健康

リタイアメントは世界的に変化しています。これは数十年にわたり、終身雇用制と国の年金が実質保障されてきた日本には特に当てはまります。しかし、21世紀は日本とそこに暮らす人々のライフスタイルに多くの変化をもたらしました。結果として、現代の労働力も進化しています。 企業は終身雇用を廃止しつつあります。その慣習が企業に重荷を課すためです。若い人々は安定性と給与だけでなく、プロとして成長するためにどのような支援が得られるか、そして良い条件でリタイアできるかなど、キャリアについてより戦略的に考えています。 先日実施されたマーサーの研究「Healthy, Wealthy and Workwise: The New Imperatives for Financial Security (健康で、豊かに、賢く働く: 経済的安定のための新たな緊急課題) 」では、経済的安定性に対する態度と退職に関する信念について調査しました。12カ国で実施した調査では、6つの年齢集団に属する7,000人の成人および600人の企業/政府幹部職員を対象としました。 この調査の結果、日本では経済的安定性が低く、日本人は他の国の人よりも自分の経済的状況にストレスを感じている可能性が高いと判明しました。 日本人を心配させるのは、経済だけではありませんでした。健康、富、キャリア、すべての基準において、日本の自信は調査された他のどの国よりも大幅に低いことがわかりました。この主たる原因は、退職に対する古いアプローチです。つまり、終身雇用への過度の依存と国の年金制度というセーフティネット、これらは現在過渡期にあります。   国への依存により引き起こされた貯蓄格差   他のアジア諸国と比べ、特に中国と比較し、日本は重大な貯蓄格差に直面しています。特に、50才以上の人々の間で格差が大きくなっています。しかし、これは主に、どう退職が設計されていたかに起因するかもしれません。日本の労働者にはかつて年功序列制の給与体系を持つ終身雇用制度があり、その給与に基づく国の年金制度がありました。現在、厚生労働省はプライベートセクターで働く一般的労働者に支給される国の年金の目標額は所得の50%と発表しています。 また、日本の健康保険制度が非常に優れていることにも注目すべきです。退職後、健康のための出費は大きな割合を占めるため、医療費の大部分を国が負担すると人々が把握していることも日本の貯蓄率が他国に比べて低い1つの要因かもしれません。 世界中でも、また日本でも、人々は、経済的に安定した退職と、良質な退職後の生活のために最も重要な要素として、現在および将来の健康を挙げています。しかし、日本では「仕事のパフォーマンスに関連するため、最高または非常に優れた健康状態である」と回答した人は全回答者の12%しかいませんでした。これは世界平均の39%と比較して、大幅に低い数値です。   経済状況に対する悲観的な見方が強いということは、金融リテラシー向上のための機会が多く存在することを示しています。   日本では、経済的安定性と退職制度について控えめな、場合によっては悲観的な展望があります。 1990年初頭にバブル経済がはじけるまでの、伝統的なパターンは、社員は大学卒業後すぐに会社に入社し、60才で定年を迎えるまでその会社で働くというものでした。退職後は国が年金と健康保険を提供しました。これは大規模な多国籍企業で働いていた場合には、特にそうした条件が該当しました。平均的労働者は退職について、それほど心配する必要はありませんでした。 バブル経済の崩壊後に起こった20年にわたる不況で、多くの企業が財務的苦境に陥りました。その結果、年金支給額は削減され終身雇用制度の約束は切り崩されました。大学を卒業する若い人々は、親の世代の退職の選択肢がもはや自分たちには該当しないと気付きました。日本が定年の年齢を、ほとんどの先進国よりも若い、65才に引き上げた際も、彼らは古いファイナンシャルプランニングのやり方に依存することは持続可能ではないと知っていました。唐突に、退職に備えた計画が個人の責任になったのです。 多くの日本人は現在、貯蓄が個人の責任であると気付いています。しかしこれは新しい概念であるため、その方法については曖昧なままです。経済に関する教育と指導は最低限しか行われていません。 日本人の回答者の半数 (49%) は、快適な退職後の生活を送るために経済的安定が必要であると答えており、現時点で経済的に安定していると感じている人は4分の1 (28%) にとどまりました。また、望ましい生活の質を退職後に維持できると予想している回答者は4分の1未満 (21%) でした。最も驚くべきは、退職後の収入を確保するのに十分な貯蓄があるという自信があると答えた回答者はわずか8%でした。 調査ではまた、日本では84%の人がトレードオフに前向きであることがわかりました。つまり、より良く、より長い未来のために、より多くを貯蓄に回し出費を抑えるということです。しかし16%は、退職後に希望する生活の質を維持できないことになっても、現在のライフスタイルを変えるつもりはないと答えています。これは、日本人の労働者は長期間労働し、65歳以降まで定年退職しないと見込んでおり、一生退職することはないと感じる傾向が他の国の人よりも強いからかもしれません。   長生きとは、退職後の生活を短く、質素にすること   今日、日本人は退職後12~17年を過ごすと予想されています。これは世界平均の15~20年よりも短い期間です。そうした現実から、福利厚生は柔軟性を持つことが求められます。退職後のニーズと貯蓄形態は単一ではなく、働き続けるか、ライフスタイルを変えるかの意思決定に影響を与えます。 「健康で、豊かに、賢く働く」調査では、日本人の成人の半数以上 (53%) が80才以上まで生きると予想していることが判明しました。しかし、73%の人々は退職するつもりがないか、何らかの形で退職後も働き続けると予見しています。これはグローバル調査の12か国の中でも最も高いレベルです。そして26%は、従来の定年の概念を超えて雇用可能なほどに自らのスキルセットを維持することが、労働者の年齢が上がるにつれ困難になるという事実にも関わらず、退職後の主な収入源として給与が発生する仕事を続けると回答しています。 ほとんどの人が政府が提供する年金と個人の貯蓄、そして給料を組み合わせたものを財源とし、退職後は質素な暮らしをすると予測しています。退職後の生活を送るのに十分な収入を確保する責任者として、家族と自身が重視されています。 日本人は雇用主がアドバイスを提供してくれると信頼していますが、退職後の生活の計画や貯蓄、投資については、他の人や組織に対しあまり信頼を寄せない傾向があります。さらに個人は、雇用主の年金制度よりも、政府の公的年金に積み立てる傾向があります。日本では、雇用主の年金制度は潜在的な収入源とみなされることがあまりありません。   変化の機会   日本は現在、退職に対する重複するアプローチを取っています:上の世代はまだ当然のこととして終身雇用と年金制度を期待し、若い世代は自分の老後のために自分で貯蓄する必要があると理解し、それに従ってキャリアプランニングを行っています。 それを鑑みると、国家レベルで変化の機会があります。おそらく社会保障は贅沢なものではなく、単なるセーフティネットとして、80歳代の人など、だいぶ上の世代の人にのみ利用可能なものとして認識されるべきかもしれません。退職の制度が更新され、仕事と企業年金を組み合わせたら、人々は自らの財務上のニーズについてより正確な評価を下すことができるかもしれません。 現状、若い世代は貯蓄については新しい領域に直面していると感じており、多くの場合、資料や教育も多くはありません。世界的に見ても日本に限っても、健康で豊かに賢く働くことは、より長く働き、自分の健康や貯蓄、職務スキルに今投資することを意味します。そうするために、労働者は雇用主や国に個人的に力づけられる必要があり、雇用主も国も、現代の労働者の進化し続けるニーズに対応すべく変化の機会を模索するべきです。

北野 信太郎 | 12 6 2018
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