Dr. Patrick Hyland

パトリック・ハイランド博士

マーサー・シロタ

パトリック氏は組織の研究とコンサルティングで 15 年以上の経験を有しています。現在、従業員のライフサイクル調査、入社時の慣行、上級経営陣のの生産性、職場でのマインドフルネス、ベストプラクティスに向けたアンケートなど、さまざまな従業員のトピックに関する研究を行っています。

記事

キャリア

組織への信頼度: コミットメントの高い労働環境を作る鍵

数十年にわたり、組織のリーダー、人事担当者、産業組織心理学者はコミットメントの高い労働環境を作る方法を模索してきました。離職率に係わる経費とビジネスの中断を考えると、これは当然のことでしょう。ある最近の調査では、離職に掛かるコスト (退職関連費用、従業員補充に掛かるコストなど) は、在職中の従業員の給与の90から200パーセントに相当することがわかりました。  離職率が高まると1、組織の構造が脆弱になり2、   無形の知識とスキルの喪失3、   運用有効性の低下4、   事故率の上昇5、   顧客サービスと品質への影響6、そして顧客満足度の低下が起こり7、それにより会社の財務パフォーマンスに悪影響を及ぼしかねません8。 コミットメントを高めるために、多くの組織は従業員を中心とする環境を築こうとしています。これらの組織は、膨大な時間、労力、およびリソースを費やし、従業員を動機付ける要因の特定、従業員エンゲージメントの評価、従業員の経験の強化に励んでいます。たとえば一部の組織では、マネージャーが直属の部下の重要なニーズを満たせるように「在職インタビュー」を実施しています。従業員が仕事をより個人的に意味深く満足いくものにできるように、ジョブクラフティングの実践を取り入れている組織もあります。 私たちの経験によると、こういった施策には有効な効果がありコミットメントの向上につながります。しかし、これらの影響は長続きするものではなく、しばしば一時的な修正と局部的な改善にとどまり、広域にわたる組織的な変化をもたらしません。むしろ、こうしたエンゲージメントを構築するための活動は、従業員側に事業に対する根本的な疑問や懸念がある場合、裏目に出ることがあります。不明瞭な戦略、非効率な作業プロセス、不明確なパフォーマンス目標、クライアントや顧客のニーズを満たさなくなった製品やサービスは、従業員の不満を募る要因となります。最近ある従業員は次のように述べています。「私はこの会社が大好きですが、会社の方向性が気に入りません。無意味なことに時間をかけすぎています。クライアントに会って売るという、私たちがやるべきことから遠のいているように思えます。」 組織の葛藤に直面した場合、愛社精神にあふれる従業員でさえもより良い機会を求めて離職するでしょう。最近のマーサー シロタによるエンゲージメントに関する調査では、退職した従業員の4分の1はエンゲージメントの高い社員であったことがわかりました。 エンゲージメントが従業員の在職を保証しないのであれば、コミットメントの高い組織を作り上げるにはどのような方法が最善なのでしょうか。新しい研究では、個々のコミットメントは従業員の体験よりも事業のパフォーマンスに関連している可能性が示されています。近年、研究者たちは組織の効力感 (組織のメンバーが集団的な能力、使命、そして事業のレジリエンスにどの程度信頼を寄せているか) と従業員のコミットメントとパフォーマンスの関係性を探り始めています。組織的効力感という概念は、アルバート・バンデューラの貴重な研究に遡ります。アルバート・パンデューラは家族、コミュニティ、および社会的機関の力の一部は、それを構成するメンバーの集団的効力感、つまり協力のもとに問題を解決したり困難に対処できるかどうか、に依存すると提唱しました。この初期の理論を踏まえ、ほかの研究者たちは組織環境の効力感に焦点を当て、それが数々の重要な仕事の成果に関連することを特定しました。たとえば、カポネら(2013)は、組織的効力感が従業員の仕事満足度、幸福、およびパフォーマンスにプラスの影響を与えていることを発見しました。また、ゼラーズら (2001)   は、集団的効力感が高い医療従事者ほど仕事満足度が高く、離職の可能性が低いことを特定しました。 この研究の情報をもとに、当社では最近、組織に対する従業員の信頼度と従業員のコミットメントとエンゲージメントの関係性を探りました。小規模、中規模および大規模の組織で働く、1,700人以上の従業員から会社横断的にデータを集め、一連の分析を行った末、3つの主な調査結果が浮き彫りになりました。   1. 組織の信頼度は、従業員のコミットメントに関連している   多数の診断項目において、従業員の信頼度と従業員のコミットメントに、顕著な正の相関が見つかりました。従業員は、市場に合った製品とサービスを持つ安定した組織で働いていると感じる場合に、組織に留まりたいと思う可能性が高かったのに対し、従業員が組織の将来に信頼を抱いていない場合は、コミットメントレベルが急激に下降していたのです。実際、組織の将来を信頼できないと感じる回答者の40%以上が、1年以内に退社する意向があると答えていました。   2. 組織への信頼度は、適切な労働環境で非常に高くなる   統計分析に基づき、組織への信頼の原動力として、4点の基本項目を特定しました。1つ目は、明確なコミュニケーションです。従業員が会社の目標を理解し、組織が効果的にコミュニケーションを図っていると感じる場合に、信頼を抱く傾向が高かったのです。2つ目は、協働の実感です。従業員は、職務を超えた高度なチームワークを体験する場合に、将来を肯定的にとらえる傾向がありました。3つ目は、組織の機動性です。革新を奨励し、顧客のニーズに素早く対応する機敏な組織で働いていると感じる従業員は、将来を楽観的にとらえる傾向がありました。そして最後に、効果的なリーダーシップが重要となります。シニアリーダーが正しい判断を下していると信用している従業員は、組織的効力感をより感じる傾向がありました。   3. コミットメントの最も高い従業員は、信頼があり、エンゲ ージメントも高い   信頼のある従業員が組織を去ろうと考える傾向が低いという調査結果に加え、エンゲージメントが従業員コミットメントを予測する大きな判断材料であることもわかりました。実際、従業員が組織に信頼をおいており仕事に愛着を感じている場合、退職を希望する傾向は低いのです。 また、エンゲージメントと信頼の間には顕著な正の相関関係があることがわかりました。これらの2つが好循環により促進しあい、大きな活力、努力、忠誠心を生み出しているのです。統計分析に基づき、組織が効率的で、シニアリーダーが効果的で、将来の昇進進路が約束されていると感じられた場合、従業員の自信とエンゲージメントが高くなる傾向にあることがわかりました。 すべてを合わせて考察すると、分析から組織への信頼度が従業員のコミットメントに影響する重要な要因であることがわかります。コミットメントの高い労働環境の構築を求めるリーダーとマネージャーにとって、このことから重要な疑問が浮かび上がるでしょう。組織への信頼度を高めるには何が最善なのだろうか。研究に基づき私たちは次の4つのステップを推奨しています。   1. 将来を予測する   多くの会社にとっては不安定な時期にあります。コミットメントや優先順位が頻繁に変化する中、多くの従業員が混迷の中で方向を見失ったと感じているようです。最新のマーサー シロタデータベースによると、シニアリーダーが明確な指示を出していると感じていると報告したのは従業員のわずか9%でした。最近の現場調査でわかったとおり、明確な戦略的意図が欠如していると、信頼を失いかねません。組織がどこに向かっているのかがわからなければ、従業員が将来を楽観視するのは困難なのです。あなたの組織が近年、数々の変化を潜り抜けているのであれば今こそ、あなたの従業員が戦略的方向性をどれくらい理解し支持しているのかを評価するときかもしれません。   2. 好奇心、創造性、コラボレーションの文化を作る   文化は、日常的な人の考え方、感じ方、行動を形づける、目に見えない組織のインフラです。私たちの研究によると、従業員は、協力的な関係で一緒に作業する「パートナーシップ文化」において労働する場合に力強く前進することがわかっています。信頼は、従業員がスマートなリスクを負い、斬新なアイデアを追い求め、現状に疑問を投げかけても安全であると感じる環境で生まれるものです。しかし、問題はあります。パートナーシップの文化は、正しいタイプのリーダーシップを必要とします。私たちは、リーダーやマネージャーがサイロを構築し、短期的な財務に固着し、スタッフを細かく管理することで、創造性とコラボレーションをつぶす様子を見てきました。そのため、コラボレーションのある文化を構築したいのであれば、上層部から始めることが必要となります。    3. パフォーマンスの障壁を取り除く   私たちの研究によると、ほとんどの従業員は、入社して間もない頃は非常にモチベーションが高いことがわかりました。しかし、初期のその活力は、従業員が過剰な規則規制、不要な官僚的な動き、そして時代遅れのツールや技術が伴う環境で働く必要を強いられた場合に、しばしばモチベーションが低下します。職場の障害物が増えるほど、従業員の不満が募り、心離れし、うんざりさえしてしまう傾向にあります。コミットメントの高い労働環境を作りたいのであれば、従業員が日常的に最高の仕事をできなくするような、パフォーマンスの障害物を特定して取り除く必要があります。   4. 昇進進路を明確にする   私たちの調査では、コミットメントの最も高い従業員は、組織の将来と職業上の自身の将来の両方について前向きにとらえていることがわかりました。複数のクライアントと研究プロジェクトから、職場で成長し、発達できると感じる従業員は、より懸命に働き、より長く在職し、より高いパフォーマンスを達成する傾向があることがわかりました。しかし、マーサーのデータでは、組織内での潜在的な昇進進路を明確に理解している従業員は、わずか57%だったのです。残りは混乱しているか悲観的な見方を示していました。この混乱に対抗するための最善の方法は、従業員が会社内でどれくらい成長できるのかを理解しやすくする、説得力のあるのキャリア フレームワークを作成することです。入念に設計されたキャリア フレームワークは、従業員の仕事と組織の将来についての考え方に大きく影響することがわかっています。 これらの推奨事項の中核には、シンプルな前提があります。あなたのリーダー、マネージャー、人事担当者が、納得感のある将来のビジョンを明確に伝え、適切な文化を育成し、パフォーマンスを促して魅力的な昇進進路を作ることによって、従業員の信頼度を高めることができます。それにより、今度は組織がコミットメントを高め、離職率を抑制し、集団的パフォーマンスを改善することにつながるでしょう。 1 Allen, Bryant, & Vardaman, 2010 2 e.g., Batt & Colvin, 2011 3 Nyberg & Ployhart, 2013 4 e.g., Ton & Huckman, 2008 5 e.g., Shaw, Gupta, & Delery, 2005 6 e.g., Hancock, Allen, Bosco, McDaniel, & Pierce, 2013 7 Heavey, Holwerda, & Hausknecht, 2013 8 e.g., Park & Shaw, 2013; Shaw et al., 2005

組織への信頼度: コミットメントの高い労働環境を作る鍵
キャリア

Pulsing with a purpose: building an effective employee research program

近年、毎年の従業員エンゲージメント調査を補うかこれに代わるものとして、パルスサーベイを導入する組織が増えています。技術の進歩により、ビッグデータや人工知能に対する期待も高まり、多くのリーダーやマネージャー、HRのプロが、従業員の定期的なフィードバックを強く求める傾向も強まっており、簡単な調査を使った従業員の姿勢やエンゲージメントのレベルの調査が毎四半期、毎月、毎週、さらに毎日といった頻度でも行われています。 今日のビジネス環境がいかにダイナミックに変化しているかを考えれば、従業員からの定期的なフィードバック収集の必要性にも納得がいきます。 十分に設計されたパルスプログラムを使えば、従業員のエンゲージメントのレベルや主な懸念、職務上の障壁や組織内に生じてきている問題に関する、価値あるリアルタイムのインサイトを生成することができます。ただ、弊社ではまた、多数の組織が無計画にパルス調査を実施し、データ量が多いほどインサイトやマネジメント、パフォーマンスが向上すると無邪気に仮定しているということにも気が付きました。しかし、しっかり設計された調査戦略なしでは、頻繁なパルスサーベイはリーダーやマネージャーの負担になり、従業員エンゲージメントが低下することが判明しています。 皆様の会社で現在、パルスサーベイを実施されているか、これからパルスサーベイ活動を進められるのであれば、まずは、ビジネスの優先順位を念頭に、調査方法から分析方法まであらゆる項目を検討した上での、調査に関する確固たる戦略が必要です(図1参照)。 このレポートで、今後サーベイを開始する前に検討が必要な重要な5つの質問をハイライトしています。 ビジネスの戦略面での優先事項は何ですか? この20年間ほどで、仕事の世界における変化の激しさや不確実性、複雑性、不透明性は増してきています。 弊社の調査によれば、従業員は間違いなく気づいています。 従業員の30%は、組織の方向性を明確には把握していません。 32%は、外部の変化に適応する自社の能力を信用していません。 44%は、自身の将来のキャリアパスを十分に理解していません。 出典:最新のMercer | Sirota global norms これらの結果は、多くの組織で相当数の従業員が混乱し、懸念を抱き、困惑を感じており、仕事の未来がぼんやりとしか見えていないことを示唆しています。 これらの状況を考慮すると、従業員の体験について定期的にデータを取ることは理にかなっていると言えます。最も賢明なリーダーは、今日のビジネス環境において、エビデンスに基づく意思決定、高度な人材分析、組織の意味付け(センスメイキング)、組織的な学習のすべてが重要であることを認識しています。そのため、多くのリーダーや意思決定者は、従業員の姿勢、懸念、および見解等に関するより深い理解を得ることを期待して、継続的なフィードバックの収集を強く希望しています。 しかし一部の組織は、実際に何を学びたいのかという明確な考えなしに、四半期毎の従業員エンゲージメントパルスサーベイを行えば十分であろうと仮定して、なし崩し的にパルスサーベイを実施するという間違いを犯しています。組織が従業員のモチベーションやコミットメント、維持に関する問題を抱えていて、リーダーがこれらの問題に対処する手段を講じようとしている場合は、エンゲージメントに重点を置いた四半期毎のパルスサーベイが適切でしょう。しかし、そうでなければ、このアプローチでは十分なインサイトは得られないかもしれません。 弊社がクライアントと協力して従業員調査プログラムを設計する際には、まずビジネスを中心に置いて設計を開始します。 組織が直面している社内外の最大の課題は何ですか?あなたの主な戦略的優先事項と課題は何ですか?組織はどの程度効率的に運営されていますか?組織はどの程度効果的に変化し、進化していますか?社員の主な優先事項は何ですか? 弊社では、サーベイの質問項目を検討する前にクライアントにこれらの質問を投げかけ、一緒に考えることでクライアントが組織として何を知る必要があるのかを慎重に考えていただいています。この情報は従業員調査プログラムを成功させる重要な基盤であり、調査内容の設計やサンプル抽出、管理テクニック、レポート作成、アクションプランの基礎になるのです。 はじめに 現代の組織にとって、効果的な従業員調査プログラムの開発は、戦略的に不可欠になっています。今日の複雑なビジネス環境で組織が結果を出すためには、エビデンスに基づいた人材管理、高度な人材分析、継続的な組織的な学習のすべてが重要です。これらを実践するための中心となるのが、従業員の視点です。実際に働く従業員からの定期的なフィードバックがなければ、リーダー、マネージャー、意思決定者はやみくもに業務を進めるしかありません。 パルスプログラムをこれから開始されるのであれば、あなたは社員の喫緊の問題や業績の課題、戦略的な優先事項を調査できる唯一の立場にいるということになります。しかし、パルスは万能ではありません。明確な計画がなければ、必要な答えよりも多くのノイズが生じてサーベイも裏目に出てしまいます。 最も優れた従業員調査プログラムとは、はじめから終わりまで丁寧に設計されたプログラムです。ビジネスの優先順位を明確にし、明確な調査アジェンダを作成し、調査内容の設計、調査の管理、結果報告、調査後の活動について深く考えることにより、意義のある正確な調査活動を実施することができ、実際に組織運営に影響を与えることができるのです。これを実行するための最良の方法は、プロセスの各ステップについて熟考することです。 開始に先立ち、このレポートに記載されている5つの質問を役立ててください。次のパルスを実施する前に、各質問について慎重に検討されることをお勧めします。明確な答えが得られない場合は、確実な調査を実施する準備が整っていない可能性があります。 レポートをダウンロード

Pulsing with a purpose: building an effective employee research program

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