールの固有の成果に基づくプロジェクトプランを総合的に策定することができ、個別の HR ワークストリームの出発点となります。これらのツールを活用して、重要なステップを確実に実行し、早期のシナジーによるコスト削減など、途中成果の管理ができます。   「アジャイル」プレイブックは常に進化しています。HR プロジェクトマネジメント事務局には、ディール終了時に事後分析を行い、今後に向けた教訓として新しいベストプラクティスをプレイブックに盛り込むことが求められます。   最後に、HRチームが有効にプレイブックを活用できるよう事前にトレーニングを行い、また必要に応じて特定の M&Aイシューへの対処について、社外のアドバイザーを動員することも重要になります。   適切に実行された M&Aディールは、最も貴重な資産である「人」を中心に据えるものです。ディールに伴う重大な人事関連リスクを考えると、HR M&A のレディネス(素地)は事業上不可欠であり、それはバリューを高めるための変革について伝え、指揮する機能を持たせることから始まります。   ディールに備え、早期に準備し、社内のプロセスを構築し、社外の専門家に頼ることで、HR チームはディールチームにとって貴重なメンバーになることができます。   アジャイル M&A プレイブックを活用することで、HR チームは今後の全てのディールで事業を効果的にサポートし、人材のエンゲージし、企業の短期的および長期的な業績を向上に貢献することができます。   詳細については、M&A サイト http://www.mercer.com/mergers-acquisitions をご覧ください。

バート・エルマンズ | 19 9 2019
tiles1

Contact Us

Speak with a Mercer consultant.

back_to_top